名もなきアフリカの地で
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原題:Nowhere in Africa
制作:2001年 ドイツ
製作:ピーター・ヘルマン
監督・脚本:カロリーヌ・リンク
原作:シュテファニー・ツヴァイク
出演:ユリアーネ・ケーラー メラーブ・ニニッゼ レア・クルカ カロリーネ・エケルツ マチアス・アビッシュ
シュテファニー・ツヴァイクの「Nirgendwo in Afrika(Nowhere in Africa)」と、「Irgendwo in Deutschland(Somewhere in Germany)」の2つの自伝的小説を映画化した「名もなきアフリカの地で」です。
1938年ドイツ。ナチス迫害が激化する中、イエッテル(ユリアーネ・ケーラー)と幼い娘のレギーナ(レア・クルカ)は、夫ヴァルター(メラーブ・ニニッゼ)の待つケニアの農場へ移住します。しかし、文化や生活習慣が全く異なるアフリカでの生活は、イエッテルにとって耐え難いものでした。その上、ドイツに残してきた家族にも危機が迫っていることを知り、苛立ちは募る一方です。小さないざこざが耐えない夫婦の間には次第に不穏な空気が漂いはじめます。そんな中、レギーナは少しづつアフリカの暮らしに慣れていき料理人のオウア(シデーデ・オンユーロ)をはじめ村の人々と心の交流を深めていきます。
ナチス関連の作品は度々目にしますが、亡命した先での生活が描かれた作品を観るのは初めてでした。しかも舞台はアフリカ。とても興味深い切り口でした。登場人物の心の動きが静かに、丁寧に描かれています。
ドイツで生まれドイツ文化の中で生きてきた家族ですが故郷はドイツでも、ドイツ人ではない。英国の教育を受けても英国人ではない。この作品を観ているとアイデンティティーってなんだろう。と考えてしまいます。戦地にいなくても戦争は様々な形で人を傷つけます。凄く残酷だなー。と、改めて感じました。
慣れない仕事に就き「男のプライド」を傷つけられる父。文化的で「安定した生活」を求める母。そんな大人たちを尻目に屈託のない笑顔でアフリカ生活に溶け込み、逞しく生きる娘の姿にキュンとします。オウア役のシデーデ・オンユーロのナチュラルな演技は優しく不思議な存在感があり、レギーナとのシーンが微笑ましく、癒されます。
私のお気に入りのひとつ「点子ちゃんとアントン」にも出演していたユリアーネ・ケーラーも良い塩梅。乾いて荒れ果てたアフリカの地と対照的な艶っぽい美しさ。同性なのに思わずドキッとしてしまいます。
原作の小説は、相変わらず未読ですが、是非読んでみたいと思います。
・名もなきアフリカの地で@映画生活
・前田有一の超映画批評