「やぁ元気?来てくれてありがとうね!」
と、アイアンはヘラついて見せた。
私は、元気よ、とそっけなく答えた。
アイアンの案内について歩き出したけれど、相変わらず彼の早口はものすごい。
「いや本当に本当に来てくれてありがとう。
俺君に謝りたかったし仲直りしたかったんだよ。
ごめんよメイサ、でも君、俺のこと誤解してるよ。
俺はただ君と……」
「ちょ、ちょっと!ゆっくり喋っ…」
「あーごめんごめん!そうよね、俺ゆっくり話さなきゃね」←これも早口
「だぁかぁらぁ!!(怒) いいっ?アンタがゆっくり喋らなかったら、
たとえアンタが本当に謝ろうと思ってても私には伝わんないのよっ!?」
と私が叫ぶと、アイアンはクッと背中を折って、私に耳を近づけた。
「Sorry?」
発音が悪いらしい(私が)
くぅぅぅぅ(悔し涙)
「だぁかぁらぁぁぁぁ!!」
「なになに?もっかい言って!!」
「だから!!早口で聞き取れなかったら謝っても意味ないじゃねーかって言ったのよっ!」
「あぁOKわかった。ごめんよ。ゆっくり喋るよ!」
「(ムスッ←発音は自分のせいやがな…) 大体アンタなんでそんなに私に執着してるの?
クラブなり路上なり、女の子ならどこにでもいるじゃない。
私はアンタに全然優しくないじゃん。
もっと簡単な子も綺麗な子もいるじゃん。
なんでそんなにしつこいのよ」
コツコツヒール音をお供に、私はそう問うた。
アイアンはいまだ背を折ったままそれを聞いていたが、
間髪入れずに、あっけらかんと明るき答えた。
「だって君、めっちゃくちゃ綺麗なんだぜ!なんで諦められるのよ?」
か、かるっ!!!
日本人なのでちゃんとこれを記載するけど、
謙遜でもなく事実として私は別に絶世の美女ではない。(絶世の美女は多分こんなブログ書かない)
ただ彼にとってはどタイプだったんだと思う。
私にとっての彼も、相当よかったしね。
呆然とする私をよそに、アイアンはペラペラと続けた。
「まぁ、俺普段はアジア人の女の子にはいかないのよ。
でも君が超綺麗だったから声かけちゃったの。ハハ!
でも俺、君と友達になりたいんだよ。
こうしてランチしたりコーヒー飲んだり、君と話すのは楽しいからさ!」
普段なら、まぁ私男の子と話すの得意だしねって思うところだけど、
アイアンはとにかく嘘くさくて軽かったから、
“友達”なんて言葉もその他の説明もどうせ嘘なんだろうなと思っていた。
ただ、この国のアジア人は圧倒的に少なかったし、
小さいマーケットの中で好みのものを見つけるのは大変だろうから、
彼が私に執着する理由は何となくそういうことなのかなと思った。
アイアンが連れて来た店は、ピークを過ぎて貸切状態だった。
提案されたチェーン店よりもずっと雰囲気の良い、まともな店だった。
彼のご両親出身のエリアの食べ物なので、メニューを見ても私にはさっぱりわからない。
おまけに全部英語だ。
「メイサ、何食べたい?」
「えっと……私、英語のメニュー読むの時間かかるのよ」
「あぁそっかそっか。OK俺が助けるよ。
これはね、こういうことで、それはそんな感じで……」
と説明し出した。早口で。
だからぁぁぁぁぁ(叫)
「あ、うん。
わかったっていうか……
多分これなら食べれるかも。あとこれも美味しそう(知らんけど)」
「じゃ俺これ頼むからさ、君これにしなよ。
で、食べたかったらシェアすればいいんじゃない」
「はい……(もう何でもいいや)」
アイアンはあっという間に注文を済ませ、パッと姿勢を正してこちらを向いた。
相変わらず謎に長いヒゲがめっちゃ気になるけど、可愛い顔をしている。
前のめりになって、彼はニコニコ話し始めた。
「メイサ、今日は本当に来てくれてありがと♡」
「ど、どういたしまして……(若干後ずさっている)」
「今日もすっっごく綺麗だね♡」
「どうも…」
「うんうん、その服も綺麗だね、似合ってるよ。
白いシャツもいいね。
ワーオ、そのネックレス鍵になってるんだね。
どこの鍵なの?教えて教えて♡」
そして俺に開けさせて♪と言うのを聞き、思わず吹き出した。
コ、コイツ本当に……(笑)
私が笑ったのが気に入ったのか、アイアンはさらに調子よく続けた。
「初めて会った時のドレスが俺のお気に入りだけどね。
でも君はなんでも似合うんだね」
「そんなことはないわ。似合わない色、たくさんあるし」
「そんなことないでしょ!うーん」
と言ってアイアンは店の中を見渡した。
店内は色とりどりのクッションやランプ、美しいデコレーションが其処彼処にある。
アイアンはソファ席を指した。
「たとえば、そこのクッションの赤も似合うと思うし、
あそこの壁のピンクもいいし、それからテーブルのブルー……」
「いや目に入ったの適当に言ってるだけやん。
私あの赤は無理よ。淡い色の方が似合うの」
「そんなことないけど、確かに君は明るい色が似合うかもね!
