先生は鋭い

水曜日は有休を取った。脳神経内科へ通院。ここは急性期専門の病院で、慢性期患者やわたしのようにお薬の処方だけのような患者は放り出されるのに、なぜか診てくれる。婦人科は卒業させられちゃったけどね。

各診察室のドアには担当医のフルネームが表示されている。わたしを診てくれるM田先生の名前はドアにはない。多分、バイトだから。

あ、わかった。M田先生はバイトだから、この患者を追っ払うって判断はしないんだな。婦人科の時、５年診てくれた担当医のN先生は医長だったから、わたしを卒業させることができたんだ。きっと。

M田先生のホームは某大学の付属病院。偉くなったかなー？付属病院のホームページを見てみると神経筋機能検査室長(なんだ？)と科長とあった。ちょっとずつ偉くなっている。


M田先生は５番の名前無し部屋にいるけれど、その隣に初めて見る名前があった。なんか、見覚えが。M田先生のホーム病院の部長先生だ。部長先生なのに、こっちでお部屋もらってるの？なんでだ？いろいろ謎。

意外と早く呼ばれた。血圧手帳を見てもらう。
「うん、いいですね」

手を前に出して目を閉じる。どちらかの手が下がってしまったら、その反対側の脳に異常があるかもなのだ。
「大丈夫」

「くるりさん、両手できらきらー、指をぱちぱちー」

出した両手を、幼稚園の時にしたようなきらきら星の手振りをしたり、親指と人差し指をぱちぱちくっつけたりをさせられる。

M田先生は、「バカみたいだけれど、これが結構いいんです、異常を発見するのに」と言う。

「次は９月に来てください。薬は余ってませんか？」

「どうしてかわからないけど、残ってます。」

「どれくらい？」

「２ヒート(20日)くらい」

「くるりさん、薬局は余分にはくれませんからね。じゃあ、10日分減らすので10日分はストックから飲んでください」で終わり。

「先生、頭と関係ないんですけど。鼻が痛いんです。多分、膿んでて。」

「どうしたの？」

「洗顔していて滑って右手の小指が右の鼻の穴に入りました。熱があるんです。」

先生がわたしの鼻を挟んで、あ、ここだと、患部を特定。

「でね、この抗生物質飲んでもいいですか？」薬を見せた。

「どれ？耳鼻科に行けばこの薬を処方されると思いますね。が、僕が今気になっているのは、どうしてこれをくるりさんが持っているかということです。」

先生は鋭い。

「うーん。家にあったからです｣
(まさか、ミルキーからもらったとは言えない)

「くるりさん、抗生物質は飲みきりですよ。貯めてはいけません。僕たちも調子が悪かったら、他の先生に処方してもらって飲みきります｣

「え？先生なんて、具合が悪くかったら、適当に薬棚から見繕って飲んじゃうんじゃないですか？」

「そんなことしませんよ。きちんと他の先生に処方してもらいます。自分で自分に処方したら、麻薬とか処方しちゃえるじゃないですか」

それはそうなんだけど、わたしが言ってるのは処方箋なんて作らないで、薬剤部に行って適当に飲んでるんじゃないの？ってことなんだけどさ。

まあ、M田先生は薬は毒だと言っているし、漢方が好きだからそんなことしないんだろうな。
いずれにしても、M田先生は優しいのだ。

夏みたいな空

優しいトレーナー

平泳ぎのパーソナルレッスンが終わると、お次はフィンスイムのグループレッスン。
｢くるりさん、フィンスイムやりますよ、チケットもらってきてください｣

15人の定員制なので、カウンターからチケットを取って戻ってくると。

ビート板に水で張り付けたA4の紙を見ながら、
「くるりさーん、今日は１キロ泳ぐことになってました」
「・・・チケット返す、わたし、帰る、今日はありがとうございました」

