空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

映画『パラダイス 人生の値段』

2023年08月12日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

ドイツ製のSF映画。

モーツァルトが35歳で死なず、
80歳まで生きたら、どんなに沢山の素晴らしい音楽を作曲できただろう?
シラーやマンデラやキュリーがもっと長く生きていたら、
どれほど世界に貢献できただろう?

という問題提起のもと、
この映画の近未来世界では、寿命の売買が行われている。
ドナーとレシピエントの間で適合した場合、
金銭で寿命が売り渡されるのだ。
冒頭、主人公のマックス・トーマが難民収容所で、
18歳の青年に寿命の提供を説得する場面が出て来る。
提供する年数は15年。
報酬は70万ユーロ。
それだけあれば、家族が移民できる。
そのかわり、青年は33歳に年取ってしまう。
青春を売り渡す代償だ。

実際は寿命を買うのは富裕層であり、
提供するのは貧民だった。

その革新的な技術は巨大企業AEONが管理し、
ルーシー・タイセン財団が後押ししている。
(スーパのイオンや英会話のイーオンとは無関係。念のため)
ノーベル賞受賞者に対して、
施術をして、長寿を獲得し、
社会に貢献してもらう計画だという。

しかし、反対派もいる。
アダム・グループは、
寿命を延ばしたノーベル賞受賞科学者を多数殺害する。
「寿命を商品化する者は、人間をも商品化し、
人間を家畜におとしめる。
他人の寿命を盗む者は、
我々が処刑する」
と犯行声明を出して。

主人公のマックスはAEONの優秀な営業マンで、
年間最優秀セールスマン賞を受賞、
276年分を仲介したとして表彰されている。
収入も上がり、マックスは妻のエレナと共に、
湖畔の家を買うことを夢見ている。

そのマックスに不幸が襲う。
住んでいた高級マンションが火事で焼けたのだ。
失火のため火災保険はおりない。
250万ユーロというローンの残債がのしかかる。
しかも、ローンの契約で、
支払えない場合は、妻の寿命で支払う契約がされていた。
寿命が担保という、シュールな展開。
マックスの方はドナーの経験があるが、
相手のレシピエントが最近事故死したため、ドナーの適合者ではない。
事態回避の努力をするが、
結局エレナは手術を受け、38年分の寿命が取り上げられてしまう。


ほどなくエレナに症状が現れ、
一挙に40歳も年取ってしまう


しかも、エレナは実は妊娠していて、その子まで失ってしまったのだ。

そこでマックスはよからぬことを考える。
レシピエントを拉致し、
強制的に寿命を取り戻す手術を受けさせようとするのだ。

レシピェントは、なんと、AEONの最高経営責任者(CEO)の
ソフィー・タイセン。


エレナの寿命を受けて、若返っていた。
マックスは若返ったルーシーを拉致し、
リトアニアの医師との合流点に車で向かう。
AEONの武装部隊が追いかけて来る。
途中、拉致した女性はルーシーの若くなった姿ではなく、
実は、ルーシーの娘のマリーだったと判明する。
(マックスは疑っているが)
その上、潜伏場所にアダム・グループがやって来て、三人を拉致し、
AEONの武装部隊と対決する・・・

という、波瀾万丈の物語。
ついに科学は人間の寿命にまで手を付け、
それが金で売買されるようになる、という
人間の尊厳を懸けた内容。
寿命の売買における倫理観、正義とは何か、真の平等とは、
結局医学の進歩の果実は富裕層が取り、
貧乏人は搾取される、
など掲げるものは多く、
傑作になる要素は満載で、
途中までは面白いが、
最後はヘンにねじれて、
あまり上等とはいえない結末となった。

途中、ローンや火災の真相があかされたのは面白かった

マックスを演ずるのはコスティア・ウルマン
「5パーセントの奇跡」 (2018) に出ていた人。


エレナとソフィーの手術前と後では、
別な俳優が演ずる。
やはり年齢差は克服できなかったか、
老婆になってからのエレナが怖い。

7月27からNetflix で配信。