俺はね、優しい色は無理なのよ。
水色とか。
そう、今日の水色のシャツ俺イヤなの。
他のシャツ洗濯しなきゃ!はは!」
ふぅーん?と私は頬杖をついた。
たしかに少し浅黒い肌には、濃いめの色の方がいいかもしれない。
そんな事を思っていると、アイアンはテーブルの上の私の手に自分の手を重ねた。
「触っていい?」
「もう触ってるじゃない」
「へへ。可愛い手だね」
と言ってアイアンは私の手を取りキスをした。
私はすっかりゲンナリ顔だ。
「あなた、いつも友達の手にキスするの?」
「あぁー……しない」
「さっき友達になりたいって言ったじゃない」
「はは、そうだったね!あっご飯来たよ。食べよう食べよう♡」
と、ごまかして、アイアンはカトラリーを私に渡した。
テーブルの上には、食事のセットがやって来た。
見慣れない模様のお皿や、得体の知れない肉団子などなど、色々と載っている。
でもとりあえず、いい匂いだった。
「……美味しい」
「よかった!食べて食べて。俺のも切っとくからさ」
どれも日本人には縁遠いものだったけれど、味はとても美味しかった。
この手のレストランはこの街にたくさんあるが、
場所や雰囲気、クオリティから考えると、ここは結構いい店なんだろうなと思った。
ランチはいつも軽食しかとらないというアイアンは、
味は美味しいんだけど多いな!とあまり食が進んでいなかった。
勿体無い、美味しいのに。
私はモグモグと箸、じゃなかった、スプーンとフォークを動かした。
私と違ってお口が忙しくないアイアンは、また喋り出した。
「最近の生活はどう?仕事とか、暮らしとか」
「まぁ、相変わらずだけど……
英語もっと頑張らなきゃ…さっきみたいにメニュー読むのも大変だし」
「大丈夫だよ!君すっごく英語上手だぜ」
「(いやさっき聞き返してたじゃん)ありがとう。でも
そんな事はないのは自分が一番よく分かってるわ。
日本人は英語を長くやるから読んだり書いたりできるけど、
喋るのは苦手なの。日本にいたら使わないもの」
「それは分かるよ!俺たちも学生の頃にスペイン語とかフランス語とかやらされるんだ。
でも卒業したらあっという間に忘れちゃうんだよ。
使わないからね」
そっか。
ここで出来た他の友達も、そんなこと言ってたな。
アイアンは、えーと俺何か覚えてたかな…と首をひねった。
「あなたは何語をやってたの?」
「俺はスペイン語。あ、思い出したぜ」
アイアンはスペイン語で何か言った。
「なぁにそれ」
「君の目はキレイ、だよ♡」
「あっそ……」
「あとね、君の唇はステキ、君の髪もステキ、君の手もカワイイ……」
と、彼はスペイン語(なのか私にはわからんが)で私を褒め讃えた。
私はフォークを置いて聞いた。
「ねぇ?私にも少しスペイン語教えてくれる?」
「もちろん!」
「じゃぁ、アンタの鼻はでかいってなんて言うの?」
アイアンは言葉に詰まった。
そしてすぐ苦笑して、それなら俺の名前呼べばいいよ、と言い捨てた。
そう、この国では“鼻がでかい”は相当失礼な悪口だ。
だから彼も自分の高い鼻を嫌っている。
二人の攻防戦、まだまだ続きます!
