[映画紹介]
2019年、
イギリスのアンドリュー王子への
テレビのインタビューを巡る、
報道陣の動きを描く。
アンドリュー王子とは、
エリザベス女王の次男。
つまり、チャールズ現国王の弟。
イギリス王室の成員・貴族・軍人で、
ヨーク公爵。
その王子に、
アメリカの富豪ジェフリー・エプスタインとの交友関係に関する
スキャンダルが持ちあがる。
エプスタインは2006年に児童売春で有罪判決を受けて服役、
出所後、2019年に性的虐待の疑いで再逮捕。
後、拘置所内で自殺。
その際の裁判資料にアンドリュー王子や
クリントン元米大統領の名前が含まれていた上、
被害者の当時17歳の少女の1人が
アンドリュー王子と
複数回に渡り関係を持ったことを明かした。
世間の注目はアンドリュー王子に向けられた。
イギリスの放送局・BBCの
報道番組「ニュースナイト」のプロデューサーである
サム・マカリスターらは、
アンドリュー王子へのインタビューを
イギリス王室に打診する。
国民の疑問の高まりで、
番組への出演を決めたアンドリュー王子に、
司会のエミリー・メイトリスが
事実を提示し
巧みに王子を追い詰めてるインタビューをする。
その放送に至るまでの舞台裏を、
無理だと思われていたことを成し遂げる勇気と信念を持ち、
決して諦めなかった女性たちの姿として、
余すことなく見せる。
王室広報官に対する緊迫した交渉、
王子を守ろうとする王室側と
真実を突き止めようとする報道側の攻防戦。
2019年11月14日、
インタビュー当日の緊張感。
王室主導のインタビューには、
質問の内容も事前に王室がチェックしたものだけという
厳しい規制があったが、
それでもエミリーは公平を期した目線で
エプスタイン事件に切り込み、
アンドリュー王子の口から真実を引き出す。
収録後、王室からの介入はなかった。
インタビューは生放送ではなく、録画。
インタビュー場所はバッキンガム宮殿。
終了後、アンドリュー王子自身は「上手くいった!」と思ったようだが、
インタビューは対象者の表情がものを言う。
原告女性と会った記憶はないと語ったが、
嘘をついているのが如実に伝わる。
映像の怖さだ。
なにしろ、当該少女と一緒に写っている写真↓があるのだ。
アンドリュー王子が少女の腰に手をまわしている。
「会ったことがない」という嘘は通じない。
インタビューはBBC史上最高視聴率を獲得し
多数の賞を受賞。
アンドリュー王子は放送後に、全ての公務から退き、
王室メンバーとしての地位の全てを失った。
王族の敬称である「ロイヤルハイネス」(殿下)も使われなくなった。
その後、2022年に、少女とは和解。
金額は明らかにされていないが、
1200万ポンド(18億7千万円)だと言われている。
ただ、和解文書では、性関係を持ったとは名言していない。
BBCといえば、
あのジャニーズ喜多川の性加害問題を取り上げたテレビ局。
長年、日本のメディアが沈黙を守っていた案件が
白日のもとにさらされ、
その後の展開はご存知のとおり。
真実を報道するという、
報道機関の使命の違いを如実に見せつけた。
映画の中で、
放送の後、プロデューサーは言う。
「これがニュースナイトの役割。
他の番組が取り上げない話に時間を割く。
国民にとって重要で語られるべき問題を。
権力者の責任を問い、
被害者の声をすくうのです」
サム・マカリスターがコーヒーショップで、
番組のことで声をかけられる。
「これ、観た?
撮影の現場にいたかったな」
すると、サムは誇らしげに言う。
「ええ、私はいたわ」
サム・マカリスターの自伝にもとづく。
登場人物は全員実名。
俳優もよく似せている。
ジリアン・アンダーソン、ビリー・パイパー、
ルーファス・シーウェル、ロモーラ・ガライらが出演。
監督を手掛けるのはフィリップ・マーティン。
脚本はピーター・モファット、ジェフ・ブッセティル。
みごたえるのある人間ドラマだった。
Netflix で4月5日から配信。
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