正しくない者が神の国を受け継げないことを、
知らないのですか。思い違いをしてはいけない。
みだらな者、偶像を礼拝する者、姦通する者、
男娼、男色をする者、
泥棒、強欲な者、酒におぼれる者、人を悪く言う者、
人の物を奪う者は、決して神の国を
受け継ぐことができません。
「コリントの信徒への手紙一」/ 6章 9-10節
新約聖書 新共同訳
神でさえも、神を求めない者には、
ご自身を押しつけることはできません。
信仰は恵みなのです。
マザーテレサ
(マザーテレサ『愛のこころ最後の祈り』より)
※LGBTとは
同性愛者(LesbianとGay)、両性愛者(Bisexual)
性同一性障害等(Transgender)をひとくくりにしてLGBTと呼ぶ。
★LGBT集結、「LAプライド祭」に行ってみた
同性愛者へのフレンドリー度を競うキリスト教会
■東洋経済オンライン 2014年06月21日
長野 美穂 :ジャーナリスト
http://toyokeizai.net/articles/-/40591
ロサンゼルスのウェスト・ハリウッド地区が、レインボー色の旗と40万人の観衆で埋め尽くされた6月8日。毎年恒例のLGBTの祭典、「LAプライド祭」が行われた。ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーのコミュニティを代表する大規模なパレードとフェスティバルが注目を集めるこのLAプライド祭は、1970年の初回から数えて44回目。全米でも最も歴史ある老舗のLGBTの祭典のひとつだ。
ウェスト・ハリウッド市はカリフォルニアの中でも特にゲイ人口が高い土地で、2010年の国勢調査によれば1300組以上の同性カップルがこの地域で暮らしている。
昨年、カリフォルニア州で同性婚が合法になり、全米50州のうち19州で同性婚が合法となった中での今年のLAプライド祭では、同性愛者や同性カップルたちを積極的に勧誘しようとするキリスト教会のブースが特に目立った。
「おかえりなさい、カトリック教徒たち!」。白地に赤の文字の大きな垂れ幕を掲げているのはロサンゼルスのカトリック教会のブースだ。
カトリック教会と言えば、同性婚を認めず、伝統的に「聖書は結婚は男女間の神聖な契約だと定めている」という考え方を貫いているキリスト教会だ。つまり、「ゲイ・フレンドリー」とは正反対のイメージで知られる教会なわけだが、ゲイやレズビアンの本丸と言えるLAプライド祭で、彼らを勧誘しようとする理由は何なのか。
「ゲイは地獄に落ちる」は間違い
「確かにクリスチャンの中には、ゲイは地獄に落ちるなどという発言をして、あえて憎しみを広めようとする人もいますが、それは大きな間違い。神はすべての人を愛していますから、教会を離れたゲイやレズビアンの人たちに安心して戻ってほしいんです」。
そう言うのはLAのカトリック教会でリーダーシップ・カウンシルを務めるデイビッド・ケネディ氏だ。彼の名刺にはレインボー色の花のロゴが印刷されており「ゲイ、レズビアンの人々と共にあるカトリック教会」と書いてある。
▼同性愛者に門戸を開く教会
▲「おかえりなさい、カトリック教徒たち」の垂れ幕のかかった
ブースで布教するLAカトリック教会のデイビッド・ケネディ氏
彼が道ゆく人に手渡しているのが「ゲイやレズビアンを歓迎するカトリック教会支部マップ」だ。
ビバリーヒルズからサンタバーバラまで、南カリフォルニアのカトリック教会の中で「同性愛者に特に門戸を開いている支部22箇所」がリストアップされている。
移民の街であるロサンゼルスには子供の頃、カトリック教会で洗礼を受けて育ったという同性愛者もたくさんいる。大人になり、保守的なカトリック教会から足が遠のいている人も多い。
「確かにゲイの人々を快く思わないカトリック教徒のいる支部もあります。でもここに挙げた支部ではLGBTの誰でも歓迎しているし、ゲイやレズビアンの子供を持つ両親のサポートグループもあります」とケネディ氏。
前提として同性婚は認めない立場の教会に、結婚している同性カップルが手をつないで足を踏み入れても、本当にウェルカムなのだろうか?同性愛者の生き方を変えようと「説教」したりはしないのだろうか?
