この日も摘果作業の続きです。
朝7時半から昼休憩をはさんで午後3時まで。
兄と両親と私の4人での作業でしたが、母は中抜けして組合関係の総会へ。
兄も組合関係の総会があるとかで早上がり。
組合の総会はだいたい4月に集中していて、果樹関係はだいたい4月20日前後に開催します。
これには理由があって、この時期なら人工交配と摘果作業の狭間で少し時間ができるから…これは例年通りならという条件付きのことで、今年は季節の進みが早いので摘果の季節にぶつかってしまったそうです。
年々農家数が減ってきている当地の農業事情ですが、都市部だろうが地方だろうが減少傾向に大差はありません。
組合関係の小さな集まりで役員を担う世代の兄は、どうしても参加せざるを得ません。
一方、母も組合関係の小さな集まりの役員をしているそうですが、年々総会参加者の服装がカジュアルになってきていることが気になるみたい…。
つい5年くらい前までは、スーツ姿やワンピース姿でないと格好がつかなかったのに年々「スーパーに買い物に来たの?」と思うような服装の方々が増加する一方なんですって。
そのことにブツブツ文句を言う母に私は「一張羅を引っ張り出すのも面倒くさい人が増えたなら、それだけ農家から組合が軽んじられているんだよ、組合に価値が見いだせなくなっているだけのこと」と言いました。
組合に求心力が無くなれば、まずは服装から変わるもの。つまりはそう言うこと。
COVID-19の蔓延で組合の総会も中止や縮小化があったそうで、本格的な総会は4年ぶりだそうです。
すると組合の担当者も異動になっていたりして、担当者が手順を知らなかったりするそうです。だから準備に手こずっている様子なんですって。
都市部の小規模な農家の組合でさえもこの状態ならば、各地の町内会や市民活動の会も同様に大変なのでしょう。
私はこの日も黙々と摘果作業でしたが、夏日になるくらいで、午前中からちょっと汗が止まらない感じでした。
農作業の時の服装はちょっと厚着です。
私の場合、農作業時の上半身は、下着の半袖+長袖シャツ(スポーツ用)+UVパーカー(夏用)+ヤッケ+作業エプロン。
この他に首にはスカーフ代わりの手ぬぐいを巻いて、頭には手ぬぐいをかぶり、顔にはフィールドマスク。
これは早朝にバイクで30分程運転して実家へ行くので身体が冷えるためで、作業を始める時は重ね着していても、決して暑いとは思いません。
だがしかし、この日は午前中から暑くて何度も服装の組み合わせを探しながら作業することに。
いつもより水分補給をこまめにしましたが、ちょっと具合が悪くなるくらいでした。
元々低体温気味の私なので、途中から体温が低くなって頭痛になりました。
帰宅してから体温を計ると35.5度。
午後から日は陰りましたが、風が出てきた分、身体を冷やしてしまったようです。
季節の変わり目は、体温が低くなりやすいので農作業の服装の組み合わせは本当に難しいです。
次回も楽しくお手伝いしたいです。
☆おまけ☆
今回は農業のごみ事情について。
果樹園の代表的なごみは、なんだか分かりますか?
それは剪定枝です。
写真は、その剪定枝をチップ状に砕いたモノで、私の実家では堆肥化して、果樹園に肥料として撒きます。
これは先週まで収穫していたのらぼう菜というアブラナ科の植物の残渣。
野菜はほぼ1年草なので、こういうタイプは根っこから抜いて暫く干しておいて、畑の隅に埋めてしまいます。
剪定枝は野菜のように土中に埋めても土に返るまで時間がかかるからチップ状にする必要があります。
この農機が剪定枝をチップ状にする機械。通称粉砕機。クローラ(無限軌道)付きで移動が楽です。
緑色の三角形の所から枝を入れると、左側の煙突みたいな部分からチップ状になって排出されます。
枝を砕く歯の部分。
ここに手を巻き込まれる農業機械事故もそれなりに発生事例があります。
事故防止には、安い編み上げ軍手が必須。
軍手がすっぽ抜けて、手を引き込まれることが減りますから、手首をガッチリ留めるタイプの革軍手は向いていません。
この粉砕機は爆音で稼動しまして、住宅地に隣接している私の実家では近隣住民からそれなりに苦情をいただくことがあります。
なるべく住宅地から遠い場所で作業するのですが、無音にはなりませんからね、ご近所にご迷惑をおかけしながらの作業です。
さて、この剪定枝、バイオマス燃料の原料にも活用されていることをご存じですか?
うわー、エコロジーで素晴らしい活用方法!と感じたあなた。
それ、違いますよ。
バイオマス燃料の原料にするには剪定枝をチップにする必要がありまして、その作業は農家側の負担です。
いまだ粉砕機の動力源は、ガソリンでバイオマス燃料対応の機種がありません。
そしてそのチップは農家がバイオマス燃料の加工工場へ搬入する必要があります。
個人経営の農家のトラックは、たいていガソリン車です。
私の実家より少し小規模の果樹園が、トラックで年間約8回搬入している事例があります。
さて、バイオマス燃料を生産する企業では、この粉砕機やトラックのガソリンを負担していませんから、表向きは「剪定枝からバイオマス燃料を生産してエコロジー」と謳うことができます。
でも本当は、生産コストにも表面には見えない大量の化石燃料を消費していて、何よりも近隣住民との軋轢を産む粉砕機の爆音のリスクも負担していないンです。
農業経営者である兄に言わせると、果樹農家が困っている粉砕機の爆音のリスクや搬入の農家負担を回避できないバイオマス燃料の原料にするくらいなら、果樹園に撒いて堆肥にする方がよっぽどエコロジーだ、とのこと。
それに剪定枝というのは、冬から春にかけていっぺんに大量に発生するモノですが、バイオマス燃料工場では一度に多くの農家から搬入されるのは困るそうで、工場の都合で搬入できる時期が決まるので、農地の一部がバイオマス燃料工場の倉庫代わりになってしまうそうです。
ちなみに実家のご近所には植木屋さんも多いのですが、植木屋さんは産廃業者の免許を取得していて、ほぼ焼却処分だそうです。
一年中安定的に剪定枝のごみが出る植木屋さんをもってしてもチップ状に粉砕する作業に人件費や燃油代の支出は現実的ではないからとのこと。
私はどうして剪定枝のバイオマス燃料が広まらないのだろうか、燃料の品質に問題があるのだろうか?と疑問に思っていましたが、私が想定もしていなかったモヤモヤする理由が見え隠れしていることを兄から教わりました。