
警察国家、監視国家の強化を狙う安倍政権は共謀罪成立以前に、刑事訴訟法等を改悪して、司法取引を新たに導入し、盗聴法の拡大を行いました。
<司法取引―冤罪の温床>
司法取引は、これまで日本に存在しなかった制度で、冤罪の温床をつくり、その拡大を図るものです。
検察官は、「特定犯罪」に関わる被疑者(起訴前)・被告(起訴後)のうちから任意に「協力者」を選び、その「協力者」に対して、「他人の刑事事件」について証言する代わりに、「協力者」が犯罪に関わっていたにも拘わらず、「協力者」の不起訴や減刑など、恩典を与えようとするものです。したがって、この制度は、自らは罪を免れたい被告・被疑者に対して、他人を貶めることを勧めることとなります。この制度が広く行われているアメリカでは、重要な冤罪と判明した330件のうち80件(24%)が、「司法取引」の結果であったと言われています。
では、「特定犯罪」とは何か。それは、競売妨害、公私文書偽造、公務員贈収賄、詐欺・恐喝、横領・背任、爆発物・大麻・覚醒剤取締法違反、武器製造・銃器取締法違反などであり、それらは共謀罪法案の対象犯罪とほぼ重なります。
もとより、「司法取引」は、直接には共謀罪を対象とはしてはいません。だが、例えば、公私文書偽造容疑の被疑者・被告が自らの罪を免れるために、「協力者」となり、第三者の偽造に関わる「共謀事実」を売り込んだり、検事の誘導によって他人の「共謀事実」を証言したりすることが想定されます。それによって、標的にされた他人が「共謀罪」に引きずり込まれる危険性が十分にあります。
司法取引は、警察のスパイを「合法化」するものです。警察が平和運動団体や反原発運動団体にスパイを送り込み、内情を偵察させるとともに、仮に爆発物取締罰則違反の実行に着手しても、「司法取引」によって無罪となり、おまけにスパイ自身は立身出世も約束されています。大分県菅生村の駐在所爆破事件(1952年)においては、5人の共産党員が逮捕され、首謀者は10年の懲役判決でしたが(第1審)、第2審で冤罪事実がばれて、全員無罪となりました。一方、警察スパイの戸高公徳は後に、ノン・キャリヤーの最高地位である警視長まで上り詰めました。
(岩)