すっかり秋も深まってまいりました。十月は中置の季節。火が客に近づいて、季節の移り変わりの早さに驚きと寂しさを感じます。
先日、横浜高島屋で開催されている十三代 中村宗哲展に出かけました。宗哲の名前は、棗の問答の時に最初に習い、何度口にしたかわからないほどのお名前ですが、実際に本物のお道具に触れる機会はほとんどありませんでした。今回一度に沢山の作品を間近で拝見でき、感動しました。
全体の感想としては、古典の絵柄を大切にされながらも、モダンなものが多い、装飾は控えめで間を感じる作品が多い。
私が気になったのは、”三光中棗”。みなさんは名前から何を想像されるでしょうか。
「三つの光」から、私は日(太陽)、月、星をイメージしました。蓋の上の部分が太陽だろうと思いましたが、月と星は蓋を開けないとわからない、、、ということで、美術画廊の方に厚かましくも声をかけて伺いましたら、蓋をあけて下さいました。蓋の裏には三日月、身の方の蓋がかぶさる部分に星座が描かれておりました。
写真の棗は、”夏夜平棗”です。この棗からは何をイメージされますか。枕草子の四季の景色がうつされた棗4つが飾られた中にありました。
春は靄のかかった中に光が差し込んだような景色、秋は今にも沈んでいきそうな大きな夕日に見立てて棗の蓋が赤く、冬は雪の結晶がうつされて、いずれも美しいものでしたが、私が一番いいなと思ったのは夏でした。枕草子の夏の部分を読めばすぐにわかりますが、渋い金色の〇は夜空に舞う蛍の光です。そして、これまた蓋をあけて頂きましたら、裏に細い銀色の三日月が描かれておりました。
枕草子から引用*********************************************
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほかにうち光て行くもをかし。雨など降るもをかし。
秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。
冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。
*****************************************************
茶道を習い始めたころ、棗の裏に絵を見つけた時はびっくりするやら感動するやらでした。そして、裏を見ることが当たり前になってからは、これには何が隠されているかなと棗の拝見が楽しみになりました。そして、今回、名前から何が隠されているのか自分なりにイメージしつつ、当たった時、作者の方の意図に出会えたようでうれしくなりました。久しぶりに沢山の棗を拝見して、わくわくしました。
そして、今回沢山の塗り物を拝見して気づいた事は高級な塗り物はピカピカ光ってないということです。私の中では棗は黒く輝いているイメージがあったのですが、宗哲の塗りはどれも落ち着いた黒で、派手ではないのです。展覧会を拝見した後に、茶道具売り場にも立ち寄り、季節のお道具を見せて頂いた後に、店員さんにこの気づきをお話ししたところ、私もそうでしたが、同じことをみなさん思うようですよとのことでした。
棗の話ばかりしてしまいましたが、他にも素晴らしいものが沢山ありました。
”菊水扇面香合”はその名の通り、扇面型に水面に浮く菊が描かれていますが、扇面が表の面だけでなく、裏も波打っていて、作りが凝っていましたし、妹の諏訪蘇山さんとの合作の薄器や水指もあり、女性らしい色合いと形で、姉妹で作品が作れるなんて素敵だなと思いました。
美術画廊の方がおっしゃるには、自分たちが見てこれはほしいと思うものを集めています、気になることがあれば何でも聞いてくださいとのことでした。私は疑問に思ったら厚かましく伺って、いつもお勉強させて頂いております。
5月には、黒田正玄さんの作品を沢山拝見して、ご本人ともしばしお話することができました。ご本人を知ると作品も益々近くなって、いつか求めることができたらとの思いも強くなります。十四代 黒田正玄さんも女性で、最近千家十職も女性が増えて、これも楽しみなことです。これまでと違ったまた女性ならではの新しい発想や、柔らかい作品が増えていくのではと期待します。
美術館での古いお道具との出会いも楽しいものですが、ガラス越しの遠さが少し寂しくもあり、その点、デパートの美術画廊での展覧会は、作家さんご本人と、沢山の作品に間近に出会えるので、お勧めです。購入することはできませんが、拝見して感性を養わせて頂いています。
先日、横浜高島屋で開催されている十三代 中村宗哲展に出かけました。宗哲の名前は、棗の問答の時に最初に習い、何度口にしたかわからないほどのお名前ですが、実際に本物のお道具に触れる機会はほとんどありませんでした。今回一度に沢山の作品を間近で拝見でき、感動しました。
全体の感想としては、古典の絵柄を大切にされながらも、モダンなものが多い、装飾は控えめで間を感じる作品が多い。
