こだっちとくうすけの冒険

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 こだっちとくうすけ より

「思し召し」、「駒返り」、「白日」、「油断」

2011年04月30日 01時35分47秒 | 言葉の面白さ・楽しさを知ろう

『思し召し』(おぼしめし)

 ☆-----お考え-----

「思(おぼ)す」は、

「思う」の尊敬語です。

「思ふ」に尊敬の助動詞「す」がついて、

「思はす」になり、

 やがて、「おもほす」→「おぼす」と

 変化していったのだそうです。
 
 その上に、さらに尊敬の意を強める

「召す」がついた「思し召す」は、最上級の尊敬語。

 昔は、敬語を、身分によって、

 何段階にも使い分けていました。

 この「思し召す」などは、

 帝(みかど)や中宮(ちゅうぐう)に限って、

 用いられる言葉だったそうです。
 
 その感覚が、現代にも残っているのでしょうか。

 今でも、神に近い存在に対して、使われる言葉ですね。
 
 人の力では、どうしようもないこと……。

 それを、運命とか、宿命と呼ぶ人もいるでしょう。
 
 でも、『思し召し』と、とらえてみると…。

 そこに、天からのメッセージがあるのではないかと、

 思えてきませんか。
 
 『思し召し』と、尊んで受け取る気持ちがあれば、

 きっと、何事も、よい方向に、

 いかしていけるのではないかと思うのです。



『駒返り』(こまがえり)
 
 ☆-----若返ること-----

 今では、あまり使われなくなりましたが、

 歳時記には、「駒返る草」「草駒返る」などの

 表現として、残っています。
 
 冬の間、枯れていたように見えた草が、

 青々とよみがえってくること。

 もちろん、春の季語です。
 
 昔は、人が若返るという場合にも、

 「駒返る」といいました。
 
 語源は、「子めき返る」が

 変化したものではないかといわれます。
 
 「めく」は、「春めく」「ほのめく」などの

 「めく」と同じ。

 それらしい状態になるという意味を添える、

 接尾語です。

 子どものような状態に戻るということですね。
 
 もともとは、「若返る」と書いて、

 「こまがえる」と読ませていたようです。

 「駒」は、子馬をあらわす漢字。
 
 「こま」という言葉も、

 「子馬(こま)」からきたという説もあります。
 
 『駒返り』の「駒」は、当て字ですが、

 若々しい駿馬のような、躍動感が感じられますね。
 
 春の息吹を感じて、さまざまな命が、

 いきいきと、よみがえる季節。
 
 それらを見つめる私たちの心も、

 駒返っていくような気がします。



『白日』(はくじつ)
 
 ☆-----照り輝く太陽-----
 
 「白」という漢字は、象形文字。
 
 頭蓋骨をかたどったものだという説と、

 月が輝いている様子を映したものだ

 という説とがあります。
 
 たしかに、光の輝きは、

 その強さが増すほどに、

 白く感じられるものですね。
 
 『白日』は、もともと、

 晧々(こうこう)と照り輝く太陽を、
 
 あらわした言葉。
 
 やがて、そんな太陽が照っている、

 昼間のことも、さすようになりました。
 
 白日青天(せいてん)、または、青天白日……。

 晴れ渡った、雲ひとつない青空に、

 太陽が輝いている様子です。
 
 身の潔白や、

 何の障害もなく自由なことのたとえに、

 よく使われます。
 
 やがて、『白日』だけでも、

 同じ意味を持つようになりました。
 
 私利私欲のない心境という意味でも、

 使われるようです。
 
 輝く太陽の下で、何にもとらわれずに、

 生きていけたら…。

 こんな想いを托した「白日夢」を、見たいものですね。




『油断』(ゆだん)

 ☆-----注意をおこたること、気をゆるすこと-----

 『油断』の語源については、

 諸説あって、決め手はないようです。

 まず、『涅槃経』の故事に由来するという説。
 
 昔、王が、ある家臣に、

 油の鉢を持って歩くよう、命じたそうです。

 「もし、一滴でもこぼすと、命を断つ」

 と言い添えて。
 
 油がこぼれると、命が断たれる……ここから、

 『油断』という言葉ができたとか。
 
 ただ、『ゆだん』という言葉には、

 「弓断」「遊端」などの漢字が、

 当てられている例もあるのです。
 
 そこで、この『涅槃経』説は、

 疑わしいともいわれます。
 
 素直に、

 「火を灯す油が断たれると、

 真っ暗になり、危険であるから」

 という説もあります。
 
 また、ゆったりとした様子をあらわす古語、

 「寛(ゆた)に」が、変化したという説も……。
 
 これは、後に『油断』という漢字が

 当てられるようになったということです。
 
 たしかに、気持ちがゆるんだときに、

 『油断』してしまうことが多いものですね。
 
 ゆったりとした心地よさの影に、

 『油断』がひそんでいる…。

 語源説ともども、その可能性があるということですね。