260店舗の飲食店がひしめくという横浜中華街の中でも、異彩を放っているのが「安楽園」であることは確かだ。
その存在自体に歴史的価値が高いと、中華街好きの間では定評があり、中華チャンプの話しでは「安楽園を守る会」まであるというので、インターネット検索をしてみると、本当に会があって、定例の宴会をしていることを知った。
なんといったって、銭湯を思わせるようなその外観。
入口に近づいてみても、店内は見えないし、なにしろ、木造校舎時代の学校を思わせるかのような、営業中の黒札が、授業中を連想させて、学校嫌いな人間に威圧感を与えている。
その隣りにさがっている札には、薄く「炒飯麺類もございます」と消え入るように書いてあるから、なおさら入るのをためらわせる一因にもなっているようだ。
しかし、守る会があるくらいだから、守るに値する店に違いないと、1歩踏み込んでみた。
ギギッとドアを開けると、すぐに手洗い用の御影石の手水鉢があって、時代を感じさせるソファーが置かれていた。
見上げると、壁には、お酉様で買っただろう、大きな飾り熊手が壁にあり、待合い用のイスがテレビとともに並んでいた。
まるで、診療所のようである。
「どうぞ、こちらへ」と女将さんに案内された部屋は、シャレた格子づくりのいかにも宴会用個室の風情がある。
もともとは、お座敷だったらしく、違い棚と大黒柱、床の間がある。
回転式の丸いテーブルと、いかにも宴会用イスというのが、ここのこだわりのようで、アコーディオンカーテンを開けば、どことも変わらない中華料理店になるだろうに、あえて個室仕様で応対するのは、永年の歴史がそうさせているようだ。
注文をして、料理ができるまでの間、探検してみることにした。
女将さんに了承を得ると「ただ古いだけですよ」と答えが返ってきた。
まず、トイレに向かうと、そこには坪庭のような場所があって、日本庭園風になっている。
蒲田行進曲の銀ちゃんとヤスの階段落ちを連想させる、実に年代を渋く光らせた階段で、下から見上げると光が神々しく見える。
横浜大世界にあった上海租界をイメージした品々を配置したら、絶対ここは南京町のロケ場所として脚光を浴びるだろう。
ギシギシと階段を登っていくと、光が射し込んでいた窓は、ステンドグラスのような細工がされた窓だった。
緑色の十字と、交点の赤が、ますます、上海バンスキング的で、仙台医専に留学していた魯迅や、中華街に潜伏していた孫文、そして日中国交回復に貢献した周恩来などが、その片隅で座っていてもおかしくないロケーションと雰囲気を持っている。
2階にもさまざまな大小宴会場が並んでいて、企業単位で宴会を頻繁にしていた頃や、ホテルやパーティー会場などがなかった頃に、多くの著名人達が利用していただろうことを思わせる。
さて、料理が運ばれてきた。
まず、美味いと評判のシューマイ5個525円。
五目焼きそば945円
小海老入りチャーハン945円
五目チャーハン840円
そして、五目タンメン945円(見出し写真)。
低価格競争に明け暮れている中華街の中にあって、この価格はサラリーマンにとって、ちょっと痛い。
おまけに、サービス料が別に10%かかるから、やっぱり安楽園好きじゃないと、そうそう毎日は通えない。
逆に、平日だろうと、土日だろうと、値段を変えるような根性は持ち合わせていない。
小海老といえども大きいし、シューマイもチャーハンも美味いし、タンメンは醤油味ながら伝統の味だ。
ぜひ、ここはチャイナドレスなんかを着て、記念写真しておきたい。
昔の南京町を味わう店だといえよう。
さて、お勘定。なまこ壁をイメージさせた帳場がまたミスマッチ。この発想はどこからくるのだろう?
日本大通りと富士山を被写体として、定点観測中です。
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