「くるりさん、待って待って。人数も多いし１キロもできませんよ、説明も休憩もあるからよくて500メートルです」
「・・・無理。無理。帰ります」

「くるりさん、せっかくいるんだからやりましょう、ゆっくりでいいですし、途中で休んでもいいですからー」
「・・・無理、無理、溺れる｣

「溺れません、やりますよ、やりまーす。・・・でも。今日の人たちは意外と速く泳ぐんですよねー」
「もう帰りたい(泣)」
「時間ですからもう帰れませんよ」
「・・・｣

平日の午後一のプールなんて、まず来ないので知らない面々ばかり。Ｈくん以外は誰も知らない。おじさま、おばさまばかりだけれど、一番泳げないのは絶対にわたしだ。

いつもはフィンをつけてバタフライにつながることを教わってるのかな？レッスンが始まるまでコースでは、みんなドルフィンキックっぽいことや平泳ぎとは違う腕の回し方をそれぞれしていたし、わたし、また場違いなコマに参加しちゃってるかなぁと若干ではなくかなりの不安を覚えた( ´-｀)

「こんにちはー、インストラクターのＨでーす。今日は強弱をつけて長く泳ぐ練習をします。25メートルずつ泳ぎます。が、大丈夫です、フィンがあるので泳げてしまいます。今日はみなさん、水泳部です！」
(水泳部には絶対に入部しませんよ・・・)

いつもＨくんが説明をして、お手本を見せたら、彼のスタート合図を待って参加者が泳ぎ出す仕組みだったようだが、「今日は僕も一緒に泳ぎまーす。僕が先頭です。右側通行でーす。６秒後に着いて来てください。」とスタートを待っていたおじさまをちょいちょいとどかしてさっさと行ってしまった。

まずはクロール25メートル×１本

帰りは歩き。おそらくはわたしへの配慮。Ｈくん、優しい。

フィンをつけて
超ゆーっくりクロール25メートル×４本

前を泳ぐ女性が足がつってしまったようで、向こう岸に着いたらしきりにふくらはぎ伸ばしていた。

痛くて可哀想だなぁと思っていたら、わたしも左足がつってしまい、次の25メートルでは右足もつってしまった。

嫌になってやめたくなったけれど、途中離脱できる雰囲気でもなくて順番待ちの時間はずーっとふくらはぎを伸ばす、伸ばす。


ビート板を使って強弱の練習
前半は全力、後半はよわーく。見ている人がわかるくらいの差をつけてくださいとのこと。

ビート板配布時にくるりさん、きつくないですか？わざわざ手渡しに来て声掛け。気にしてますよアピールかな。

強弱のばた足　25メートル×４本

やっぱり泳法トレーナーだからかわからないけれど、Ｈくんはとんでもない飛沫をあげてすごい速さですっ飛んでいった。もう着いちゃった。

後に続くおじさま方。お膝は曲がりフィンもめちゃくちゃ水面に出ていた。多分、絶対にお手本にしちゃいけないやつだ。飛沫だけはすごく上がっている。

わたし？もう疲れちゃって、強弱の差なんてない(^_^;)

ビート板回収。

全力クロール25メートル×４本

みなさーん。全力です！
くるりさんは無理しなくていいです。

一番の若輩者なのに、甘々の特別待遇。何でこの人だけ？というなんとなく微妙な空気を残して、Ｈくんはあっという間に、何回も腕を回すことなく向こう岸に着いている。

わたしはもう、へろへろだ。おじさまもおばさまも嬉々としている。元気だな。わたしはお言葉に甘えて、たどり着くことに注力。

最後は好きな泳法で25メートル２本。

誰もがバタフライやクロールをやる中、Ｈくんは背泳ぎで行った。おそらくはわたしへの配慮、再び。

でも、せっかくフィンをつけているからわたしも頑張ってクロールにしてみた。

計350メートルかな。わたしにしては上出来。でも、わたしがいたせいでいつもよりも距離が少なかったんじゃないかと思う。

みなさん、今日の強弱つけて泳ぐ練習、普段もやってみてください。常に同じペースではなく、ちょっと心拍数上がるくらいを何本か続けていくと、距離を延ばせますよ。長く泳げるようになっていきます。

