[映画紹介]
夢枕獏による山岳小説「神々の山嶺」(かみがみのいただき)(1997) を
谷口ジローの作画でコミック化(2001)、
更にそれをフランスでアニメ化したのがこの作品。
谷口は2017年に逝去したため、
完成には間に合わなかった。
山岳カメラマンの深町は
カトマンズの町で、
一人の男から「マロリーの遺品だ」というカメラを売りつけられそうになる。
後刻、そのカメラを盗んだらしい男から取り戻している日本人をみかけるが、
その日本人こそ、
何年も前に消息を絶った伝説の登山家、羽生丈二であった。
エレベスト登攀が成功したのは1953年。
登山家マロリーは、その前の1924に失敗し、遭難したとされているが、
マロリーが持参したカメラの中のフィルムを現像して、
もし、マロリーが頂上まで達していたことが証明されれば、
歴史が変わることになる。
帰国後、深町は羽生の人生の軌跡を追い始める。
そして、ある手紙の住所を頼りに、
ネパールの僻村を訪れた深町は、羽生と出会う。
羽生は不可能とされる冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑戦し、
深町はその姿を写真におさめるために同行することになるが・・・
原作を読んだ当時、こう書いている。
夢枕獏という作家は、「陰陽師」の印象が強く、
視野になかったのだが、
こんなに壮大な作品を書く人だったとは。
面白い。
というより、素晴らしい。
読み出してから止まらず、時間を忘れた。
と、感心しきり。
2016年、
「エヴェレスト 神々の山嶺」という題名で実写映画化された。
主演は岡田准一と阿部寛。
あまり感心する出来ではなかった。
コミック化されたことは知っていたが、未読。
このたびのアニメ化は、評判が高いので観に行った。
見事な映像美に息を飲んだ。
実写もいいとは思うが、
実写以上にアニメの造形が半端ではない。
壮大な山の景観が見事に描かれている。
その中の人間の歩みが
いかに小さいかを実感させる。
それでも挑戦する登山家の心理が、
いつの間にか胸に迫って来る。
フランスのアカデミー賞にあたるセザール賞で、
長編アニメーション映画賞を受賞したのも、
なるほどと思わせる。
なにより、登山という困難な題材を
アニメとして描くという志の高さに驚かされる。
エレベストの登攀がなし遂げられた後、
ルートを変えての登攀、
単独登攀、
無酸素登攀と、
次々と形を変えて挑戦するところに、
人間の無限の夢を感ずる。
監督はパトリック・アンベール。
世界ではNetflix で配信されたが、
日本では劇場公開。
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