高田博厚の思想と芸術

芸術家の示してくれる哲学について書きます。

死と生

2023-07-02 16:52:01 | 日記

死と生



 
死を忌まわしいものにさせるのは、死そのものとは何の関係も無い他律的で受動的な想像や情念であり、生の不完全性に属する生理的な変容や様態にほかならない。
 
 
生に埋め尽くされている間は、我々は死について何も知らないし経験しない。ぼくが唯一死に触れたと言いうるのは、全身麻酔の経験によってである。
 





 
 
 
 
 
 

リルケの明るい空間  歴史というもの 

2023-07-01 22:50:50 | 日記

リルケの明るい空間 



 
リルケの「神さまの話」は以前から持っていたが、ようやくいま読んでいるところであり、「マルテの手記」に息が詰まった後では、ありがたい作品だ。リルケが「若き詩人への手紙」で、ヤコブセンの「ニイルス・リイネ」の読み方を指導しているが、それはそのまま「神さまの話」に言うことができると思う。リルケの思想の裾野、土壌というものを感じる。そして、空間が広く明るい。これがあのマルテを書いた詩人の出発点かと思うと、救われる気がして、ありがたいのだ。ゆっくり読んでいて、急ぐ気がしない。この後のリルケに息が詰まる時には、ここに戻ればよい。一緒に生きることのできる明朗な空間がある。
 
 
歴史というもの 
 
「話」のなかにあるが、海に張り出した高層の住居群は、他処に行き場を無くすまでに区域を制限された人々の、必然から成ったものであり、結果は壮麗でも動機は生の必要であった。風流が動機なのではありえない。断崖に嵌め込んだような住居群もそうであろう。観光気分の印象は実体を欺くものである。仮借ない生の厳しさ、時に非人間的・反人間的な状況の苛酷さ、それでもそこに生まれる人間の生活と自然との調和美。異なった人種と風土の生む歴史と感覚にたいし、我々は注意深く謙虚であるべきであり、その前に先ずその歴史的感覚に気づかなければならない