万福寺 大三島のつれづれ

瀬戸内・大三島 万福寺の日記です。
大三島の自然の移ろいと日々の島での生活を綴ります。

総序のご文

2012年01月29日 | Weblog
                     
                                           
              西本願寺蔵『教行信証』総序影印

 親鸞聖人750回大遠忌法要も去る1月16日ご正当満座法要で無事円成いたしました。11日の正当法要に出勤させていただき又とないご縁に遇わせていただきました。その折り出勤記念として画像のご本典総序の影印版を頂きました。これは大変貴重な影印で有難く忝なく思います。
 古来、東本願寺所蔵の『教行信証』(板東本)を下書き、西本願寺の所蔵本を清書本と呼ばれて来ました。板東本は国宝、西本願寺本は重文に指定されています。現在の両本についての研究では見方が大きく変わっております。しかし、西本願寺本は歴代のご門主の座右に置かれてきたご本であったことは確かなことでしょう。そして板東本の「総序」のご文の大部分が大正12年の関東大震災の被害を受けて失われていますから今回の西本願寺本「総序」を影印で見ることができますのは無上の喜びと云えます。
 浄土真宗の宗義の不動の座りがこの「総序」であると云っても過言ではないと受け取らせて頂いております。
 印刷技術が急速に進んだ今日にいのちめぐまれていてよかったと痛切に思うことしきりです。

この「総序」のご文の書き下しを少し挙げておきます。(『注釈版浄土真宗聖典』P131)

   顕浄土真実教行証文類 序(けんじょうどしんじつきょうぎょうしょうもんるい じょ)
 ひそかにおもんみれば、難思(なんじ)の弘誓(ぐぜい)は難度海(なんどかい)を度する大船、無碍(むげ)の光明は無明の闇を破する恵日(えにち)なり。しかればすなはち浄邦縁熟(じょうほうえんじゅく)して、調達(ちょうだつ、提婆達多)、闍世(じゃせ、阿闍世)をして逆害を興ぜしむ。浄業機彰(じょうごうきあらわ)れて、釈迦、韋提(いだい)をして安養(あんにょう)を選ばしめたまへり。これすなはち権化(ごんけ)の仁、斉しく苦悩の群萌(ぐんもう)を救済(くさい)し、世雄(せおう)の悲、まさしく逆謗闡提(ぎゃくぼうせんだい)を恵まんと欲す。ゆゑに知んぬ。円融至徳(えんにゅうしとく)嘉号は悪を転じて徳を成す正智(しょうち)、難信金剛(なんしんこんごう)の信楽(しんぎょう)は疑を除き証(さとり)を獲(え)しむる真理なりと。
 しかれば凡小修(ぼんしょうしゅ)し易き真教(しんきょう)、愚鈍(ぐどん)往き易き捷径(せっけい)なり。大聖一代(だいしょういちだい)の教、この徳海にしくなし。穢を捨て浄を欣(ねが)ひ、行に迷ひ信に惑ひ、心昏(くら)く識寡(さとりすくな)く、悪重く障(さわり)多きもの、ことに如来(釈尊)の発遣(はっけん)を仰ぎ、かならず最勝(さいしょう)の直道(じきどう)に帰して、もっぱらこの行に奉(つか)へ、ただこの信を崇めよ。ああ、弘誓(ぐぜい)の強縁(ごうえん)、多生にも値(もうあ)ひがたく、真実の浄信、億劫(おっこう)にも獲(え)がたし。たまたま行信を獲ば、遠く宿縁を慶べ。もしまた疑網(ぎもう)覆蔽(ふへい)せられば、かへってまた嚝劫(こうごう)を経歴(きょうりゃく)せん。誠なるか、摂取不捨(せっしゅふしゃ)の真言(しいごん)、超世希有(ちょうせけう)の正法(しょうぼう)聞思(もんし)して遅慮(ちりょ)することなかれ。
 ここに愚禿釋(ぐとくしゃく)の親鸞、慶ばしいかな、西蕃(せいばん)月支(げっし)の聖典、東夏(とうか)・日域(じちいき)の師釈に、遇ひがたくしていま遇うことを得たり、聞き難くしてすでに聞くことを得たり。真宗の教行証を敬信して、ことに如来の恩徳の深きことを知んぬ。ここをもって聞くところを慶び、獲るところを嘆ずるなりと。 
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