「同性婚に反対というより、結婚は男女間の神聖なもの、というのがカトリックの考え方なんです。でも、神はゲイもレズビアンも等しく愛していますから、彼らを変えようなどとはしません」とケネディ氏は「受容」を強調する。
▼結婚式を行うことはできない
▲カトリック教徒で同性婚している妻がいる
LAプライド祭のボランティアのクリス・フランシスコさん
カトリック教徒のゲイやレズビアンの場合、彼らが所属するカトリック教会内で、同性婚の結婚式が行われることは決してない。そんな状況で、「お帰りなさい」と言われても、本当に心から参加したいと思うものだろうか?「確かに、いま自分の所属している教会で、自分の妻と堂々と結婚式が挙げられたら、人生でそれ以上に嬉しいことはない。残念ながらそれは無理だけど」。
そう言うのは、LAプライド祭のボランティアをしていたクリス・フランシスコさんだ。フィリピン系の彼女は赤ちゃんの頃からカトリック教会で洗礼を受け、幼児期から高校時代まで教会の全ての行事に参加してきた「ダイハード・カトリック教徒」だという。
昨年同性婚した妻とも同じカトリック教会で出会った。彼女たちが所属する支部は、ウェルカムマップに挙げられた22の支部の中にはない。
大人になるにつれて、自分がレズビアンであることを受け入れてくれない教会メンバーが実はたくさんいることに気づいたクリスさんは、数年間、教会に行くのを一切やめた時期がある。
ローマ法王の言葉も大きな影響
それでも、あえてカトリック教会に戻ったのは「他人の目ばかり気にしていたが、他人など関係なく自分が神を信仰するために行けばいいんだ」と気づいたからだ。
現ローマ法王フランシスコが同性愛者について言及した発言、「私は彼らをジャッジする立場にない」という言葉も背中を押した。
今は同性愛者であることを完全にオープンにして教会に通う。「クリスチャン全員が善人で寛容なわけではない。現実を理解していれば、他人に必要以上に影響されずに済むから」という。
▼プロテスタント教会の勧誘は派手
カトリック教会の真向かいにブースを構えているのがプロテスタントの宗派のひとつエバンジェリカル・ルーセラン教会だ。レインボー色と十字架を組み合わせたデザインのシールのタトゥーを配り、上半身裸の信者の男性がキリスト像の前でポーズを取って女の子たちと記念撮影している。
カトリック教会と比べると圧倒的に派手な勧誘のテクニックだ。「ウチの教会には何と言っても、長年のゲイのパートナーがいるオープン・ゲイのビショップがいますからね」と自慢げに話すのは青年支部のディレクターを務めるアラン・ティドウェル氏だ。
ゲイであることを公表している初のビショップというのは、ガイ・エルウィン氏のことで、ゲイである彼が教会の高い地位に選出されたことは、昨年、かなり大きなニュースとなった。
同性婚には賛否両論
ティドウェル氏によれば、同性愛者を受け入れている教会組織内でも同性婚に対しては賛否両論あり、ゲイ・フレンドリーの度合いは支部ごとに全く違うと言い、全米に500万人いる信者の考えは一枚岩ではいかないという。
「60年代を黒人として過ごした自分としては、同性婚の権利の拡大は我々が闘ってきた公民権運動と同じ。紛れもない人権運動だよ。それを受け入れ難いと言う信者もまだいるけどね」。
単に同性愛者フレンドリーなだけではなく、同性愛者やセクシャル・マイノリティーのニーズを満たすのに特化したキリスト教会。それがメトロポリタン・コミュニティー教会だ。世界22カ所に支部があり、LAに本部があるこの教会では、ほとんどの牧師がゲイやレズビアンやトランスジェンダーなどのLGBTメンバーだという。
▼創始者もゲイ
同教会のブースで勧誘していたロン・ビーチャードさんは元々バプティスト派で育ったが、この教会のメンバーになって12年だ。
「うちの教会では同性カップルが堂々と手をつないだり、キスしたりできる。普通のキリスト教会ではそれは難しい。うちではどこでも受け入れてもらえなかったと感じている人を勧誘したいんです」
この教会の創始者は自身がゲイだったトロイ・ペリーだ。1968年に自宅で始めた教会だった。彼はこのLAプライド祭の創設者のひとりでもある。
1969年、ニューヨーク市内のクリストファー・ストリートでゲイの人権を求める運動が起こったのを機に、70年、ペリー氏を含め、LAの地元有志がゲイ・パレードを開こうと警察署長にパレードの開催許可を求めたのがこの祭典の始まりだ。当時の警察署長は「ホモセクシュアルにハリウッドでのパレード許可を与えるのは、泥棒や強盗に許可を与えるのと同じだ。暴動になる」と答え、許可を与えるかわりに、巨額のパレード費用と警察の人件費を払うことを要求したが、結果的に州裁判所がパレードの許可を下し、同時に警察の協力も命令して、初回の祭が実現したという経緯だ。
説教の様子をストリーミングで実況
LAプライド祭の次の日曜日、実際にこの同性愛者に特化しているというメトロポリタン・コミュニティ教会の日曜礼拝に行ってみた。自身がゲイである牧師のニール・トーマス氏のその日の説教のタイトルは「独身生活とセックス」。さすがにカトリック教会では聞けないようなお題だ。自身の過去の経験を交え、ゲイ男性のセクシャリティーと神への信仰との関わりを語っていた。
ざっと見回したところ、参加者はゲイ男性のカップルが7割だが、女性同士のカップルやお年寄りもかなりおり、さまざまな人種、年齢のひとびとが集まる礼拝は、そのままストリーミング実況されていた。
礼拝の最後に、女性のメンバーが真ん中に立ち、牧師が「彼女は今日から彼として生きていきます」と全員の前で「性転換」を発表した。トランスジェンダーのそのメンバーへは、全員からサポートを込めて大きな歓声が飛んだ。
LAプライド祭の現場から見ても、LGBTコミュニティとキリスト教会の関係は確実に時代と共に変化しており、受容の度合いの違いはあれど、ほとんど全てのキリスト教宗派がLGBTコミュニティに今まで以上に積極的にアプローチしようとしていることは間違いない。
(2014年06月21日)
▲メトロポリタン・コミュニティ教会。
性転換の発表を祝福
(撮影:長野美穂)
▲ウェスト・ハリウッド市のブースも
(撮影:長野美穂)
▲南カリフォルニア大学のLGBT学生会メンバー
あなたがたは、
自分の体がキリストの体の
一部だとは知らないのか。
キリストの体の一部を
娼婦の体の一部としても
よいのか。
決してそうではない。
娼婦と交わる者はその女と一つの体となる、
ということを知らないのですか。
「二人は一体となる」と言われています。
「コリントの信徒への手紙一/」 06章 15節
新約聖書 新共同訳