子供の頃、今のように寒い時期、よく食べた白菜の漬け物があります。
白菜が漬かりすぎて、少し酸っぱくならないと、これは美味しくないのです。
ほんとに漬かりすぎて、あの肉厚の白菜の芯は水分が飛んでいます。
寒い日、土間兼台ところの一角には、丸いストーブが赤々と炎をあげています。
もちろん、やかんからは湯気がシューシューと音を立てています。
そのストーブの周りには、丸いテーブル型のストーブガードがあります。
家族は、椅子を持ち寄り、ストーブの周りに車座に座ります。
もちろん、丸いテーブルガードの上には、お茶碗やお皿、湯のみなどを置きます。
確か、オレンジ色いやえんじ色だったでしょうか?赤系だったことは覚えています。
ストーブの上に、鍋を置き、適度な大きさに切った、あの酸っぱい漬かりすぎの白菜を入れます。
さらに砂糖、赤みそ、お湯を加え、最後に花かつおをたっぷり入れて出来上がりです。
湯気を立て、ぐつぐつと音を立てる白菜の甘味噌がらめ。
それを白いご飯の上にのせて食べるのです。漬かりすぎの白菜にさらに火が通った時の食感。
暖かくて、体もぽかぽかです。
味噌と砂糖が煮詰まると、その香りに刺激され、ますます食が進みました。
今日、遠方の友人と電話をしていて、この白菜の煮物の話になりました。
以前、私は友人にこの白菜の食べ方を話したことがあります。
たまたま、友人がTVで飛騨地方の漬け物の食べ方を見たら、
私から聞いていた食べ方によく似ていたと。
TVでは、
飛騨地方は、漬け物が寒さで凍ってしまう。
寒い中、いかに美味しく食べるかと考えて、白菜の漬け物を炒め、砂糖にみそで味付けして、最後に玉子を絡める。
玉子はタンパク質を取るため、栄養面を考えている。
その話を聞いて、
子供の頃、私が食べていた白菜の古漬けの煮物は、てっきり、我が家だけの味かと思っていました。
実は、私の祖母が飛騨から嫁いできた時に持ってきた味だったんですね。
過日、あの白菜の古漬け甘味噌煮が食べたくて食べたくて、
白菜の漬け物を買ってきて作ったことがあります。
期待は見事に外れ!
あれは白菜の古漬けなしには作ることができません。
今日、友人との電話は、すっかり忘れていた懐かしい味を思い出させてくれました。
どうにかして、あの古漬けを入手したい。
あの懐かしい味をもう一度味わいたい! 思いはつのるばかりです。