空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

『DIE WITH ZERO』

2024年07月31日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

題名の意味は、
「働いて得た金は、使い切ってゼロにしてから死ね」ということ。

せっせと働いてお金を貯め、
老齢になって、使い道が分からず、
残して死ぬことは愚の骨頂だという。
日本人の大部分が、
死ぬ時が一番金持ちだ、とはよく言われること。
せっせと老後の備えとして貯金しながら、
いざ定年になった時には、
体はガタガタ、気力も萎えており、
結局、子どもに残すだけとなる。

同じ100万円でも、
30代、40代の時の100万円の方が価値が高い。
あれもしたい、これもしたいと思いながら、
我慢して貯蓄に回し、
さあ、使おうという時には、
体も動かず、感受性も鈍くなっている。

生きているうちに金を使い切ること、
つまり「ゼロで死ぬ」を目指してほしい。

莫大な時間を費やして働いても、
稼いだ金をすべて使わずに死んでしまえば、
人生の貴重な時間を無駄に働いて過ごしたことになる。
その時間を取り戻すすべはない。

誰もが生きるために働かなければならない。
それでも、心では、それ以上のことをしたいと望んでいる。
経済的に豊かになるだけではなく、
人生を豊かにするための方法を考える。

明日も生きているだろうと思うから、
つかの間の楽しみをしないし、
大切な人への感謝の気持ちも先延ばしにしてしまう。
もし明日死ぬとわかっていれば、
お金を貯めるなんてことはしない。
いくら金持ちでも、死後の世界にお金を持ってはいけないからだ。

人生において大切なのは富の最大化ではなく、
経験の最大化だと著者はいう。
喜びを先延ばしにするのではなく、
やりたいことを我慢するのではなく、
今しかできないことにお金をつぎ込み、
人生を豊かにすべきだと説く。

限られた時間の中で幸福を最大化するためには、
人生の早いうちに良質な経験をすることが大切である。
人生をよりよいものにするには、
お金、健康、時間という人生の3大要素の
バランスをいかに取るかが重要になる。
物事には賞味期限がある。
家族との関係においても、
子どもは成長するので、
その時にしか味わえない関わり方がある。

私が20代のときに
上司からバカだと言われたエピソードを紹介しよう。
安月給をやりくりして
金を貯めていることを誇りに思っていたら、
上司のジョー・フレルに
「これから収入は増えるのだから、
今稼いでいる金を使わないのは愚かだ」
とたしなめられた。

著者が20代の頃、
ルームメイトが旅行をするために多額の借金をした。
当時の著者には、その行動がはなはだ理解できなかった。
そのルームメイトは単身ヨーロッパへ旅立ち、
数カ月後、戻ってきたその彼は、
旅によって人生がいかに豊かになったかを著者に説き、
「返済は大変だったが、旅で得た経験に比べれば安いものだ。
だれもあの経験を僕からは奪えない」と語った。

このエピソードからわかるのは、
「経験がいかに大切か」ということだ。
人生は経験の総量によって決まる
生きて、最後に残るのは思い出だけだ
だからこそ、早いうちに様々な経験をすることが重要だ。
人生の早い段階で最良の経験を積めば、
思い出の配当をより多く得られるのだ。

仕事をすればお金は手に入るが、
それだけ時間を費やさなければならない。
また、いくらお金を稼いだとしても、
使い切れないほどため込むのは、決して賢い行動とはいえない。

大切なのは、自分が何をすれば幸せになるかを知り、
その経験に惜しまずお金を使うこと。
経験の価値を信じる。
節約ばかりしていると、
その時しかできない経験をするチャンスを失う。
その結果、世界が小さな場所になってしまう。

あなたが誰であるかは、
毎日、毎週、毎月、毎年、
さらには一生に一度の経験の合計によって決まる。

人生でしなければならない
一番大切な仕事は、思い出作りです。
最後に残るのは、
結局それだけなのですから。

お金から価値や喜びを引き出す能力は、年齢とともに低下する。
身体は間違いなく衰えていく。
お金があっても、家族と一緒に過ごせず、
経験の共有ができないなら、
子供から大切なものを奪っていることになる。
お金の価値は、加齢とともに、低下する。
時間はお金よりもはるかに希少で有限。
時間をつくるためにお金を払う方が人生の満足度は上がる。

等々。

著者のビル・パーキンス氏は、
1969年テキサス州、ヒューストン生まれ。
当年55歳。
コンサルティング・サービス会社のCEO。
ヘッジファンドマネージャーとして大成功を収めた人。

成功者だから言える、という印象も受ける。
日々生きるためだけで精一杯で、
貯蓄も浪費も出来ない人に対しては、
酷な要求だろう。

もう一つの問題点。
──では、何にお金を使うか

自分が好きなこと。
旅行や芸術やモノ作りや
スポーツや音楽。
その“好きなこと=趣味”を見つけることが出来なかった人、
出会えなかった人にとっては、酷な要求でもある。
自分が何をすれば幸せになるかを知るのは、
意外と大変なのだ。

日本人は、仕事自体が好きな人は多い。
それはそれで幸福ではないか。

読者によっては、
生き方を変えるほどの示唆に富んだ内容だが、
私自身は、特に新しい発見はなかった。
というのは、この人の言うことは、
既に私は実践しているからだ。

