散歩の閑人:メタ坊っちゃまのYOASOBI?

若気の至りが過ぎてメタボでも、世遊びは辞められない。

おくりびと

2008年10月06日 | ☆たまに娯楽
スポットCMでは「納棺師」の物語だというから、だれでもが葬儀屋さんのこと?と勘違いしているらしい。大抵、葬儀の流れの中に、湯灌や納棺といった行程があるために、葬儀屋さんがほとんど仕切ってしまうが、それを特化したものが「納棺師」という職業だ。実に重いテーマで進行するのかと思っていたら、ときとしてユーモアのある小ネタがあってクスリとさせられる。だれでも「おくりびと」となり「おくられびと」になるという大前提のもと、物語が進んでいく。登場する葬儀屋さんは対照的にコーディネーターのような存在に終始する。本木雅弘さん演ずる納棺師は、その前職がオーケストラのチェロ弾きだったことから、実に様式美と所作の繊細さが強調されている。山形県の美しい自然を背景に、偏見や職業差別をからめている。中でも、妻を演ずる広末涼子さんの「汚らわしい」と夫を拒絶するシーンや、幼なじみの杉本哲太さんの「もちっとましな職業に就けよ」は強烈なインパクトを残す。もし、モントリオール映画祭でグランプリを取らなかったら、狭小な日本人のバッシングで配給する映画館も限られたことだろう。
とにかく何度もホロリとさせられたし、最後にはどんな職業でも、それを天職として真摯に務めるひとびとは、崇高で素晴らしい存在になりうると主張している。その中に、生と死、家族の絆が描かれ、CMが誇張なのではなく、本当に素晴らしい映画だと思う。ぜひ、映画館でご覧になることをおすすめしたい。
「ハレ」と「ケ」、「浄」と「穢」に知らぬ間に支配されて生活する私たちにとって、これからはもっと生きにくい世の中になるかもしれない。江戸時代、死を司る坊主と医者は同位だったが、明治になって医者は「生」に立ち会い、「死」を遠ざける存在となって「先生」と崇め奉られる。それが、最近は「医者は病気を治し、命を救うのが当然で、治せないとか救えないなどとんでもない」という世の中になった。いわゆる不浄の世界に身を置く存在は、本来奉らなければならない。そうでなければ、担い手がいなくなってしまう。

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