と、アイアンはヘラついて見せた。
私は、元気よ、とそっけなく答えた。
アイアンの案内について歩き出したけれど、相変わらず彼の早口はものすごい。
「いや本当に本当に来てくれてありがとう。
俺君に謝りたかったし仲直りしたかったんだよ。
ごめんよメイサ、でも君、俺のこと誤解してるよ。
俺はただ君と……」
「ちょ、ちょっと!ゆっくり喋っ…」
「あーごめんごめん!そうよね、俺ゆっくり話さなきゃね」←これも早口
「だぁかぁらぁ!!(怒) いいっ?アンタがゆっくり喋らなかったら、
たとえアンタが本当に謝ろうと思ってても私には伝わんないのよっ!?」
と私が叫ぶと、アイアンはクッと背中を折って、私に耳を近づけた。
「Sorry?」
発音が悪いらしい(私が)
くぅぅぅぅ(悔し涙)
「だぁかぁらぁぁぁぁ!!」
「なになに?もっかい言って!!」
「だから!!早口で聞き取れなかったら謝っても意味ないじゃねーかって言ったのよっ!」
「あぁOKわかった。ごめんよ。ゆっくり喋るよ!」
「(ムスッ←発音は自分のせいやがな…) 大体アンタなんでそんなに私に執着してるの?
クラブなり路上なり、女の子ならどこにでもいるじゃない。
私はアンタに全然優しくないじゃん。
もっと簡単な子も綺麗な子もいるじゃん。
なんでそんなにしつこいのよ」
コツコツヒール音をお供に、私はそう問うた。
アイアンはいまだ背を折ったままそれを聞いていたが、
間髪入れずに、あっけらかんと明るき答えた。
「だって君、めっちゃくちゃ綺麗なんだぜ!なんで諦められるのよ?」
か、かるっ!!!
日本人なのでちゃんとこれを記載するけど、
謙遜でもなく事実として私は別に絶世の美女ではない。(絶世の美女は多分こんなブログ書かない)
ただ彼にとってはどタイプだったんだと思う。
私にとっての彼も、相当よかったしね。
呆然とする私をよそに、アイアンはペラペラと続けた。
「まぁ、俺普段はアジア人の女の子にはいかないのよ。
でも君が超綺麗だったから声かけちゃったの。ハハ!
でも俺、君と友達になりたいんだよ。
こうしてランチしたりコーヒー飲んだり、君と話すのは楽しいからさ!」
普段なら、まぁ私男の子と話すの得意だしねって思うところだけど、
アイアンはとにかく嘘くさくて軽かったから、
“友達”なんて言葉もその他の説明もどうせ嘘なんだろうなと思っていた。
ただ、この国のアジア人は圧倒的に少なかったし、
小さいマーケットの中で好みのものを見つけるのは大変だろうから、
彼が私に執着する理由は何となくそういうことなのかなと思った。
アイアンが連れて来た店は、ピークを過ぎて貸切状態だった。
提案されたチェーン店よりもずっと雰囲気の良い、まともな店だった。
彼のご両親出身のエリアの食べ物なので、メニューを見ても私にはさっぱりわからない。
おまけに全部英語だ。
「メイサ、何食べたい?」
「えっと……私、英語のメニュー読むの時間かかるのよ」
「あぁそっかそっか。OK俺が助けるよ。
これはね、こういうことで、それはそんな感じで……」
と説明し出した。早口で。
だからぁぁぁぁぁ(叫)
「あ、うん。
わかったっていうか……
多分これなら食べれるかも。あとこれも美味しそう(知らんけど)」
「じゃ俺これ頼むからさ、君これにしなよ。
で、食べたかったらシェアすればいいんじゃない」
「はい……(もう何でもいいや)」
アイアンはあっという間に注文を済ませ、パッと姿勢を正してこちらを向いた。
相変わらず謎に長いヒゲがめっちゃ気になるけど、可愛い顔をしている。
前のめりになって、彼はニコニコ話し始めた。
「メイサ、今日は本当に来てくれてありがと♡」
「ど、どういたしまして……(若干後ずさっている)」
「今日もすっっごく綺麗だね♡」
「どうも…」
「うんうん、その服も綺麗だね、似合ってるよ。
白いシャツもいいね。
ワーオ、そのネックレス鍵になってるんだね。
どこの鍵なの?教えて教えて♡」
そして俺に開けさせて♪と言うのを聞き、思わず吹き出した。
コ、コイツ本当に……(笑)
私が笑ったのが気に入ったのか、アイアンはさらに調子よく続けた。
「初めて会った時のドレスが俺のお気に入りだけどね。
でも君はなんでも似合うんだね」
「そんなことはないわ。似合わない色、たくさんあるし」
「そんなことないでしょ!うーん」
と言ってアイアンは店の中を見渡した。
店内は色とりどりのクッションやランプ、美しいデコレーションが其処彼処にある。
アイアンはソファ席を指した。
「たとえば、そこのクッションの赤も似合うと思うし、
あそこの壁のピンクもいいし、それからテーブルのブルー……」
「いや目に入ったの適当に言ってるだけやん。
私あの赤は無理よ。淡い色の方が似合うの」
「そんなことないけど、確かに君は明るい色が似合うかもね!
