降雨のため予定していた日はキャンセルになり、この日がお手伝い2回目。
この日の前日は前夜から午後1時まで降雨。
午後3時頃から晴れて少し風があったのですが、当日朝は曇り。
これだと窪地や近隣住宅の北側などは花に水滴が残ってしまって、こういう場所は人工交配はできないンです。
理由はコレ。
今年から導入した軽量タイプの電動梵天。
左端に黒いフサフサがありますが、これが梵天。
この梵天はダチョウの羽根でできていますが、ここに水滴がつくとうまく人工交配ができません。
朝7時半から1時間ほどは摘花作業をして温かい風が吹くのを待って、花が乾いた場所から交配作業をしました。
ちなみに、オレンジ色の所に花粉+増量材を入れて、オレンジ色の左上にある白いボタンを押すとコンプレッサーで花粉を梵天に送り出します。
なお四角い黒い箱が充電器です。
これまで実家の交配作業では、肩掛けのコンプレッサーの大きな電動梵天とアナログタイプ(梵天と紙コップ)を使っていました。
大きな電動梵天は女性には取り扱いしにくい構造。だから2台(父と兄用)だけの導入でした。
今年は母の肩の調子が悪く、アナログタイプ(梵天と紙コップ)では作業効率が悪くなりそう、とのことで上記の軽量タイプ(後発開発)を導入したそうです。
この日は都合で私は大きいタイプを1時間ほど使いましたが、梵天部分が大きく、ノズルも長く、何よりもコンプレッサーが重いので使いづらかったです。
第一次産業の担い手は他の産業と違って労働人口の半分は女性なのに、機械化はたいてい体力がある男性しか使えないようなシロモノから開発されます。何十年経っても変わりませんねぇ。
女性の社会進出が…と言うなら、女性が使いやすいモンを作らないと意味ないンだよなぁ、とボヤいてしまいます。
私はこれまで何度かダチョウ牧場を訪れたことがあり、ダチョウ肉や卵、羽根が土産物として販売されているのを見かけました。
皮は高級皮革のオーストリッチになるとは知っていましたが、ダチョウの羽根は、加工しても装飾に使うくらいしか思い当たりませんでした。
そうか、梵天に加工することができるのか、と理解しました。
確かに手動のアナログタイプの梵天も天然羽毛だとは知っていましたが、そういえば何の羽毛なんだろうか?と疑問に思った次第です。
梵天は昔から鳥の羽毛が使われていますが、これは形状の復元力にあると思います。
この力によって花粉が均一に羽毛に広がることができるし、梵天の洗浄後も自然乾燥で元通りになります。
いまだ人間は自然が作り上げた創造には遠く及ばず、羽毛が最適な素材となっている訳です。
そして、この日は午前と午後を手伝うことになっていましたが、思いのほか作業が進んだので私は午後からお払い箱となりました。
ま、電動梵天が合計4台もあれば、そうなるよね…。
さて、ここで人工交配の中で驚きの事実をご紹介。
人工交配に必要な花粉はどうやって手に入れているのでしょうか?
これは花が咲く直前に花を摘み取って開葯(かいやく)作業をします。
雄しべの先の葯(やく)を選別してふるいにかけ、専用の開葯器(加湿加温調整をする機械)で花粉採取をして、さらに花粉をふるいにかけます。
たくさん採取できたら、翌年のために冷凍保存します。
花粉採取用品種よりも早く開花する品種(たいてい晩生種)は、前年の冷凍開花を使って1~2回目くらいの人工交配をします。
さて花粉採取はとても手間がかかる作業なので、実はこれを外注できます。
それが中国からの輸入です。
バラ科の果樹ならたいてい輸入花粉を使っているンじゃあないかなぁ?
何年か前ですが、輸出元の中国からの空輸が遅れた年がありましてね、そりゃあもう農家の皆さんがヒヤヒヤした年がありまして。
輸入花粉はどうしても大産地の生産者団体同士のパワーバランスに左右されます。
私の実家のような規模では大産地にはとても太刀打ちできませんので、輸入花粉を巡っての国内争奪戦に巻き込まれて時間を消費する訳にはいきません。
よって細々とですが、小規模果樹園は自家開葯作業が必要になります。
バラ科に属する果樹はたいてい中国産の輸入花粉のお世話になっていますから、日中関係が悪化することで果樹生産が困難になる可能性を含んでいます。
さて、ここで花粉が中国産であることで、本来の日本産ではなくなっているのでは?と思われていたら、それは違います。
輸入花粉を使っても、中国産とのハーフになるのはその果実の種子であって可食部ではありません。
そしてその種子が発芽してもそう簡単に果実が収穫できる果樹に成長できません。
この辺りはメンデルの法則を深く理解していれば、ご理解していただけると思います。エンドウマメはマメが種子であり、可食部です。
次回も楽しく手伝いたいです。