茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

由井薗健の「深い学び」をつくる社会科授業 3年

2020-05-02 18:53:41 | オススメしたい本
 最近、家にいるので、まとまった時間ができて、落ち着いて本を読めます。
 少しずつ、読んだ本で、いいなあ~と思ったものをご紹介できたらと。
 カテゴリー “オススメしたい本”を久しぶりに新設!

「由井薗健の「深い学び」をつくる社会科授業 3年」

社会科において目指したい「より深い学び」とは・・・・・
子供たち一人ひとりが「現実の社会」(生活)と深く関わり問題解決的な学習による確かな社会認識のもと、みんなが幸せになるために「どうすればよいか」自分の「生き方」を問い続けること。(本書より抜粋)


 社会科という授業、小学校の頃は、ゴミ処理場や水道局見学、消防署や警察署の方の講義、遺跡訪問、国会見学、全国の名産の暗記などが記憶にある。教科書よりも実地で学んだことの方が楽しく、印象に残っている。
 中学校になると、公民の先生の話は新聞を使ったり、実際に即したお話で、本当に楽しかった。一方、教科書を読むばかりで全然面白くない先生もいらっしゃって、つまらなかった、時間が無駄だったというネガティブな記憶もある。
 社会科ほど、先生によって授業の内容や質が変わる教科はないのではないか、と思う。

 この先生に習ったら子供の世界は大きく広がるのではないかと思ったので、その著書のご紹介です。

 印象的なのは、子供たちが、社会科を、具体的な実例を通して、様々な問題を自分たちで認識し、議論を通じて考えているところにある。

「何が問題なんだろう」

「どうれば、みんなにとってよくなるか、社会がよくなるか」


そのために、取り上げる題材にとても工夫している。


(1) 最初の題材は、東京都大田区の海苔養殖を昭和30年代の高度経済成長期、東京湾埋立て事業ため、海苔漁師が廃業の書類に印鑑を押すという話。
 海苔漁師の方は、300年間続く職業を辞める葛藤、それでも昭和39年東京オリンピック、日本の発展のためにやめることを受け入れる。
 子供たちは東京オリンピックにちなみ、先祖から代々受け継いできたバトンが途絶える海苔漁師の考えに、子供達の視点で想いを巡らし、議論する。
 一方で「自分は納得できなくても、社会のことを考えたら納得しなきゃいけないのかな」と社会を実感する。
 「自分だけでなく、社会をよくする」実例を通し、自分たちで問題意識を見出し、結論までの考えを導き出す。現代社会ではとかく自分中心となることが多い、企業においても自社、自部門、つきつめれば自分がよければと思う風潮はないだろうか。

(2) 次の題材は23区唯一の大泉牧場にまつわる授業。
 戦後、多くの牧場が都内にもあった。当時は牧場の周囲には住宅などなかったが、昭和の高度経済成長にあわせ住宅が建ち、近隣から牧場の牛たちがくさい、汚いとの苦情、公害とも言われる。
 牧場の存在を知りつつ移住してきたにもかかわらず「くさい」とは一見理不尽と思える。
 しかし、牧場主は、牧場のことを周囲の人に知ってもらう行動にでる。
 牛を育てる苦労、それにより牛乳ができ、我々の食卓に上がること。
 かわいい赤ちゃんと母親の苦労、そして乳がでなくなる牛は、食肉として売られてしまう事実。
 「生きること」についても考えさせられる。
 子供たちが、牧場主の気持ち、行動について話し合う。


 「どうしたら皆がよくなるか、社会がよくなるか」
小学生の真っすぐな言葉だけに、大人にも心に残る。
 他にも生活の身近な事柄を取り上げ、自分自身の問題として認識し、考え、意見を言い合い、まとめ上げていく。



 社会人とし、本来身に着けておきたい事柄であるが、私自身は果たして十分できているだろうか。
 今一度、基本に立ち返り、「社会をよくするにはどうするか」を考えることが大切だと思った。

 もっと身近な言葉でいうなら、
●「どうやったら会社がよくなるか」
●「職場がよくなるか」
●「ご近所といい時間を過ごせるか」

●「周囲に迷惑をかけず、自立しつつ、相互協力するにはどうしたらよいか」

 この視点で自分なりに置かれている状況を考え、周囲の人達と考えをぶつけ合い、みんながハッピーと思える社会を環境を作りたいと改めて考えさせられた。

 この先生の授業を受けられる生徒はなんと幸せだろう。  
 きっと、自分と他人がよりよく生きるためにどうしたらよいかという視点で常に考え、行動する姿勢が身につくに違いない。

 子供たちに受けさせたい授業内容ですが、同時に社会人として今一度「社会」を考えるに、よいきっかけになる書であり、大人にも一読を進めたい一冊です。
ご興味沸きましたら是非お読みください。



 コロナの影響で、直に会って話すということが難しい今日この頃、今後はオンラインという手段が更に使われ行くことと思います。
 娘も、オンラインバレエ、学校や友人とZOOMなど、オンラインでの繋がりも増えてきました。
 便利ですが、個人的には、やはり実際に会って話し、お互いの体温を感じながら、体験するということには適わないと感じます。

 子供たちが、先生や大人と一緒に学校で議論を深め、身近な社会に出て体験し、学びを深めていける日が早く来るよう願ってやみません。


由井薗健の「深い学び」をつくる社会科授業3年 [ 由井薗健 ]

価格:2,090円(2020/4/19 09:33時点)




<内容紹介>
小学校社会科授業における「深い学び」とは何か。
また「,社会的な見方・考え方」を働かせ「,公民としての資質・能力」を育成する授業とはどのようなものか。
「問い続ける子ども」をキーワードに,五つの実践を通して解き明かす。
新学習指導要領対応。
内容(「BOOK」データベースより)
新学習指導要領対応!「深い学び」とは?「社会的な見方・考え方」とは?「公民としての資質・能力」とは?「深い学び」を実現する5実践を掲載!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
由井薗/健
筑波大学附属小学校教諭。1971年神奈川県生まれ。東京学芸大学卒業。横浜市公立小学校、横浜国立大学教育人間科学部附属横浜小学校教諭を経て、現職。筑波大学非常勤講師、小学校社会科授業づくり研究会代表、初等社会科研究会常任理事、『小学社会』(教育出版)、『楽しく学ぶ小学生の地図帳』(帝国書院)等教科書執筆者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


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2 コメント

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大人の社会学・・・ (春旦)
2020-05-03 09:34:40
なるほどこれを社会科というのですね
すっかり忘れてしまいました
でもこれは子供に限らず勉強しておきたいことですね
1・「どうやったら会社がよくなるか」
2・「職場がよくなるか」
前会社を退職して現在関連会社さんにお世話になっています
まさに今、上記の1・2を上司と話をして、お互い取り組みましょうと連休前に話をしたばかり
ただ茶道をする者にとって「道徳」・・・心との出会い方、使い方を自分も含め勉強を社員としたいと考えています
子供のときから「こころ」って幅広い言葉に触れることは大切ですよね!
返信する
社会学 (m-tamago)
2020-05-03 12:38:44
そうなんです、どうやったら社会がよくなるか、は、まずは自分の周囲の人とどうやったら楽しく仲良く生活できるか、なのだと思います。
その小さい取り組みが、いたるところで実践されたら、日本が幸せな社会になるはず。。。。

茶道を通じて、相手へのこころくばりとか思いやりに小さいころから触れるのもいいのではないかと思います。
返信する

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