俺はね、優しい色は無理なのよ。
水色とか。
そう、今日の水色のシャツ俺イヤなの。
他のシャツ洗濯しなきゃ!はは!」
ふぅーん?と私は頬杖をついた。
たしかに少し浅黒い肌には、濃いめの色の方がいいかもしれない。
そんな事を思っていると、アイアンはテーブルの上の私の手に自分の手を重ねた。
「触っていい?」
「もう触ってるじゃない」
「へへ。可愛い手だね」
と言ってアイアンは私の手を取りキスをした。
私はすっかりゲンナリ顔だ。
「あなた、いつも友達の手にキスするの?」
「あぁー……しない」
「さっき友達になりたいって言ったじゃない」
「はは、そうだったね!あっご飯来たよ。食べよう食べよう♡」
と、ごまかして、アイアンはカトラリーを私に渡した。
テーブルの上には、食事のセットがやって来た。
見慣れない模様のお皿や、得体の知れない肉団子などなど、色々と載っている。
でもとりあえず、いい匂いだった。
「……美味しい」
「よかった!食べて食べて。俺のも切っとくからさ」
どれも日本人には縁遠いものだったけれど、味はとても美味しかった。
この手のレストランはこの街にたくさんあるが、
場所や雰囲気、クオリティから考えると、ここは結構いい店なんだろうなと思った。
ランチはいつも軽食しかとらないというアイアンは、
味は美味しいんだけど多いな!とあまり食が進んでいなかった。
勿体無い、美味しいのに。
私はモグモグと箸、じゃなかった、スプーンとフォークを動かした。
私と違ってお口が忙しくないアイアンは、また喋り出した。
「最近の生活はどう?仕事とか、暮らしとか」
「まぁ、相変わらずだけど……
英語もっと頑張らなきゃ…さっきみたいにメニュー読むのも大変だし」
「大丈夫だよ!君すっごく英語上手だぜ」
「(いやさっき聞き返してたじゃん)ありがとう。でも
そんな事はないのは自分が一番よく分かってるわ。
日本人は英語を長くやるから読んだり書いたりできるけど、
喋るのは苦手なの。日本にいたら使わないもの」
「それは分かるよ!俺たちも学生の頃にスペイン語とかフランス語とかやらされるんだ。
でも卒業したらあっという間に忘れちゃうんだよ。
使わないからね」
そっか。
ここで出来た他の友達も、そんなこと言ってたな。
アイアンは、えーと俺何か覚えてたかな…と首をひねった。
「あなたは何語をやってたの?」
「俺はスペイン語。あ、思い出したぜ」
アイアンはスペイン語で何か言った。
「なぁにそれ」
「君の目はキレイ、だよ♡」
「あっそ……」
「あとね、君の唇はステキ、君の髪もステキ、君の手もカワイイ……」
と、彼はスペイン語(なのか私にはわからんが)で私を褒め讃えた。
私はフォークを置いて聞いた。
「ねぇ?私にも少しスペイン語教えてくれる?」
「もちろん!」
「じゃぁ、アンタの鼻はでかいってなんて言うの?」
アイアンは言葉に詰まった。
そしてすぐ苦笑して、それなら俺の名前呼べばいいよ、と言い捨てた。
そう、この国では“鼻がでかい”は相当失礼な悪口だ。
だから彼も自分の高い鼻を嫌っている。
二人の攻防戦、まだまだ続きます!