とんとご無沙汰していた横須賀にちょくちょく帰る。
上町1丁目交番前の交差点を信号待ちしていると、すぐの歩道に段ボール箱が捨てられている(見出し写真)。
「すかジャン着て、すかメン、すかコロ、食べながら」
これは俳句?川柳?・・・それよりも、ひょっとして看板?
ぶどうの空き箱に張り紙をしてあるので、てっきり八百屋か果物屋と思い込んだが、見上げてみるとお肉屋さんだった。
それだって、よくよくのぞきこんでみないとわからないほどの間口だ。
考えてみれば、お肉屋さんのショーウィンドーというかショーケースは、歩道に面したシャッターをガラガラっと開けるとすぐにあることに気づく。
つまり、お客さんは、歩道に立って買い物をしている訳だ。
家は南向きがいいけれど、店は陽射しのない北向きがよいとされる。
必然、陽の射し込む店では、庇を出したり、大きなのれんを下げたり、ついにはアーケードをこしらえることになる。
傘がまだ手作りで組み立てられ、貴重品だったころは、このアーケードは傘いらずでウィンドーショッピングできたから、お客さんにとっても、お店にとっても一挙両得だった。
アーケードができたからこそ、商店街は道の両側に店舗を並べることができた。
東京の銀座と並ぶショッピング街・イセザキ町商店街は、あえてアーケードを取り払い、公園の歩道を行くかのような24時間歩行者天国のオープンモール第1号となり、脚光を浴びる。
全国中小の繁華な商店街は、右へ倣った。
アーケードは火事の際の延焼を助長するため、新規の設置は今はできない。
そして、陽の射し込む店は、お客さんに入ってもらわなければ品物を売ることができないような構造に姿を変える。
ショーケースを見ると、実にさまざまな商品が並べられている。
上段には、ローストビーフ、コンビーフ、しゃぶしゃぶ用、注文で切り分ける肉の塊。
中段には、花びら型にあしらった牛、豚、鶏の挽肉。
下段には、すかメン(チカツ)、ヒレひとくちカツ、そして、男しゃく、アボカド、クリーム、肉じゃが、カボチャの各種コロッケなど生のフライのラインナップ。
店の奥には、ずらりと積み上げられたステーキ牛の塊肉。
うしろを振り向くと、手作り惣菜と並んで、メガかつという名のやたら大きなとんかつがある。
聞けば、これ1枚食べるとお腹いっぱいになるそうで、これを買って、店のカウンターに置いてあるセルフサービスのとんかつソースをかけ、ハンバーガーを食べるかのように、かぶりつきながら帰っていくお客さんが後を絶たないという。
さて、すかメン(下写真上)と、すかコロ(下)を買ってきた。
揚げ物は、原則、注文を受けてから揚げる。
揚げたてを頬張ってみると、めちゃ美味い!
瀬谷の我が家に帰り、袋から取り出して食べてみる。
さすが、明治43年創業の老舗肉屋・横須賀松坂屋のことだけあって、さめても美味い。
そういえば、「諸官庁御用達」の時代がかった木製看板が、店の脇に飾られていた。
しかし、段ボール看板は、書道家と自称するパフォーマーが、歩道上を展覧会場にするかのように、縦横無尽にかつ雑然とした感じでとんでもなく自己主張していた。
昔は、海軍さん御用達の店だったんだろうなと思いながら、パンフレットを見ると、猿島でバーベキューをする際に予約すれば、渡船の乗船時間に合わせて三笠桟橋までバーベキューセットを届けにきてくれるのだそうだ。
兼業で花を売っている酒屋がついでに野菜も置いている…そんな感じ。
1年に1回、横須賀に行くので、その時は寄ってみよう。
西友もなくなった気配があるものの、三笠焼は健在。
一番の驚きは、横須賀ベーカリーが見当たらないこと。
そうそう、このお肉屋さん、浜銀の近くにタイガーという焼肉屋を出店しているみたい。
もちろん、阪神ファンのようです。