私が気になったのは、”三光中棗”。みなさんは名前から何を想像されるでしょうか。
「三つの光」から、私は日(太陽)、月、星をイメージしました。蓋の上の部分が太陽だろうと思いましたが、月と星は蓋を開けないとわからない、、、ということで、美術画廊の方に厚かましくも声をかけて伺いましたら、蓋をあけて下さいました。蓋の裏には三日月、身の方の蓋がかぶさる部分に星座が描かれておりました。
写真の棗は、”夏夜平棗”です。この棗からは何をイメージされますか。枕草子の四季の景色がうつされた棗4つが飾られた中にありました。
春は靄のかかった中に光が差し込んだような景色、秋は今にも沈んでいきそうな大きな夕日に見立てて棗の蓋が赤く、冬は雪の結晶がうつされて、いずれも美しいものでしたが、私が一番いいなと思ったのは夏でした。枕草子の夏の部分を読めばすぐにわかりますが、渋い金色の〇は夜空に舞う蛍の光です。そして、これまた蓋をあけて頂きましたら、裏に細い銀色の三日月が描かれておりました。
枕草子から引用*********************************************
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほかにうち光て行くもをかし。雨など降るもをかし。
秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。
冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。
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茶道を習い始めたころ、棗の裏に絵を見つけた時はびっくりするやら感動するやらでした。そして、裏を見ることが当たり前になってからは、これには何が隠されているかなと棗の拝見が楽しみになりました。そして、今回、名前から何が隠されているのか自分なりにイメージしつつ、当たった時、作者の方の意図に出会えたようでうれしくなりました。久しぶりに沢山の棗を拝見して、わくわくしました。
そして、今回沢山の塗り物を拝見して気づいた事は高級な塗り物はピカピカ光ってないということです。私の中では棗は黒く輝いているイメージがあったのですが、宗哲の塗りはどれも落ち着いた黒で、派手ではないのです。展覧会を拝見した後に、茶道具売り場にも立ち寄り、季節のお道具を見せて頂いた後に、店員さんにこの気づきをお話ししたところ、私もそうでしたが、同じことをみなさん思うようですよとのことでした。
棗の話ばかりしてしまいましたが、他にも素晴らしいものが沢山ありました。
”菊水扇面香合”はその名の通り、扇面型に水面に浮く菊が描かれていますが、扇面が表の面だけでなく、裏も波打っていて、作りが凝っていましたし、妹の諏訪蘇山さんとの合作の薄器や水指もあり、女性らしい色合いと形で、姉妹で作品が作れるなんて素敵だなと思いました。
美術画廊の方がおっしゃるには、自分たちが見てこれはほしいと思うものを集めています、気になることがあれば何でも聞いてくださいとのことでした。私は疑問に思ったら厚かましく伺って、いつもお勉強させて頂いております。
5月には、黒田正玄さんの作品を沢山拝見して、ご本人ともしばしお話することができました。ご本人を知ると作品も益々近くなって、いつか求めることができたらとの思いも強くなります。十四代 黒田正玄さんも女性で、最近千家十職も女性が増えて、これも楽しみなことです。これまでと違ったまた女性ならではの新しい発想や、柔らかい作品が増えていくのではと期待します。
美術館での古いお道具との出会いも楽しいものですが、ガラス越しの遠さが少し寂しくもあり、その点、デパートの美術画廊での展覧会は、作家さんご本人と、沢山の作品に間近に出会えるので、お勧めです。購入することはできませんが、拝見して感性を養わせて頂いています。
お値段はうかがいませんが…笑
なかなか展示会に行くことはありません
福岡ですと尚更かもしれません
私など北山会館にもまだ行けていません
大徳寺もまだまだと言う不届き者です
千家十職…伝統を受け継いでゆく重圧・悩みもあるでしょうが、またその代の好みを開発見つけ出すのも修行でしょうからすごいことですね
チャンスがあったらわたしも展示会に行きたいものです
いつもながら早々にコメント頂きましたのに、お返事が遅くなり申し訳ございません。
なかなか本物や作者さんに出会う機会は少ないですが、デパートは敷居が低くて私でも行けるところが有難いです。
伝統を受け継ぐ重みや悩み、きっとあるでしょうね。
当代の黒田正玄さんは女性で、年齢が比較的近いこともあってか、本当に親しみやすく、色々と丁寧にお話下さって、素敵な作品を見た嬉しさとご本人のお人柄のすばらしさで、幸せな気分で家路につきました。
日本のよき文化伝統、細くでも引き継がれていってほしいと願っています。