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第六場
ヴィオレット、フェルナンド
(フェルナンド、激怒で蒼ざめて戻ってくる。) よかったわね…
(ヴィオレット) 何という解放!
(フェルナンド) でもそういうわけにはゆかないわよ。説明してちょうだい。
(ヴィオレット) お好きなだけね。でも、モニクが何ごともないか、ちょっと見てくるわ。(奥のドアを静かに少し開ける。)落ち着いて眠っているわ。(ドアを閉める。) それで?
(フェルナンド) 最初の質問だけど、わたしたち三人全員が生活してゆくために、あなたが当てにしているのは、ジェローム・ルプリユールなの?
(ヴィオレット) 答えなくてもよさそうね。
(フェルナンド) ジェローム・ルプリユールに世話をしてもらうつもりはないの? (つづく)
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(つづき)(沈黙。) じゃあ二つ目の質問。アメデおじさまの遺産が全部消費される二か月後、わたしたちはどうやって生活してゆくの?
(ヴィオレット) 質問はわたしの番だわ。あの人物を私が追い出さなかったとしたら、状況はどこが違うというの? わたしたちの問題を解決するためにあなたが当てにしていたのは、あの「リサイタル」なの? (フェルナンド、肩をすくめる。) どうなの?
(フェルナンド) 彼自身がそのことを言ったでしょう、彼はあなたの路を開くことが出来たのよ。
(ヴィオレット) 言葉ではね!
(フェルナンド) そう思うの? まるで彼が、あなたに莫大な謝礼金をもたらすことができる立派な立場にいないみたいに。セルプリエ家での夜会は、とにかく、あなたに何千フランももたらしたわ。
(ヴィオレット) あのチャンスがわたしに来たのは、彼を通してなの?
(フェルナンド) 彼には、あのようなチャンスを再びつくるのは簡単だったでしょうに。
(ヴィオレット) 全くそうは思わないわ。音楽家たちの間では、彼は全然信用がないわ。
(フェルナンド) どうして音楽家たちのことが話題になるの? (つづく)
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(つづき)空腹でどうにもならない彼らのことが。彼らを当てにしなければならないなんて!
(ヴィオレット) とにかく、あなた、彼の結構な奉仕にたいしてわたしが支払わねばならないところだった代価を理解しているの?
(フェルナンド) 彼はけっきょくあなたに求婚するに至っただろうと、私は確信しているわ。(ヴィオレット、笑いを爆発させる。) まっ!
(ヴィオレット) あなた、まったく狂ってるわね…
(フェルナンド) ほんとうは、彼はまったく単純に、家庭を築きたいという思いをもっているひとりの男性なのよ。
(ヴィオレット) そのことで彼を助けるなんて、酔い夢もいいところだわ!
(フェルナンド、厳しく。) あなたの計画は何なの?
(ヴィオレット) 無いわ。
(フェルナンド) ジェロームが離婚してあなたと結婚することを期待しているのなら、間違ってるわよ。
(ヴィオレット) そんなこと全然思ってもいないわ。
(フェルナンド) 彼女は彼を離さないわよ。お金のためだけではなく。
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