(・・・そういうもんかねぇ)

くるりさん、きつそうでしたけど、大丈夫でしたか？

全然、大丈夫じゃなかったよ(* >ω<)
でも、すごく楽しかった。

Ｈくんの優しい配慮に、わたしも最大限の褒め言葉で返そう。

本当ですか？

本当だよ(^_^)

誰かの嬉しいと、わたしも嬉しい。梅雨なのに夏空。

電車の連結、切り離し作業のような練習

さて。通院で有休にした今日は午後一でプール。30分平泳ぎのパーソナルレッスンと30分フィンスイムのグループレッスン。しばらくフィンスイムは出ていないのだけれど、Ｈくんに誘われて参加することに。

パーソナルレッスンはいつもと同じ。まずはクロールで泳げと言われて、今日も１往復させられるのだと諦めてスタートすると、帰りは歩きましょうと言われ調子が狂った。

指導は相変わらず。壁に捕まってキックの軌道確認をしたら、電車の連結と切り離し作業のようなことをずっと繰り返す。

後にいるＨくんがわたしの踵を持って泳ぎ、わたしはＨくんの手を蹴って押し出し伸びる練習。最近はわたしの蹴りが強くなってきたのか、１度蹴り出すとＨくんはしばらく戻ってこない。

だいたい１度息を吸ったら4回はキックできるのだけれど、戻って来ないので間の２回は自分だけで蹴る。

後ろは見られないから実際はわからないけれど、後ろに押し出されたＨくんは一生懸命泳いで戻ってきているのだろう。

でもでも。男性はわからないけれど、女性に限ってみると、平泳ぎでそんなに頑張って蹴り出すキックをしている人はいないような気がする。そういうキックをする人は本気泳ぎの人ではないの？

みんな煽り足でもすいすいーっと進んでいるし、Ｈくんの言う手と足が一緒のカエル泳ぎでもみんなすいすいと泳いでいる。

キックにこんなにパワーが必要なのかと疑問に思いながらやっていると、次は手を前にして万歳キックだと。

今まではお尻の上に手を置いて踵を触って膝を十分に曲げてから蹴り出す訓練だったが、一応できるうになったので、卒業なのだそうだ。

手のかきを教えてくれても、全然やらせてくれなかったけれど、もうすぐ手もつくかもしれない。平泳ぎっぽくなるかな。

超ストレス

タヒチアンダンスのレッスンを終え、スポーツクラブへ。

月曜日はわたしが行く時間は空いているのか、その辺で自分のトレーニングをしていることが多いトレーナーのＨくん。

約束は21時半だが、21時前に着いてしまったので15分ほど早めてもらおうと思ったら、今日に限っていない。チッ。

「くるりさーん、僕ヤバいです」

「風邪っぽいんでしょ、さっきロッカーでI田さんに聞いた」

I田さんは、同じトレーナーＨくんに水中ウォーキングとストレッチとお願いしているおばさま。60歳前後かな。Ｈくんのことを「Ｈ先生」と呼ぶ。


「それもあるんですけど・・・」

「どうかしたの？」

「僕んとこ、税務署入ります」

「税務調査？笑　目立つことしたんだね、ちゃんと払いなさいよー憲法30条守れ、守れ」

「僕、国民やめます」


久しぶりに体幹をやりましょうと言って、Ｈくんが赤いバランスボールを持ってきた。ボールの上でぐらぐらプッシュアップかぐらぐらプランクかと思いきや．．．にわかには信じがたい使い方だった。

くるりさん、肩の真下に腕、腰の真下に膝、爪先は立てて、膝は腰幅に開いてください。Ｈくんがお手本を見せてくれた。
(手足の長い人がこうすると、小さな子供ならトンネル遊びができちゃうな。わたしじゃ赤ちゃんだってハイハイできないよ)

