今年の5月にゼンパー歌劇場にこの役でデビューした森谷真理を聞くために、高校生向けのオペラ教室に一般として潜り込んだ。一般対象は嘗ては当日売りしかなかったが、今回は前売り有り。しかし相当人気らしく、森谷の日はあっという間に売り切れた模様。会場を見渡してもほとんど高校生で埋め尽くされており、一般聴衆はごく僅かだった。どうやら私は難関を突場できたようだ。開演前のホールは大変な喧騒で、どうなるかと心配したが、始まったら皆お行儀よく聞いていた。演出はおなじみの栗山民也の和モダンな舞台。さて注目の森谷は、二期会でも過去に2回ほど歌っているので手慣れたもの。いつものパワーで押したが、今回はそれに貫禄が備わった。これもゼンパーの経験の結果か。最初は声量が足りない所もあったが、とりわけ二幕フィナーレは圧巻だった。対するシャープレスの城宏憲は癖のないスタイリッシュな美声だが、最初はいささか貫禄負けの節もあった。しかし最後の「さよなら愛の家」では決して負けない声量を示した。但馬由香のスズキと近藤圭のシャープレスは、二幕で演技に説得力を欠いたが、森谷も含めて全体に細かい動きの多いこの幕の動きや所作にぎこちなさが伴ったのは何故だろうか。私にはどうも演出のリアライゼーションが十分でなかったような気がした。今回の最大の功績は指揮の阪哲郎と東京フィルだったと言って良いだろう。ピットからはあたかも絶好調のカルロス・クライバーを彷彿とさせる流麗な音楽が溢れ出ていた。参集した高校生達の反応も上々で、この中から幾人ものオペラ好きが出てくることを期待したい。
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