著者:ピーター・フランコパン
訳者:須川綾子
発行:河出書房新社 2020
原書名:The Silk Roads: A new history of the world
まだ(下)は読んでいないが、忘れないうちに(上)の感想を書いておく。
歴史はヨーロッパ史、中国史など、地域ごとに高校では習ったように思う。イスラム世界や中央アジアについては、ペルシャ、サラセン帝国(今はこう言わないようだ)、セルジュクトルコ、モンゴル帝国、チムール帝国、オスマントルコなどが強大な時期について少し触れたくらいだったように思う。
本書の書名はシルクロードであるが、東西世界の交流を細かく描いた書である。飛行機で世界のほとんどどんなところへも行ける現代に比べ、昔は限られた地理的範囲での活動が主であると考え勝ちであったが、本書を読むとはるか昔から、世界規模での交流が行われていたことがわかる。その主役はイスラム世界や中央アジアである。ヨーロッパ世界が主役に出てくるのはコロンブスのアメリカ発見やバスコ・ダ・ガマのインド航路の発見くらいからだ。
宗教の話も詳しく語られる。今でこそキリスト教・ユダヤ教とイスラム教は対立したものとしての印象しかないが、かつては、ユダヤ教とイスラム教が連帯し、キリスト教に対抗した時代もあったし、イスラム世界がキリスト教に対しきわめて寛容であった時代もあったとのことである。ともすれば、超大国アメリカと対抗する中国、どちらかというと低迷するイスラム世界と対立するキリスト教世界などの現在の状況を固定的に考え勝ちであるが、本書を読み、長いスパンでみるとこの状況は必然的に変化するとの印象を強くした。
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