◻️141の6『岡山の今昔』鏡野町(苫田郡)

2019-11-29 19:02:37 | Weblog
141の6『岡山の今昔』鏡野町(苫田郡)

 鏡野町(かがみのちょう)は岡山県の北部中央にあり、かなり広めだ。現在の町域は、2005年3月1日に奥津町、上齋原村、富村と合併する。北は鳥取県に、東南は津山市、西は真庭市に接していて、袋が立っているかのような形ではないか。また、南北ということでは山陽地方と山陰地方の半ばにあり、東西ということでは津山盆地と真庭市に挟まれている。
 地勢なり地形としては、鳥取県との県境をなす中国山地南面傾斜地からだんだんに平坦肥沃な準平原地に移りゆくというのであろうか。聞けば、香々美川沿いの竹田地区を通りすがるうちには、「大野の整合」と呼ばれる、まるで煉瓦を積み重ねたような珍しい地層が立ち上がっているのを見ることができるとのこと。
 交通の便利は、かなりよくなってきた。町の中心部は、中国自動車道の院庄IC(インターチェンジ)に近い。国道179号バイパスが南北に、大規模農道が東西に通過しているのも心強い。
 気候としては、盆地というのとは異なってはいるものの、雪が比較的少ない上に、夏と冬の寒暖差が大きいのではないか。
 産業としては、まずは米・果樹・野菜などの栽培があろう。林業も盛んだと聞く。商工業は、地場産業や誘致企業が立地・操業しているものの、人口減少が気になろう。圧巻なのは、広い意味での観光産業であり、温泉をはじめキャンプ場・スキー場が揃いぶみで、観光客らを優しげに迎えてくれる。
 2019年のニュース中、清々しいところでは、10月13日付けの地元紙が、同町で県境トレッキングコースが来月全線開通を伝えた。それによると、三朝町と隣接する岡山県鏡野町上斎原地区の高清水高原で、「高清水トレイル」と銘打ったトレッキングコースの整備が進んでいるとのこと。人形峠から高清水高原を経て県境を尾根に沿って歩く全長8・132キロメートルにして、一部には歩き易いように木質チップが敷き詰められているという丁寧さだ。その通り、11月には全線開通し、休日ともなればトレッキング愛好家たちが思い思いのぺースで紅葉を含め楽しんでいるという。
 次には、この町の大いなるものとして、美術館などの文化施設が十指では足らぬ程に多く、かつ充実しているのを伝えたい。それらのうち、木造2階建ての築100年以上の古民家を改装して2018年4月に開設したのが「 奥津の古民家、かがみの近代美術館 」(岡山県鏡野町奥津川西)であって、中の黒光りのする柱など独特の雰囲気を醸し出していて、なんとも珍しい。
 この美術館へは、奥津温泉街の中心地から車で3分ほど北に位置することから、津山市街から友達の車に乗せてもらって着いてみると、周りには某かの冷気が漂い、相当に森が迫っているではないか。
 中に入ると、穏やかな、そして温かい照明がありがたい。まるで、訪れる者の体を優しく包んでくれるかのようであった。ここの館長の、3月に奈良県から移住した辻本髙廣さんが案内してくれたのが幸いで、主に友とのやり取りを二人のそばで拝聴していたのだが、サラリーマン時代に収集したコレクションを中心に展示してあるとのこと。絵画のほかに、備前焼の人間国宝・藤原雄らの作品も、小品ながらもさりげなく陳列してある。
 いずれの作品も、ふさわしい場所を与えられているかのようで、館長の解説付きで、絵にも詳しい友達を持つことの幸運にも思いいたった次第だ。1階から2階へ、それから元の階に戻り、落ち着きどころで温かい飲み物を頂戴する頃には、えもいわれぬいい気分になっていた。

(続く)

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