コロナ禍で中止になっていたウオルトンのオラトリオ「ベルシャザールの饗宴」のリベンジ公演である。指揮はもちろん音楽監督のジョナサン・ノットだ。まずスターターはR.シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」。これが実にテンションの高い颯爽とした演奏で期待は大いに高まった。続いてペーター・ヤブロンスキーを迎えたショスタコーヴィッチのピアノ協奏曲第1番ハ短調OP.35。なかなか確実で安定感のあるピアノだが、むしろオケの表現力の豊かさに驚かされた。ノットは一週間前のブラームスではなにか沈痛なくすんだ音楽だったが、今日は大違いで実に生き生きしていて楽しく正にノットの本領が発揮された。それに触発されてか、ヤブロスキーのピアノもフィナーレではオケと一体となった快演だった。アンコールはショパンのマズルカ。これが不思議とショスタコの後で心地良かった。休憩を挟んでのオラトリオ「ベルシャザールの饗宴」は、オケに合唱とバリトンを加えた編成で、バビロニア王ベルシャザールの繁栄と神の裁きによる死、そしてそれに伴うバビロニアの解放とユダヤ人の歓喜を要領良く描いた作品だ。ノットはオケと合唱を獅子奮迅の勢いでシャープに駆り立て、壮大にして華麗な音の絵巻物を聴衆の前に広げて見せて(聴かせて)くれた。ジェームズ・アトキンソンのバリトンによる語りも実に説得力に満ち、久しぶりの舞台となる東響コーラスは持ち前の実力をフルに発揮した。2020年に4月に予定されていた演奏会が延期され、くしくも生誕120年にあたる年に延期開催されたわけだが、これはまさに記念の年に相応しい稀に見る(聴く)名演だったと言って良いだろう。
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