茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

茶道具 -棗(なつめ)-

2005-06-30 19:30:06 | 茶道具
 先日茶入をご紹介したので、今回は薄茶器、棗(なつめ)のことを御話します。
薄茶を入れる器で、一般に漆塗が多い。なつめの実の形をしているものがベーシックなことから、一般に棗と呼ばれる。
形状は、尻張棗、胴張棗、平棗、白粉解、長棗、鷲棗、碁笥棗、丸棗、河太郎、老松茶器、中次、雪吹、面取、茶桶、頭切、金輪寺、立鼓、薬器、アンコウ、甲赤茶器などがある。
形と扱いが特殊なものとして、“四滴”と呼ばれる茶器もある。水滴、油滴、手瓶、つる付の4つ。

 形の種類もそれなりにあるが、更にその小さな入れ物に蒔絵や螺鈿を施して、作り手のセンスであらゆる世界を作り出す、あの小さな入れ物によくぞ様々な趣向を凝らしたものよ、と思う。
 私が拝見して素敵だと思うのは、やはり、蓋を開けた時に蓋の裏に何か細工がされているもの。棗を拝見する際は裏も見るのが普通だが、裏に細工があるとないでは感動が違う。
例えば、表が満開の桜、裏蓋に散り行く花びら、表に松食い鶴(松葉を嘴にくわえた鶴)、裏蓋に一面の松葉、表に帆船日本丸の螺鈿蒔絵、裏蓋に螺鈿のいかり、といった具合。
開けた瞬間にこんなところに!という驚きがあって、やっぱり裏に細工があるのはいい。
裏蓋には家元の花押があることもある。

 先日行った根津美術館の常設展示でも、棗がたくさん飾られていた。自然の風物を蒔絵や螺鈿で全体にあしらった華やかなものが多いのだが、その中で、ひときわ斬新で目を引いたものがあった。江戸時代の作品にもかかわらず、現代アートのようなシンプルさ。
 棗の蓋の曲線を生かして銀色の三日月をあしらい、入れ物(胴)の部分には金色の細かい点で群雲を書いてある。夜空の雲間から顔を出した三日月といった風情。秋野蒔絵棗、小島漆壷斎作とあった。秋野蒔絵というと、秋草の柄が多いのだが、なるほど、秋を感じさせる月と群雲だった。
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