◻️269『岡山の今昔』西日本集中豪雨(2018.7)

2019-11-21 21:11:17 | Weblog

269『岡山の今昔』西日本集中豪雨(2018.7)

 1893年(明治26年)の10月には、岡山県下全域で前年に続き洪水が発生し、甚大な被害があったという。仔細には、死者が415戸、全壊家屋が6,105戸、床上浸水が5,0100戸に、山崩れ12,675か所などであったという。その中でも一際厳しい状況であったのは、県南にさしかかるあたりからの高梁川流域の西、成羽川(なりわがわ)より下流の高梁川(たかはしがわ)沿い、小田川(おだがわ)沿い、それに成羽川沿いなどであった。

 それから百年以上が経過しての、2018年7月には、広島、愛媛そして岡山の3つの県に跨がる大きな被害が出た。その中でも、年間を通じて雨が少なく、自然災害の少ないことで言い習わされてきた岡山の県南地区が、その場所となった。

 この年の梅雨前線の停滞は、オホーツク海高気圧と太平洋高気圧に挟まれた形で起きた。その活発化は、台風7号から変った温帯低気圧が影響したという。また、暖かく湿った空気の流入は、太平洋高気圧の勢力が強まって南風が流れ込んだうえ、東シナ海付近の水蒸気を多く含む空気が南西風に乗ったためだ。

 これによる最も大きな被害を受けた地区が、倉敷市真備町であって、まずは地理的な状況を簡単に説明しよう。高梁川の下流域西岸には、平野が広がる。そこを西から東へ小田川という高梁川に流れ込む支流が流れる。その小田川の支流に高馬川(たかまがわ、ほぼ北側から流れ込む)、末政川(すえまさがわ、南西の方角から流れ込む)などがあって、北から西から水が集まってくる。そこに、今回高梁川の上中流で大量の雨が降ったこと。それは生き物のようで、時々刻々と変化していく。
 多くの人びとが異常に気づく頃には、小田川から水が注ぎ込む地点での高梁川の水位はかなりの高さになっていた。そのことで、小田川からの水の流れが高梁川本流に合流できないばかりか、ついには小田川へと逆流を始めたという。そうなったことで、小田川の北岸に広がる真備の平野は水浸しの脅威に晒されて行くのであった。
 7月6日の午前11時30分には、倉敷市全域の山沿いに避難準備・高齢者等避難開始の発令があった。午後7時30分には、市全域の山沿いに避難勧告が出される。

 そして迎えた午後10時になると、真備町全体に避難勧告が出る。続いての午後10時には、気象庁が市に大雨特別警報を出す。午後11時半前、小田川に達する少し前の地点で高馬川の堤防を水が乗り越え、あふれ出した。一気に増水したという。午後11時45分には、小田川南方の真備町に避難指示が出される。

 日が改まっての7月7日の午前0時頃、西側の堤防が決壊した。濁流が地域に流れ込み出す。0時47分には、市が国土交通省岡山河川事務所からの小田川右岸で越水との緊急連絡メールを確認した。

 午前1時30分には、小田川北側の真備町に避難指示があった。1時34分になると、「高馬川が異常出水」との連絡が倉敷市災害対策本部に入った。これにより、市が小田川の支流・高馬川の堤防決壊を確認した。

 午前2時には、地域への本格的な浸水が始まった。それより東を流れる末政川でも、7日の午前0時頃に決壊が始まったようだ。3か所の決壊が発生した。
 その後、浸水域は周辺ばかりでなく、東部へと拡大していった。水位も変化し、住宅に濁流が流れ込んで行く。7日の午前3時40分には、倉敷市真備支所から災害対策本部に「浸水のため停電」の連絡が入る。7日の午前6時52分には、国土交通省が小田川北岸の小田側と高馬川の合流地点付近で、小田川の堤防が約100メートルにわたって決壊しているのを確認した、

 さらに、10日に国交省が発表した調査報告によると、高馬川の上流から南に延びる真谷川(まだにがわ)でも決壊しているのが見つかったという。

 以上はまだ混乱にある中での情報の一端であったのが、発生から1週間後の真備の状況については、こう伝わる。

 「国管理で決壊したのは岡山県倉敷市を流れる小田川。都道府県管理では岡山、広島両県で各十河川が決壊、最も多かった。その他は山口県の一河川だった。

 小田川は左岸の二カ所で堤防が決壊、それぞれ五十メートルと百メートルにわたって切れた。近くの高馬川も決壊し、流域の倉敷市真備町地区(人口約二万二千人、約八千九百世帯)では最大約五千世帯が浸水。地区の約三割の約千二百ヘクタールが水に漬かり、死者は五十人に上った。

 小田川は同地区を流れる高梁川の支流。水位が高まった川が支流の流れをせき止める「バックウオーター(背水)現象」が起こり、決壊したとみられている。倉敷市では小田川以外の三支流でも決壊が確認され、支流の一つである末政川では計三カ所で堤防が切れた。」(中日新聞、2018714日付け)

 参考までに、この地域を含む、かかる豪雨による岡山県内の被害は、どれ程であったのだろうか。まず人的な被害としては、死亡者が79人、うち災害関連死が18人。行方不明者は3人、重傷は16人、軽傷は161人。住家被害としては、全壊が4830棟、半壊が3365棟、床上浸水が1541棟、床下浸水が5517棟であった。事業所などでの商工被害は、約210億円。農産物・農地などでの農林被害は、約267億円。それから土木施設の被害は、約346億円であったという(以上、岡山県危機管理課「平成30年7月豪雨災害の検証とその対応」、日本防火・防災協会「地域防災」2019年8月号に所収)。


(続く)

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