ウズベキスタン出身の俊英アジス・ショハキモフの指揮、ノルウェイの若手トランペッター、ティーネ・ティング・ヘルセットをソリストに迎えた演奏会である。一曲目はドビュッシーの管弦楽のための「映像」より第2曲「イベリア」。若々しく颯爽とした指揮ぶりで、とても楽しげで爽やかな音楽だ。ここでは東響の熟達の木管群が大活躍した。二曲目はソリストを交えてトマジ作曲のトランペット協奏曲。トマジは管楽器の協奏曲を沢山作っているフランスの作曲家で、この曲自体はコンクールの課題曲などになっているそうだが、私は今回初めて聞く。期待のヘルセットだが、正直吹き始めはあまり冴がなかった。そして途中でも、しょっとかすれた音が混じったりで、決して本調子ではなかったように聞いた。とはいえ、2種のミュートを使い分けた繊細で滑らかで伸びやかな音色はこの人ならではの魅力であろう。あとで調べて分かったことだが、今回は病気治療から復帰後の間のない舞台だったようだ。勢いがあまり感じられなかったのはそんな所に理由があったのかも知れない。しかし逆にピアニッシモの表現力には素晴らしものがあったことも確かである。大きな拍手にアンコールはノルウェイの作曲家オーレ・ブルの「ラ・メランコリー」。美しく、儚く、悲しげな音楽を聴いていたら何故かウクライナの美しい風景が脳裏に浮かんできた。休憩後はそのウクライナ出身の大作曲家プロコフィエフが「人類の精神の勝利」をテーマに書き上げた交響曲第5番変ロ長調作品100。闊達なショハキモフの音楽性はこの曲にピタリとハマり、最後は生き生き、伸び伸びとテーマを歌い上げた快演だった。ただ、これは無いものねだりなのだが、曲中のトランペットソロを聴いていると、もちろん難なく立派に吹いていたのだけれど、これをヘルセットが吹いたらどんなに素敵だっただろう、などとあらぬ想像をしてしまった。それほどヘルセットが素晴らしかったという証拠だ。
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