メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

情なのかな

2018-11-07 20:38:24 | 
仁と出会って、会ったこともない彼に恋をした。
毎日気になって、幸せな気持ちにしてもらった。
楽しかった。
彼のことを深くなんか知らなかった。
日本語が話せて、背が高くて、会話してて楽しくて。
でもところどころ子供っぽくて。
冷静に判断すれば、それだけ本当に好きだったと言えないかもしれないけれど、
逆にそんな情報だけで冷静な判断なんか出来ない。
2人とも、不思議だけど、恋に落ちていた。

私は訊いた。




「仁ちゃんは決められる立場じゃないって言ってたけど、じゃぁ私が決めていいの?」

「うん」

「私が決めた通りになるの?その権利がある?」

「うん」

「じゃあこうしたいっていうのがあるけど、それ言っていいのかな」



と私が回りくどい事を言っていると、業を煮やしたのか勝手なのか、仁が話し始めた。



「一番良いのは」

「なに?」

「出来るだけ早く一度会って、そしたらいろいろな事が簡単になると思う」



いやだからそれもっと早くやっとけよ。
と思ったが言わなかった(笑)
私はハッキリとした口調で言った。



「仁ちゃん、会おうよ」



仁はうんと答えた。




「いつ?」

「俺が来月試験が始まるから、できるだけすぐがいい。でも俺が行けるのが週末だから」

「じゃぁ週末に休みとるよ」

「わかった」



仁は続けた。



「だから、明日起きたらすぐホテルと飛行機予約する」





(´⊙ω⊙`)





「…実はね。仁ちゃんが来るって言ってた頃、美容院に行ったんだよ。
綺麗にして会いたいなと思ったから」

「ほんとうに?」

「うん」

「うわ、今それを聞いてもっと悪いと思ってる」

「もういいよ許してあげるよ」

「ごめん…」

「怒ってないよ。怒ってないけど………」




本当に来るのかな。




「今度はちゃんと来て」



仁はうんと答えた。
でも前回の件でかなり罪悪感を感じていたのか(いやじゃぁもっとちゃんと埋め合わせろよの一言)
「でも今度は全部予約してから約束する」と言った。
来るんちゃうんかい。


私は言った。




「来て、メイちゃんに触って」

「うん触るよ。俺が悪かったから、今回は何でもしてあげる」

「何でもして」

「うん」

「仁ちゃん、悪い子だったからね。たくさん優しくしてね」

「わかった、ちゃんと埋め合わせするよ」




私が花とか好きだよと言うと、彼は笑った。




「じゃあ俺の鼻の写真送ってあげる」

「そのハナじゃないよ」

「知ってる(笑)わかったよ」

「じゃあ、明日起きたら調べて」

「うん」




ふと見ると、時刻は丑三つ時。





「仁ちゃん、今日はもう寝よう」

「俺が眠いのわかった?」




いや私が眠い(笑)




「メイちゃんももう寝る?」

「うん寝るよ」



そっか、と答える仁はどこか嬉しそうだった。




「おやすみメイちゃん」

「おやすみなさい、明日また連絡して」

「わかった」






じゃぁね、と言って電話を切った。
暗い部屋に、窓から入る街灯の光が筋を作っている。
月明かりなら優しくおぼろかもしれないけど、人工的なそれはそこだけ煌々として見えた。



なんでこんな事になったんだろう。


あたし、仁のこともう好きじゃないのにな。




今ならそう思えるけれど、その時の私は
何度も書いた通り
きちんと終わっていなかった彼とのことがまだ心に溜まっていて


どんなに咲人のことが好きだと実感しても
思い出の綺麗さに縛られていたのだと思う。



仁に、きちんとして欲しかったんだと思う。
どんな方向でもいいから。



私は多分、結構センチメンタルで情深い人間だ。



と同時に



結構疑い深い。






仁が本当に来たら私、どうするんだろう。
本当に来たら。
本当に…?




来る気がしなかった。





そして




約束をした翌日





仁は連絡してこなかった。





続きます。