2016年に初演された粟國淳によるプロダクションの再演である。舞台の中に廻り舞台を設て舞台転換に変化をもたらしたアイデアは楽しく、そんな動きに乗せた合唱団のパントマイムもロッシーニの音楽を引き立てるアイディアで、飽きさせることのない素敵なプロダクションだ。そして二日目の配役は全員言うことなしだった。伯爵の小堀勇介は最初のアリアから好調で円やかな美声で軽やかに歌い上げる。名乗りのアリアでのギター弾き語りも見事に決めた。対するロジーナの山下裕賀も好調で声も演技も文句なしだ。動きの一つ一つがピタリと決まっているのが快い。それに絡むフィガロの黒田祐貴の若々しい闊達な芸達者ぶりも見事。そして斉木健詞の深々とした美声にも感心した。そして全体をブッファたらしめるのに大貢献したのは何と言ってもバルトロを演じたベテラン久保田真澄の味のある存在だろう。これはこの役所の要をピタリと押さえた名演技だった。沼尻竜典と東京交響楽団のサポートは、要所においての超快速のテンポ感こそなかったもののほぼ万全だったと言って良いだろう。とりわけ思いっきりのロッシーニ・クレッシェンドは爽快で、舞台は全体を通してコロナや梅雨の鬱陶しさを吹き飛ばす心楽しい出来栄えだった。
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