米韓両軍は共同の作戦計画OPLANを昨年6月に転換し、新しくOPLAN5015を採用した。これは昨年、米韓の間で、特に米の北朝鮮に対する対応が決定的に変化した可能性を示している。米は、昨年2月に北朝鮮の側からの米朝直接交渉の呼びかけを無視した。そして11月には北朝鮮からの正式の交渉呼びかけを正面から拒否した。これは直接に米韓の軍事・政治戦略の転換を反映している。韓国も新たな制裁にあたって開城工業団地の撤退を決めるなど従来とは異なる対応をとっている。
OPLAN5015はそれまでの作戦計画の性格を根本的に変えるものである。従来までのOPLAN5027は「北の全面侵攻」を前提に、それを食い止め、全面的に反撃に出るという軍事シナリオだった。最終的には全面北進し、北朝鮮を軍事的に打倒するシナリオだが、形の上では「防衛的」で自分の方から仕掛けるものではなかった。米韓両国政府には先制攻撃の合意もなかった。ところが5015は「先制攻撃」のしかもきわめて好戦的な戦争シナリオである。
北朝鮮が「攻撃の兆候」を見せる、あるいは小規模の軍事紛争が南北朝鮮間で発生した段階で、米韓の側から先制攻撃を加える。「斬首作戦」と称し、指導者個人を狙った暗殺(抹殺)爆撃や特殊部隊による攻撃を行い、政治・軍事・通信の中枢を全面攻撃することから戦争を始める。従来の5027では全面反攻作戦の最後の局面として北朝鮮に対する上陸作戦が位置づけられ、演習もそのような想定で行われてきた。ところが、5015では緒戦で、特殊部隊などの突入と並ぶ先制攻撃の構成部分として位置づけられている。現在行われている米韓合同軍事演習も、この侵略的な5015に基づいて、その予行演習として行われている。さらに5015は戦時の計画だけではなく、小規模紛争、さらには平時からの米韓の共同行動の作戦計画を含んでいる。OPLAN5030と呼ばれる計画は、北朝鮮の内乱を起こさせる暴力工作の計画といわれるが、そのような軍事作戦まで含まれているのだ。
この米韓の変更された作戦計画は、2003年に米軍が行ったイラク戦争そっくりである。米は湾岸戦争後何年にもわたり、いかに国連の勧告を受け入れようとフセイン政権を認めず、執拗にイラクへの小規模攻撃と軍事包囲を繰り返し、最後は有りもしない大量破壊兵器の存在を口実に、フセイン大統領の暗殺爆撃作戦と政府・軍事司令部破壊から全面的侵略戦争を始めた。米韓がOPLAN5015を採用したことは、米韓が北朝鮮の現政権が滅ぶまで軍事包囲と干渉をやめないことを意味する。
朝鮮半島の非核化を巡る6カ国協議の中で米国は一旦北朝鮮の「テロ支援国家」認定を撤回した。しかし、現状は再び同じ敵性国家、滅ぼすべき対象と位置づけているということだ。現政権の存立を認めず、隙や口実があれば攻撃して滅ぼすことを狙う、国連決議を振りかざして包囲、攻撃を繰り返し、結局大規模攻撃で滅ぼしたフセイン政権、リビアと同様の扱いをすることを意味する。危険きわまりない、北朝鮮だけでなく、韓国と朝鮮半島周辺の多数の人民の命を危険さらし、弄ぶものである。
(ハンマー)