※サンタさん、プレゼントありがとう。
主はあなたの倉に穀物を満たし
搾り場に新しい酒を溢れさせてくださる。
「箴言」 / 3章 10節 旧約聖書 新共同訳
父母の心情は
息子が自分より素晴らしくなることを
願うことであり、
神様も人類の父母でいらっしゃるので
ご自身がつくられた人間が
よりよくなることを願われる。
※おもてなし (滝川クリステル氏 写真)
★中世の修道士は食いしんぼ ドイツ
- 世界美食紀行 - Asahi Shimbun Digital[and]
◆朝日新聞デジタル2013年9月9日
http://www.asahi.com/and_w/life/TKY201309060382.html?ref=comtop_list
文 江藤詩文
▲シュトゥットガルトのレストランやカフェで味わえる「マウルタッシェン」。玉子をのせてオーブンで焼いたり、コンソメスープの具として食べます。パンつきで4.2ユーロ(約563円)
▲静寂のなか、弦楽四重奏による聖歌が流れる回廊はなんともロマンチック。ドイツは弦楽四重奏の本場といわれていて、シュトゥットガルトには名門の音楽大学もあります
▲シュトゥットガルトのもうひとつの名物「シュペッツレ」。小麦粉、玉子などを混ぜた生地をのばさずに、そのままナイフで削ってゆでるため、形が不ぞろい。チーズで和えて、肉料理に添えます
▲メルセデス・ベンツやポルシェが本社を構えるシュトゥットガルトは、クルマ好きの間では有名。両社の博物館やミュージアムには、貴重な車両がずらり
▲ドイツといえば、やはりビール。共通銘柄はほとんどなく、どこへ行ってもその土地らしいクラフトビールがあります。色も香りもさまざまだから、好みを見つけるのが楽しい
バイオリンの澄んだ音色に誘われて、石造りの門をくぐりました。陽光が容赦なく照りつける中庭とは裏腹に、厚みのある石に囲まれた薄暗い回廊は、涼やかでひっそりしています。
音楽学校の学生という4人が演奏しているのは、グレゴリオ聖歌。世界遺産とはいえ、見学者で混み合うこともなく、にぎやかなグループ旅行者もいません。
静寂のなか、ひんやりした石段に腰かけて、目を閉じて弦楽器の調べに耳を傾けると、心地よくてうっとり。このまま眠りに落ちてしまいそう。
ここは、世界遺産「マウルブロン修道院」。ドイツ南西部のバーデン・ヴュルテンベルク州の州都・シュトゥットガルトから、列車とバスを乗り継いで、1時間半ほどかけてやって来ました。シュトゥットガルトは、“黒い森”と呼ばれるシュヴァルツヴァルト地方を旅するとき、拠点となる街です。
▼禁欲的な暮らしぶりとは思えぬ数々の伝説
マウルブロン修道院は、1147年に建築が始まった、中世の旧シトー派の修道院です。のちにプロテスタント教会付属の神学校になり、ノーベル賞を受賞したドイツ人作家のヘルマン・ヘッセも入学しました。ヘッセは、ここを舞台に、作品『知と愛 ナルチスとゴルトムント』を書いています。
禁欲的な暮らしぶりで知られるシトー派。ところが、なんだかこの修道院ってば、とても人間くさいんです。まず、ヘルマン・ヘッセは、郷里の期待を一身に背負って入学したものの、学校を脱走したあげく、中退してしまいました。
シトー派は、読み書きができラテン語を操る修道士と、肉体労働も受け持つ平修道士に身分が分かれていました。平修道士は待遇が悪いのでは、と思いますよね。ところが、身体を動かす平修道士は、食事の量を多く配給されたため、修道士たちは平修道士をうらやましがっていたというのです。
わたしが笑ったのは、修道士の食堂にある「ワインの柱」です。マウルブロン修道院の周辺はブドウの産地で、良質なワインを産出しています。言い伝えでは、そのワインが柱に流され、修道士は1度だけ指10本を浸して、ワインをなめることができました。そこで修道士は「あぁ、指が11本あったならなぁ」と言い合ったとか。そのみみっちい人間っぽさといったら。
もっとも後の調査で、ワインはグラス1杯、毎日支給されていたことがわかったそうです。
▼“食い気”から生まれた餃子
そして、戒律で肉を食べることが許されなかった修道士たちは、いまではシュトゥットガルトの名物になった料理を編み出しました。ドイツ版の餃子「マウルタッシェン」です。
これは、牛と豚の合い挽き肉とほうれん草などの野菜のみじん切りを混ぜ、小麦粉の皮で包んだ餃子のようなもの。“餃子の王将”の焼き餃子の、2.5倍くらいの大きさです。
肉を食べているのを見られないように、野菜で色をごまかし、皮で包んで隠したというせせこましさが、なんだか愛しい。「肉のうまみを少しでも多く味わうために、スープにして一滴残らず飲み干したと言われています」と笑うレストランのスタッフ。
その食い意地の張りっぷりに、国も時代も超越して、強い共感を覚えたのでした。
■取材協力:ドイツ観光局
(http://www.germany.travel/jp/index.html)
PROFILE
江藤詩文(えとう・しふみ)
旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化を体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案する。趣味は、旅や食にまつわる本を集めることと民族衣装によるコスプレ。「江藤詩文の世界ゆるり鉄道旅」をmsn産経に連載中。
(http://sankei.jp.msn.com/smp/life/topics/life-19480-t1.htm)
