をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

アレクサンドリア (映画)

2011年03月05日 | 映画
映画「アレクサンドリア

時は4世紀、ローマ帝国が地中海沿岸を支配していた時代、エジプト・アレクサンドリアを舞台にした歴史大作。
実際のローマ風建築のセットや世界の七不思議の一つの大灯台などの建築物を目の当たりにし、主演は「ナイロビの蜂」のレイチェル・ワイズとくれば、見応え有りです。

彼女が演じるのは、史実に残る女性天文学者ヒュパテイア。時代を担う若者たちの教師として、彼らの信仰によって差別をすることなく知識を与え、敬われていた。それは、彼女の家の奴隷であるダオスについても同じ。鞭打たれた体に内緒で薬を塗ってくれたヒュパテイアに許されぬ恋情を抱くのです。

しかし、社会の変化は安寧から激動の時代へ彼らを追い込みます。
ローマ帝国の力はもはや末期で、まだ勢力の弱いキリスト教が貧しい人々や奴隷などの支持を集め、支配層の貴族たちを圧迫し始めた。ヒュパテイアの幼馴染で恋心を告白するオレステスがローマ帝国の長官になる頃には、キリスト教司祭が力を持ち、元老院の貴族たちも改宗し始めるのでした。
そんな中でいよいよ暴動が起き、知の宝庫である図書館なども襲撃を受けます。新しい勢力が強くなると以前の勢力の文化さえも壊されてしまう。これは現代でも紛争地域などのニュースで報じられることがあります。それが人類全体の進歩を数世紀遅らせる原因になってしまうという点も、この映画は垣間見させてくれます。

ダオスもキリスト教の修道戦士となり、立場的にはヒュパテイアと対立した立場に。そんな中でも自分の身の危うさを考えず、ひたすら天文のことだけを追求し、誰もが証明できなかった理論にたどり着くヒュパテイア。天動説が信じられていた時代、今でこそ科学的に正しいとされるその理論=地動説は後世でもガリレイが迫害を受けたくらいのもので、さらに過去の4世紀では、益々彼女の立場を悪くするものであったのだ。そして、皆の尊敬を集め、意志を貫くヒュパテイアは見せしめのターゲットとして捕らえられる運命に・・・。

愚直なまでに勉学を追及した彼女には、政治的駆け引きも、特権階級のおごりも、女を武器にすることさえないのに、全てが捻じ曲げて解釈されて生贄になったといえます。悲しすぎる…。
しかも彼女が平等に教えた男性陣のふがいなさ。長官オレステレスしかり、他教区の司祭となった生徒しかり、ダオスしかり。
ただ、ダオスのみが報いる形であることをヒュパテイアにしてあげるが唯一の救いなのですが。

壮大なスケールで描かれたこの悲劇。劇場の大きなスクリーンでの鑑賞をお勧めします。


監督:アレハンドロ・アメナーバル出演:レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック
丸の内ピカデリーほかロードショー中
http://alexandria.gaga.ne.jp/

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ランナウェイズ (映画) | トップ | 地震から1週間 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画」カテゴリの最新記事