寒冷地で真冬に花ものの盆栽を開花させることは長年不可能と思ってきた。たまたま、玄関フードに置いて凍結する鉢が続出、かわいそうに思い玄関に入れたところ、真冬に開花する鉢が相次ぎ、二十年以上、その方法で管理を続けている。
こういう事情での管理なので、盆栽本来の鉢にこだわらず、冬の寒い時期に毎年、花を咲かせることを優先目的としてきた。
盆栽用の鉢は、極限美を表現するための道具である関係で、極力、小さめの和風の鉢が選ばれる。園芸店で買ってきた盆栽についている鉢はたいていそうだ。
しかし、そのままでは、冬季の凍結、特に水切れ状態ではどうしようもない。夏季は、二三日、水をやるのを忘れると枯れてしまう。いくら暑さ、寒さに強い梅でも小さい鉢ではかわいそうだ。そこで、深底の素焼きの鉢を選んだ。選んだのはイタリアやドイツの洋風テラコッタである。こうすることで、四季を通じて水切れの心配がなくなる。土を増やすことで肥料の量を増やせるメリットもある。私はそんなにたくさん施肥はしないが。
盆栽は、盆栽家にとっては、本来、外観としての極限美を珍重する芸術みたいなものだ。しかし、私の場合、積雪寒冷地において最も寒い時期に開花させることを優先、そのために、盆栽家が選ぶような鉢を選択しなかったのである。
ここではノウハウとしてではなく、二十年以上、寒冷地で盆栽を扱った経験から書かせていただく。
プロの盆栽店なら、私のやり方は正しくないと言うかもしれない。
寒冷地で、正月前後に開花した盆栽について、その後の管理方法について、盆栽の専門書に書いてあるかというと、そもそも極寒の場所、極寒の時期での開花を想定していない。そこで、自前の感覚で試行錯誤するしかない。
開花した玄関の室温が、5℃前後なので、その場所にそのまま置いておくと、葉っぱが伸びず、成長が阻害される。そこで、開花後に、20℃前後の涼しい室内にて保管することにしている。
最終的に外に出すのは、雪解け後となるが、外気温が急低下すると、葉先が枯れることになるので(葉枯れで枯らしたこともある)、雪解けまでは、基本的に室内。雪解け後は、暫くは玄関ないし、玄関フードで様子を見るようにしている。
経緯的なところから述べさせていただく。
近所で、屋外で雪の中、大量かつ大型の鉢物を越冬させている方がおられた。ただ、その方は、毎日毎日除雪作業をされていた。品種は、松などに限られていた。
越冬に関しては、以下の記事を読むと、なぜそこまでするのかくらいの、手の込んだ対応が必要と書いてある。売り物を扱うプロならそれくらいはするだろう。
盆栽の冬の管理
https://bonsai.shinto-kimiko.com/kanri/kisetu/kisetu_kanri.htm
私の場合、雪に埋もれる鉢を管理することは至難の業との判断から、屋外で越冬させることは諦め、玄関フードで越冬させることを選んだ。
しかし、現実は想像以上に過酷。玄関フード内の温度変化で、鉢が、凍結・融解を繰り返し、水切れ起こした状態での鉢の凍結は植物にとってダメージが大きすぎたようで、年越した以降、厳冬期の水切れで枯れるものが続出。温かい日に鉢に水をやっても翌日、鉢全体が凍りつく現象はどうしようもなかった。
そこで、1月中旬頃、寒波が本格化し水やりによる凍結懸念が発生する時期、(寒波によっては氷点下となる)玄関フードから(寒波となっても氷点下にはまずならない)玄関に移したところ、梅盆栽については花芽が大きくなり、3月頃から次々と開花するに至った。
厳冬期の梅盆栽の開花は、なんと、偶然の産物だったのである。