『世界がキューバの高学力に注目するわけ』(吉田太郎 著)--その5
○ グローバル化
・(カストロ)「グローバリゼーションは歴史的な過程で、その流れは止められない。地球上のどこでも、直接対話し、情報伝達することが可能となっている。技術の成果で、全人類が大きく発展し、貧困を根絶し、格差なく幸せに暮らせる可能性がグローバリゼーションには秘められている。しかし現在その具現化からは程遠い。
…グローバルなネットワークにアクセスできる人民とできない人民で世界は分割されている。…情報のグローバル化に参画し、とどまるところを知らぬ『頭脳流出』に終止符を打つことが、我らが文化アイデンティティの生き残りにとって来世紀の戦略的な命題なのだ」
「現在、資本主義は存在していない。存在しているのは独占だけだ。ネオリベラリズムとは、グローバル化とは名ばかりの富の独占システムに過ぎない」
→カストロは、あるべきグローバリゼーションを阻害している現在のグローバリゼーションに反対
・国民あたりの博士の比率は米国と比べてもかなり高いが、頭脳流出は格段に低い。それは、研究が社会のためでなければならないと考えるから。例えば、皆に役立つワクチンの開発が研究目的で、博士になることを目的とした勉強はしているわけではない。
・スウェーデン…高学歴インフレで職に就けない「機会の罠」⇒教育内容だけ改革しても、社会構造全体が変わらなければ、雇用や格差の解決にはならない
・キューバは競争がないのではなく、小学校入学前から機会平等を担保した上で頑張る「格差なき競争社会」
・(中野健太)「軍人や医師、弁護士とごみ収集労働者とでは、日本以上に社会的地位は違うが、職業で人を見下したりはせず、誰もが同じ人間として平等に扱われる点では卑賤や偏見は他国より少ない。能力で稼ぎは違うにせよ、やりたいことができる社会。」
○ 識字教育キャンペーン
・1960/9カストロ国連演説で、数ヶ月内に非識字者一掃を宣言。
中学生以上の学生に、全国通津浦々に識字教育に行かせた。⇒革命の延長として多くの若者が進んで参加。
⇒「教える以上に教えられた。村でやった仕事の意味も理解できた。」「初めて貧困という現実に触れた」
⇒都市と農村の格差解消、都会と農村の若者に連帯感
○ 世界に広がるキューバの識字教育法
・世界で今でも8億人以上いる非識字者⇒社会的格差と直結
・キューバが開発した識字プログラム「ジョ・シ・プエド」(私だってやれるさ!)によって、中南米で識字率が急速に向上 「それは光に向けてトンネルを抜け出ることに似ていました。」(65歳の男性)
TVを使って行われ、いろいろな言語にも対応可能、聴覚障害者にも。
*キューバは、医療だけでなく教育においてもよりよき社会が可能であることを世界に示し続けている。
*「より高き教育を受けた人民、教養のある人民がいる国家ならば、戦争を求めるはずがありません。ですから、平和のためには無知ではなく、教育こそが必要なのです。」
全体を通じてまとめ
○ キューバの教育の成功は、教育こそが人間を自由にするという思想の下、社会全体で支えるシステムができている。子供は、社会自体に基本的生活権が保障され、親の経済力や教養によって格差が生まれることがないよう配慮が行き届いた環境で学べ、自分で努力すれば道が開ける『格差なき競争社会』を築くことによって、将来に対する希望を持つことができる真に「自由」な教育を得られている。
○ そしてそのような社会を維持することを求める子供たちが育ち、キューバの社会体制維持の好循環が生まれている。
○ それは、『自由主義国家』といわれる日本・米国・資本主義体制下の中南米諸国が階級固定され、格差が拡大することと対極をなすものである。
(おわり)
(ERIKO)