あみ子は少し風変わりな女の子。(略)純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしにかえていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。
ー裏表紙の紹介文より
泣きたくなった。胸が詰まる。こんなに沁みた小説はいつ以来だろう。
あみ子は、
他人を意識しないで生きている特別な存在のよう。それゆえ他人と比較して傷つくこともない。馬鹿にされても、されてることが分からない風だ。
障害者の可哀想なお話かというと、まったくそうでない。あみ子の視点で描かれていて、周りの方が振り回されて可哀想なことになる。
けど、あみ子が中学生になって、少しずつ自覚してくる場面がある。「なんで誰もおしえてくれんかったんじゃろうね。いつもあみ子にひみつにするね。絶対みんなひみつにするね。」
この気持ち、私にも経験がある。私も人の気持ちに鈍感なところがあったらしく(今はそんなことないと思いたい)、中学生の教師に「あんたは気楽でええなぁ」みたいなことを言われて、どういう意味かわからんことがあった。とにかくなんか嫌味言いたいんやな、とは思った。中ニの時、友達にも恋愛関連の話を秘密にされたことがあって、とても悲しかったことも思い出した。中学の私は子供っぽかったのだろう。そこは今でもかな?
だから、あみ子のムカつきがヒシヒシと伝染してきた。
ラストシーン近く、
あみ子が中学の卒業を控えて、
ある男の子に、自分がどんなふうに変か教えてほしいと、と尋ねる場面がある。それは、その男の子があみ子の真っ直ぐさに心底感心したからで、だから、あみ子も素直に聞けたんだと思う。そして、彼の答えがまた、素敵すぎるのだ。二人の中学生が成長した名シーン。ジィィーンときた。泣いた。成長とは哀しみをともなってしまうものなんだな。
著者は2019年「むらさきのスカートの女」で芥川賞を受賞。こちらも世の中からはみ出た女性がでてきて、面白い展開だけど、こちらあみ子の方が好みだ。
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