主はあなたの倉に穀物を満たし
搾り場に新しい酒を溢れさせてくださる。
「箴言」 / 3章 10節 旧約聖書 新共同訳
父母の心情は
息子が自分より素晴らしくなることを
願うことであり、
神様も人類の父母でいらっしゃるので
ご自身がつくられた人間が
よりよくなることを願われる。
※おもてなし (滝川クリステル氏 写真)
★中世の修道士は食いしんぼ ドイツ
- 世界美食紀行 - Asahi Shimbun Digital[and]
◆朝日新聞デジタル2013年9月9日
http://www.asahi.com/and_w/life/TKY201309060382.html?ref=comtop_list
文 江藤詩文
▲シュトゥットガルトのレストランやカフェで味わえる「マウルタッシェン」。玉子をのせてオーブンで焼いたり、コンソメスープの具として食べます。パンつきで4.2ユーロ(約563円)
▲静寂のなか、弦楽四重奏による聖歌が流れる回廊はなんともロマンチック。ドイツは弦楽四重奏の本場といわれていて、シュトゥットガルトには名門の音楽大学もあります
▲シュトゥットガルトのもうひとつの名物「シュペッツレ」。小麦粉、玉子などを混ぜた生地をのばさずに、そのままナイフで削ってゆでるため、形が不ぞろい。チーズで和えて、肉料理に添えます
▲メルセデス・ベンツやポルシェが本社を構えるシュトゥットガルトは、クルマ好きの間では有名。両社の博物館やミュージアムには、貴重な車両がずらり
▲ドイツといえば、やはりビール。共通銘柄はほとんどなく、どこへ行ってもその土地らしいクラフトビールがあります。色も香りもさまざまだから、好みを見つけるのが楽しい
バイオリンの澄んだ音色に誘われて、石造りの門をくぐりました。陽光が容赦なく照りつける中庭とは裏腹に、厚みのある石に囲まれた薄暗い回廊は、涼やかでひっそりしています。
音楽学校の学生という4人が演奏しているのは、グレゴリオ聖歌。世界遺産とはいえ、見学者で混み合うこともなく、にぎやかなグループ旅行者もいません。
静寂のなか、ひんやりした石段に腰かけて、目を閉じて弦楽器の調べに耳を傾けると、心地よくてうっとり。このまま眠りに落ちてしまいそう。
ここは、世界遺産「マウルブロン修道院」。ドイツ南西部のバーデン・ヴュルテンベルク州の州都・シュトゥットガルトから、列車とバスを乗り継いで、1時間半ほどかけてやって来ました。シュトゥットガルトは、“黒い森”と呼ばれるシュヴァルツヴァルト地方を旅するとき、拠点となる街です。
▼禁欲的な暮らしぶりとは思えぬ数々の伝説
マウルブロン修道院は、1147年に建築が始まった、中世の旧シトー派の修道院です。のちにプロテスタント教会付属の神学校になり、ノーベル賞を受賞したドイツ人作家のヘルマン・ヘッセも入学しました。ヘッセは、ここを舞台に、作品『知と愛 ナルチスとゴルトムント』を書いています。
禁欲的な暮らしぶりで知られるシトー派。ところが、なんだかこの修道院ってば、とても人間くさいんです。まず、ヘルマン・ヘッセは、郷里の期待を一身に背負って入学したものの、学校を脱走したあげく、中退してしまいました。
シトー派は、読み書きができラテン語を操る修道士と、肉体労働も受け持つ平修道士に身分が分かれていました。平修道士は待遇が悪いのでは、と思いますよね。ところが、身体を動かす平修道士は、食事の量を多く配給されたため、修道士たちは平修道士をうらやましがっていたというのです。
わたしが笑ったのは、修道士の食堂にある「ワインの柱」です。マウルブロン修道院の周辺はブドウの産地で、良質なワインを産出しています。言い伝えでは、そのワインが柱に流され、修道士は1度だけ指10本を浸して、ワインをなめることができました。そこで修道士は「あぁ、指が11本あったならなぁ」と言い合ったとか。そのみみっちい人間っぽさといったら。
もっとも後の調査で、ワインはグラス1杯、毎日支給されていたことがわかったそうです。
▼“食い気”から生まれた餃子
そして、戒律で肉を食べることが許されなかった修道士たちは、いまではシュトゥットガルトの名物になった料理を編み出しました。ドイツ版の餃子「マウルタッシェン」です。
これは、牛と豚の合い挽き肉とほうれん草などの野菜のみじん切りを混ぜ、小麦粉の皮で包んだ餃子のようなもの。“餃子の王将”の焼き餃子の、2.5倍くらいの大きさです。
肉を食べているのを見られないように、野菜で色をごまかし、皮で包んで隠したというせせこましさが、なんだか愛しい。「肉のうまみを少しでも多く味わうために、スープにして一滴残らず飲み干したと言われています」と笑うレストランのスタッフ。
その食い意地の張りっぷりに、国も時代も超越して、強い共感を覚えたのでした。
■取材協力:ドイツ観光局
(http://www.germany.travel/jp/index.html)
PROFILE
江藤詩文(えとう・しふみ)
旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化を体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案する。趣味は、旅や食にまつわる本を集めることと民族衣装によるコスプレ。「江藤詩文の世界ゆるり鉄道旅」をmsn産経に連載中。
(http://sankei.jp.msn.com/smp/life/topics/life-19480-t1.htm)