米国防分析研究所の元主任分析官が告発したV-22オスプレイの本質的欠陥(リブインピースホームページ)より転載
http://www.liveinpeace925.com/us_base/osprey_is_unsafe.htm
[翻訳資料]なぜV-22オスプレイは安全でないか(その四)
Why the V-22 Osprey is Unsafe?
http://www.g2mil.com/V-22safety.htm
3. PIOを引き起こす傾向
V-22の基本的な特徴である、非常に高い横方向の慣性モーメントと、独立した2つのローターの推力(別々の横方向の操作力)の差動による横方向の操縦は、結果として、PIO(Pilot Induced Oscillation:「パイロットの操縦操作に起因する機体の振動」)に陥りやすい傾向をもっている。重要な飛行制御システム(訳者注:フライ・バイ・ワイアシステム)のソフトウェアは1980年代後期の開発の初期段階から改善されてきて、この傾向をかなり減少させた。しかし、若干の懸念は残っている。
1999年に、強襲揚陸艦「サイパン」の甲板上での飛行作業時に、パイロットがPIOに陥り、危うくローターを艦の甲板に接触させそうになったが、かろうじて破滅的な事故に至るのを回避したことがあった。そのパイロットは高い経験を有しており、その時の風と海の状態は良好だった。もっと未熟なパイロットか、もしくはより厳しい環境のもとでは、この出来事は、容易に悲劇的な結末となっただろう。1999-2000年の運用評価(OPEVAL)の期間に、少なくとも1人のパイロットがPIOについての異常な過敏性を報告し、経験の少ないパイロットのためにその結果をコメントしている:
航空機は、波が静かな時でも、横軸方向でいくらか不安定になる。操縦桿の操作が粗いパイロットは、この航空機を飛ばすのに苦労する。横軸方向での過大な操作をこの航空機を行わないように、最大の注意を払わなければならない。
同様の過敏な反応は、空中給油を実施するために転換モード(エンジンナセル角度60°)にした時にも起こり、給油は実施できなかった。
2000年に実施されたV-22の操縦に対する周期的応答プロット(ボード線図)の検討では、この航空機が回転翼航空機として義務付けられた基本的な安定性の要件を満たせず、実際にPIOを起こしやすいことがわかった。2000年以後、海軍とベル/ボーイング社は、この機体の周期的応答性について、この傾向を除去する改善がなされたと述べている。しかし更新されたボード線図プロットは、現在でも利用できないままである。
PIOの傾向は稀ではあるが放置できないものであり、状況次第では機体の損失に至る。そのような状況とは以下のことを指す。
艦上での飛行作業や、緻密な操縦操作を必要とする狭い場所への着陸、夜の砂漠のような視界が限られた環境への着陸など。こうした任務でのPIOの発生は稀かもしれないが、歴史的にそうした傾向を持たない従来型のヘリコプターと比べれば、高い頻度で起こす可能性がある。
4. 振動負荷の影響
従来のヘリコプターと比べて、V-22の駆動系の振動の力は、それほど違いはない。
しかし、V-22の機体構造の特性のため、これらの振動に起因する機材の変形が非常に大きくなるという違いがある。それは、V-22が従来型のヘリコプターに比べて非常に可動部分の多い構造であるからだ。
従来のヘリコプターは、一般的に扁長な回転楕円体(フットボール形)構造であるのに対して、V-22が2つの非常に大きな質量のエンジンを両端に配した大きなU字構造になっている。その結果、V-22は従来のヘリコプターの設計と比べて、引っ張り荷重や曲げ荷重、すり傷や変形の影響を受けやすい、長く折れ曲がった油圧配管や電気配線、機械的なケーブルの配置を必要とする。さらにV-22の機体構造の機械的な複雑さが、従来のヘリコプターよりも多くの配管・配線を必要としている。
たとえば、V-22には二つのエンジン・ナセルそれぞれの中に、漏れ隔離回路の下流側に合計48系統の油圧ラインを持っている。これらの48本の油圧配管のいずれかひとつの穴からの漏れでも、V-22を二重の油圧喪失状態に陥れさせる。この事態が飛行中に発生したら、油圧の漏れにより2つのローターのピッチ角度が異なることで(二つのローターの発生する推力に差が出来てしまうため:訳者注)、大きな横回転モーメントまたは変揺れモーメントが発生して深刻な事態になってしまう。
こうしたV-22の主要なシステムの過敏さは、これらのシステムの高い損傷率につながりやすい。まれではあるが、これらの機体の構成部分の損傷が破滅的な事故に発展する可能性は予測しうることである。V-22の機体とその機体構造の改修設計に接した経験では、時間とともに状況は確かに改善しているが、しかし、根本的な要因は残ったままである。適合性を検証するデータは、安全性に影響するため、今後の運用テスト(OT IIF、OT IIG)において注視される必要がある。
(ハンマー)