要するに四つ這い。ダウンドッグを始めるポーズだ。お腹を締めて、背中は少し反り気味。で、キープしていると、おもむろに

「僕、ボールでお尻を押しまーす、僕に負けないように耐えてくださーい」

「ちょっと、ちょっと！」

「はい？」

「嫌だ、こんなの」

「なんでですか」

「なんでもやだ」

「恥ずかしいですか？恥ずかしくない！トレーニング！｣

｢さすがに手じゃくるりさんのお尻押せませんからねー、はい。やりまーす！」

「力が拮抗している腕相撲みたいな感じです！」

有無を言わせず、トレーナーは訳のわからないことを言っている。

少し慣れたら、片手を上げて三点で支えながらお尻でボールを押し返す。

バカみたいだけれど、これがなかなか体幹に効いている。効いているけれども。どもども。

その辺で見てる人、絶対に変だと思ってるから。

わたしの通うスポーツクラブでは、公衆の面前(ファンクショナルスペースと呼ばれる芝生エリア)でパーソナルトレーニングをする。Ｈくんと遠征で他店へ行ったことがあるが、そこではパーソナルトレーニング用にスペースが区切られていて人目を気にせずトレーニングができる。

人目を気にするわたしとしては、普通のなんてことないトレーニングでも見られるのが嫌なのに、こんなヘンテコな動きを見られるのはもっと嫌なのだ。

というか、そもそもこの突き出したお尻をボールで押されるという行為自体が嫌なのだ！もう、超ストレスだよ。まじで嫌だ。

じいじとばあばへ

ミルキーが就職して２ヶ月半が経った。なんだかんだと頑張っている。お給料も2回もらった。

先日の初任給でわたしとマイケル、マイケルの両親、マイケルの兄妹、わたしの弟二人、そして母と死んだ父にプレゼントを用意してくれた。

マイケルの親兄弟にはゴールデンウィークに帰省した際に渡し、わたしの親兄弟は今日渡したいと、わたしと一緒に実家へ向かった。

小さい時は一人で電車へ乗り継ぎ遊びに行っていたのに、お母さんのトイレの失敗を話してから、ミルキーはビビって一人では行きたがらなくなってしまった。

医療に携わる者としていささか恥ずかしい気もするけれど、気持ちはわかる。

ミルキー　「ばあば！」
お母さん　「おやおや、ミルキー」
ミルキー　「ミルキー、来たよ！」
お母さん　「どうした？」
ミルキー　「プレゼント持ってきたの」
お母さん　「今日は何の日だ？」
ミルキー　「ミルキー、お給料もらったから」
お母さん　「なんだ、なんだ」
ミルキー　「ばあば、お手紙読んで」
お母さん　「なになに？」

『四月から社会人になり
自分で稼げるようになりました。
プレゼントのマグカップ
たくさん使ってくれたら嬉しいです。
これからも元気で長生きしてね。
ミルキーより』

お母さん　「稼げるようになったか。たいしたもんだ、一人前だな。お手紙、仏壇に上げてじいじにも読ませてやって」

ミルキー　「見て、じいじとお揃いの色違いのカップだよ」
お母さん　「じいじとばあばの名前が入ってるな。じいじは死んだぞ」
ミルキー　「わかってるよーでもじいじ、たくさんミルキーのお世話してくれたからお礼だよ。ばあばはもっと長生きしてね」

ばあばは十分長生きしている(^_^;)

孫からのプレゼントはとても嬉しかったようで、じーっと手紙とマグカップを眺めていた。普通のマグカップだけれど、絶対教祖からのお下がり、感動なんだろうな。

お母さん「ミルキーのお給料が減っちゃったからお小遣いやらないといけないな」
ミルキー「ミルキーは社会人だからもう要らないよ。ミルキーがばあばにお小遣いあげる」
お母さん　「大変だ、もったいなくて使えないぞ」

絶対教祖として最強の集金マシーンだったミルキーもこれからは３人のじいじ、ばあばにお返しするそうだ。良い心掛け、偉いぞ、ミルキー。




昼間ミルキーがABCクッキングスタジオで作ったシュークリーム。みんなで美味しく食べた(*´∀`)( ﾟ∀ﾟ)(ﾟ∀ﾟ )