日本政府の「挑発的な言動は断じて許せない」の宣伝とは逆に、圧倒的な軍事力を突きつけられ、脅されているのは北朝鮮の側である。いまでは、核実験もロケット発射も米が侵攻の決断をするのを抑止するのが目的である。従来の「交渉しないなら核実験をするぞ」という交渉を引きだす目的の行為は、「攻撃するな、我々にはこんな兵器があるぞ」という信号へと明らかに変化している。
米韓と北朝鮮は休戦状態であるに過ぎず、まだ戦争は終わっていない。圧倒的軍事力を持つその相手が先制攻撃シナリオを採用した。その危険を感じているのは北朝鮮である。もしも戦争になれば、圧倒的な核戦力は言うまでもなく、制空権も、制海権もほとんど太刀打ちできない。唯一ミサイルと長距離砲で韓国・ソウル付近を攻撃する脅しだけが抑止になるに過ぎない。もちろん、戦争は南北の何十万もの人民の生命と生活を奪い、地域の安定を転覆させる最悪の選択である。しかし、米韓がひとたび人々の命を危険に晒すことを決断すれば、北朝鮮にとって国家を守ることは困難で、いわば存亡の危機に立たされているのだ。逆に言えば、米韓のこの姿勢が北朝鮮をいっそう核開発、核兵器実用化と小型化、ミサイル開発、新兵器開発に駆り立てているのである。
米韓日は軍事的包囲と経済制裁で核とミサイル開発を放棄させると言い続けてきた。しかし、力による政策が効果を発揮せず、かえって核とミサイルへの固執に追いやっていることは明白である。まずは相手の存在を認めるところから始めるしかない。北朝鮮の要求の第1もそこにある。米朝間の平和条約締結(戦争終了)なしに、話し合いの前進はあり得ない。相手を敵対視することをやめることからしか、対話は始まらない。
(ハンマー)