定年の65歳まで勤めた。
だが、その間も人生を楽しんだ。
私の「好きなこと」は、
映画、演劇、ミュージカル、オペラ。
読書と音楽、旅行、美術鑑賞
それにはお金を使うのを惜しまなかった。
だから、勤めていた時も、
機会を使って旅行に出かけた。
連休があれば、有給休暇をくっつけて、
3泊5日で海外に出かけた。
ゴールデンウイークや夏期休暇には、
家族で5泊7日の旅に行った。
ヨーロッパや中東、アジアの遺跡。
アメリカではミュージカルやオペラ三昧。
やがて、ラスベガスのショーまで幅を広げ、
新しいショーがベガスで始まったと聞けば、
2泊4日の強行軍で太平洋を越えた。
勤めている間に、
海外渡航は100回を数えた。

そして、定年。
退職金のいくらかをカミさんに分けてもらい、
毎月のように海外に出かけた。
おかげで、モンサンミッシェル、サグラダファミリア、
ピラミッド、ペトラ遺跡、タージ・マハル、
アンコールワット、万里の長城など、
訪れた世界遺産は158に至る。


外国に行ったら、必ず博物館、美術館に行き、
美しい芸術に触れた。
メトロポリタン美術館もルーヴル美術館も
エルミタージュ美術館、プラド美術館、大英博物館も
隅々まで観た。
ツタンカーメンの黄金の仮面も、モナリザも
ミロのヴィーナスもサモトラケのニケも見たし、
フェルメールは全37点中、23点を見た。


それらは記憶に留まると共に、
ブログに記録した。
「空飛ぶ自由人」がそれだ。
ブロバイダーのサービスが終わった「1」は、
パソコンにコピーし、いつでも見ることができる。

あとは、コーカサス三国、再びイスラエル、と思っている時、
コロナ禍となり、海外は行けなくなった。
結果、78カ国166回

それと、ミュージカル
新作が出れば、ブロードウェイとウエストエンド、ソウルで
はしごした。
「オペラ座の怪人」も「レ・ミゼラブル」も「ミス・サイゴン」も
全部、現地で観た。
メトロポリタン・オペラはルートを生かして、
良い席で新演出のオペラを鑑賞した。
ラスベガスでは、「O」や「KA」をはじめ、
ショーはみんな観た。
マカオに出かけて、
史上最大のショー「HOUSE OF DANCING WATER」も
最高の席で観た。
これらは、全部、頭の中に記憶として残っている。

考えてみれば、
旅行もミュージカルも全部子どもの時に獲得した興味だ。
小学生の切手少年だった頃、
世界には沢山の国があることを知り、
一度は行ってみたいと夢みた。
中学生の時、ミュージカルに目覚め、
ブロードウェイという、
夢のような場所があることを知った。


それらは、全て実現した。
読書と音楽は、高校生の時、
知らない間に身についていた。

65歳で定年を迎えて、すぐ旅行生活に入って、
本当によかったと思う。
顧問だの相談役だのに残って(しがみついて)、
70過ぎてリタイアしたら、
体力も衰え、感性も鈍っていただろう。
コロナ禍が始まる直前の2019年、
夏はニューヨークで毎夜ミュージカルを観、
ワシントンDCで博物館巡りをし、
冬はディズニーランドの新スター・ウォーズのエリアを
娘と楽しんだ。
そして、コロナ禍がやって来て、海外旅行禁止。
その前に済ませて、絶好のタイミングだった。

今は毎日は、読書、映画、音楽、名所めぐりに費やしている。
この歳で、裸眼で新聞を読める、良い目を与えられたので、
読書は欠かさない。
映画も映画館だけでなく、
Netflixやディズニープラスで楽しんでいる。
配信で映画を観ることが出来るようになるなど、
誰が想像しただろうか。
今では映画は映画館と配信を含め、
年間150本を越えている。
読書は年間100冊。
その中からブログに記録している。

家族との記憶も豊かだ。
娘が小学校2年の時、
訪れたカミさんの田舎と、私の故郷伊豆での家族旅行で
娘があまりに幸せそうだったので、
翌年から夏休みや正月は海外で過ごすようになった。
ロンドン、パリ、ニューヨーク、ハワイ、オーランド、ラスベガス、
ロサンゼルス、ソウル、イタリア周遊、ニュージーランド周遊、
トルコ周遊、インドネシア周遊、インドネシアと、
家族の旅行の記憶は心にも頭にも残っている。


カミさんと二人旅、娘との二人旅も数多く、
国内での家族旅行も多い。

そうした結果、貯金は思ったほど溜まらなかった。
使ったからだ。
幸い、定年後は、
年金と貯金の取り崩しで
安定した生活を送れている。
働かないでもお金をいただける、年金制度は素晴らしい。
後は、娘に迷惑をかけずに、どう老いるかだ。
介護施設は、多分、年金でなんとかなると思う。
だから死ぬ時には多分ゼロだろう。
娘は既に自立しているので、
お金は残せないが、
マンションは残してあげたい。

行きたい所に行き、
観たいものを観た。
思い残すことは、もうない
ゼロになって、死んでいこう。

これが私の「DIE WITH ZERO」である。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