この日は初めての作業が多かったです。
まずはメイン農産物の芽づくり。
すでに花芽が育ってきていますから、その花のうち、不要な芽を欠いていきます。
前回の品種とは違うので、やり方も違います。
今回の品種は、まず主枝、亜主枝の直花は欠いて、側枝の下芽と垂直芽を欠きます。
つぎに子持ち花芽を欠きます。
主枝の先端も花芽を欠いて、葉芽は残します。
側枝のうち、長果枝はそもそも花芽はそのままなので、作業するのは短果枝だけ。
その短果枝も花そうが長すぎるものは切り戻しも必要だし。
兄が指導してくれますが、私は「分からん」と悩む場面もありました。
結局のところ「なんとなくやればいい」といういい加減さを伴う作業でした。
↑芽づくり前
↓芽づくり後
同じ花芽とは思えない姿になりましたが、こんな感じに仕上げて行きます。
脚立の上に立ちながらの作業なので、なかなか緊張感ある作業でもありました。
だってここで失敗したら、今年の収穫は完全にアウトですからねぇ。
とはいえ、この日作業した果樹園は、来年の今ごろには更地になっている可能性がある果樹園。
全部ではないにしろ、収穫できるのは今年が最後かもしれません。
非常に残念ではありますが、農地として維持できなくなる日が近いのです。
その後は、丘の上の若苗の誘引補助をしました。
若苗は主枝の先端を上方に誘引するために、細い金属パイプを折り曲げて枝に沿わせ、理想の樹形にするように麻ひもで結んでいきます。
だいたい2人一組で作業するそうですが、兄は私よりも25センチほど高身長。
兄は脚立を使わないでも作業できますが、私は一々脚立に乗らないと。
1本の若苗にだいたい2本の金属パイプを使い、1本の金属パイプを麻ひもで4〜5か所結び、その他にも枝の誘引で2か所くらい結ぶので細かい作業の連続です。
兄が言うには、父が元気だった頃は、両親が組んでこの作業をするとたいていケンカしていたそうです。
本当は兄だって妹の私と組みたい訳ではなく、本来は両親のように夫婦でやりたいンだろうな、と思わずにはいられませんでしたけれどね。
兄は兄のペースで作業をしたがるので、私は3分くらいの空き時間が何度もありました。
ついでだからと、拾い忘れの剪定枝を集めたり、ビニール紐のくずを拾い集めたり。
農業委員会の視察では「おたくの農地はよく整備されていますね」と褒められることが多いそう。
でも私には、子どもの頃に比べるとだらしがないほど荒れている、と感じます。
それは細かなビニール紐のくずとかが、やっぱり目に止まったり、除草が行き届いていないと感じるからです。
25年ほど前までは、成人4人が果樹園で常時働いていましたが、いまや成人2人。
私は臨時労働力に過ぎません。
父は祖父が亡くなった20年前に、兄に向けて「農地を維持するだけの作物づくりなら、兄1人になっても農地は維持できる、心配するな」と言っていたとか。
味や収穫量にこだわらなければ、農地の維持はできるという意味です。
ここ数年前から私がお手伝いをするようになって、まだどうにか味や収穫量にこだわった農産物を作り出せる環境にはあるようです。
それも兄が通常の生活を送れているからであってのこと。
その兄と喋りながら作業していた時のこと。
「オレ、自分に発達障害があるンじゃあないか、と思うことがある」と兄が言い始めました。
私が「ニイチャンに発達障害があるなら、私の方が怪しいわ」というしかありませんでした。
発達障害なんて今時全然珍しくもないことですが、兄の場合は発達障害よりは性格だと思うンだよなぁ。
落ち込みやすいとか、責任感が強すぎるとか、自己肯定感が低いとか。
元々の性格と育ってきた環境とが作り出したモノとしか私には思えないです。
なによりもちゃんと働いて稼ぎがあって、生活が破綻していないのだから、たとえ発達障害だったとしても、生活は成り立っているのに。
兄は自己肯定感が低いから、その現実に目を向けていないだけなんだよなぁ。
兄から見ると私の性格が羨ましいそう。
困難にぶつかっても、ヒョイッと乗り越えてしまうように見えるとか。
私からすると、藻掻きもせずに嫌なことは避けているだけですが、見方によっては随分捉え方が違うモノです。
実家の小さな野菜畑でスナップエンドウが育ってきていました。
今年2月は当初予報と異なり、しっかり冷え込んでいます。
バケツに汲んだ水には氷が張って、昼近くまで融けないくらいです。
それに雨があまり降らない乾燥した冷たい北風が吹いているし、放射冷却でますます冷え込むし。
2月がしっかり冷え込むと、果樹の開花は早いと言われています。
テレビの天気予報を見ていたら、すでにソメイヨシノの開花時期について解説がありました。
ソメイヨシノはバラ科なので、落葉果樹を育てている農家にとっては次のシーズンの始まりを告げる花でもあります。
本当に1年が早いな、と感じます。
次回も楽しくお手伝いしたいです。