今日は血液検査とドクターとの面談でした。例によって血液に異常なし、特記すべき副作用なしということで、待ち時間1時間強プラス検査・診察時間15分で済みました。次の、最後の抗がん剤投与は11月21日。その後に最終検査と放射線治療医との面談が予定されています。
抗がん剤のお値段
さて、これまで抗がん剤の納品は別薬局で、ここの請求書には自己負担額しか記載されていなかったのですが、9月19日分から納入薬局が一本化され、昨日初めて抗がん剤の本来の価格が表記された請求書が来ました。Σ(゚Д゚)
ただ「抗がん剤」としか記載されてないので2種類(パクリタクセルとカルボプラチン)あるうちのどちらがどの価格なのかは不明ですが、一つは262.73€で、もう一つは650.28€!その他の投薬を含めて1回の抗がん剤治療でトータル1092€(約14万9千円)になります。高いんだろうなとは思ってましたけど。。。本当にこの治療費の大部分を補償してくれる健康保険のありがたみが分かります。私の1回の抗がん剤治療の自己負担分は42€前後(約5600円)だけで、治療費全額の4%弱に過ぎません。
つくづく日本で病気にならなくて良かった!と思ってます。
がん代替治療の死亡率
今日はダイヤモンドオンラインに気になる記事を発見しました。「がん代替療法の選択で死亡率は最大5倍超に、米国の研究」という医学ライター・井手ゆきえ氏の記事です。
以下引用。
誰でもがん治療は怖い。告知のショックから立ち直る間もなく情報の波に翻弄され、重大な決断を迫られる。この選択が自分の生命を左右するかもしれない、という恐怖に不安が募る。
そんなとき「がんが消えた!」「免疫でがん細胞をたたく」等の“万能感”と“わかりやすさ”が差し出されたら、どうだろう。日頃から科学的・合理的思考の持ち主を自任していても「民間療法」や「代替療法」に気持ちがふらりと揺らぐ。
しかし、だ。8月に米国立がん研究所の機関誌に掲載された研究によると、「転移のない早期がんの治療に代替療法を選んだ患者が、5年以内に死亡する確率は、標準療法を選んだ患者より2.5倍高い」という。
乳がんに至っては、代替療法を選んだ患者の死亡リスクが、標準療法を選択した患者の5.7倍にもなった。大腸がんは4.6倍、肺がんは2.2倍へとそれぞれ上昇。一方、前立腺がんではリスクの変動は認められなかった。
本来、転移がない早期乳がんに対する標準療法の5年生存率は、9割以上だ。大腸がんも同様で、転移がないステージ1~2の5年生存率は9割超。リンパ節転移があるステージ3でも8割を超える。
肺がんはがんの組織型で進行スピードが違い、一概にはいえないが、進行が遅い非小細胞肺がんならステージ1~2の5年生存率は、標準療法で6~9割に達する。
少なくとも標準療法が進化している乳がん、大腸がん、一部の肺がんでは、代替療法によって手遅れになる可能性が極めて高い。
一方、前立腺がんの多くは進行が遅く「無治療経過観察」が普通に選択される。平たくいえば放置であり、代替療法に高額な費用をかける意味からして不明だ。
代替療法を選択するタイプは、より高収入、高学歴で併存疾患が少ない若い人らしい。背景には、これまでの成功体験や現代医療への不信、健康に対する信念などさまざまな理由があるだろう。
しかし、がんの治療は自分にとって未知の領域だ。無手勝流に走る前に、標準的な選択肢に目を向けることが自分を救う道になる。
この記事を読んで、抗がん剤治療・放射線治療擁護記事かと思いました。「8月に米国立がん研究所の機関誌に掲載された研究」とあるだけで、研究者の名前もリンクも記事中になかったので不審に思って、ソースを探してみました。
ソースは「Journal of the National Cancer Institut」に8月10日に発表された、Skyler B. Johnson、Henry S. Park、Cary P. Gross、James B. Yuらによる研究論文「Use of Alternative Medicine for Cancer and Its Impact on Survival(がん代替治療の選択とその生存率への影響)」のようです。
この研究では560人のがん標準治療を受けた患者と280人のがん代替治療を選択した患者が統計的に比較評価されています。統計のベースとしては人数が少なすぎるきらいがあります。患者データは米国立がんデータベースから2004-2013年の症例を使用したようです。
ここで言う「がん標準治療」は抗がん剤治療・放射線治療・手術およびホルモン治療を指しています。「がん代替治療」はこうした標準治療以外を指しており、対象となった280人の患者がどんな治療を試みたのかは全く分かっていません。代替治療のセラピストやその治療を受ける患者たちは往々にして情報公開に消極的であるために米国立がんデータベースを使用し、標準治療かそうでないかの区別を利用して統計的評価をしたとのことなので、この代替治療の「十羽一絡げ」は少なくとも意図的ではないようです。
上のダイヤモンドオンラインの記事にある「代替治療を選択するタイプ」の記述は、原文にある「女性」という属性と「がんステージが高い」という属性が抜けています。意図的なのか不注意なのかは不明ですけど。
「死亡率は最大5倍超え」は確かにセンセーショナルな見出しですが、よく見るとそれほど確実な所見というわけでもなく、色々制約のある中での一つの統計的データに過ぎないことが分かります。
代替治療ごとの5年後生存率の統計がないことがとても残念ですね。ぼったくりの怪しげな療法もなかにはかなり混じっているようなので、情報公開に消極的なのも頷けます。