徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:デイビッド・セイン著、『NGフレーズでわかる! 正しく伝わるビジネス英語450』(西東社)

2019年01月16日 | 書評ー言語

『NGフレーズでわかる! 正しく伝わるビジネス英語450』は、期間限定で1冊199円になっていたので、思わずまとめ買いしてしまったデイビッド・セインの電子書籍のうちの1冊。『ネイティブはこう使う!』シリーズとは違う構成で、先ず日本人(とは限りませんが)が言いそうな間違ったフレーズがユーモラスなイラストとともに紹介され、どういうニュアンスになるのか解説があり、その後に正しいフレーズ、そして同じようなシチュエーションで使える表現が紹介されます。例えばNG表現「My proposal passed away(私の提案はお亡くなりになりました)」と黒い額縁に入れられた文書を思い浮かべ、「?」と思う相手のイラストがあり、その下に本来言いたかったであろう「提案が通った(承認された)」の正しいフレーズ「My proposal got accepted」が紹介され、次ページに「got approved」「got okayed」「got rejected」「was turned down」などの表現が紹介されています。

NG表現としては様々なおかしな直訳例が紹介されていて、かなり楽しめます。中には一見正しそうな表現があり、実は失礼なニュアンスがあるので適切ではない例などは勉強になりました。

【目次】
本書の使い方
音声ダウンロードの使い方
巻頭特集 使ってはいけないとっさの20フレーズ
Part1 オフィス内・デスクワーク
Part2 電話・メール
Part3 会議・プレゼンテーション
Part4 訪問・来客・商談
Part5 休憩・食事・接待
日本語から引ける!ビジネスフレーズINDEX


書評:デイビッド・セイン著、『ネイティブはこう使う!マンガでわかる時制・仮定法』(西東社)



書評:デイビッド・セイン著、『ネイティブはこう使う!マンガでわかる時制・仮定法』(西東社)

2018年11月21日 | 書評ー言語

期間限定でなんと1冊199円になっていたので、思わずまとめ買いしてしまった『ネイティブはこう使う!』シリーズ。まずは私にとって一番もやもやしている時制・仮定法について書いた本『ネイティブはこう使う!マンガでわかる時制・仮定法』をざっと通し読みしてみました。使う状況が漫画化されていて、さらに似てる表現と対比させることでよりイメージが掴みやすく、理解が深まるように構成されています。覚えて使いこなせるかは別として(笑)

たとえば、「I forget your name」という現在形と「I've forgotten your name」という現在完了形の違い。前者には「(今は)うっかり忘れてしまっているが、後で思い出せる」というニュアンスがあるのに対して後者は「すっかり、完全に失念していた」という意味合いがあるとか、同じ未来形でも「will」には未来の行動を今思いついたようなニュアンスがあるのに対して「be going to」には既に予定されている行動を表すとか、「I think about doing something」と「I'm thinking about doing something」では後者の方が本気度が高いなど。

ネイティブがそばにいないため、なんとなくいい加減に英語を使ってますが、これで少しモヤモヤが解消された感じです。

時制の一致もドイツ語にはないので、私にとってはなかなか感覚がつかめない現象です。仮定法はほぼドイツ語と同じということが改めて確認できました。

英文法書を紐解けばきっと同じことが詳しく書いてあるのでしょうが(私も「スーパーレベルパーフェクト英文法」なんてのを持ってますけど)、分厚くてとっつきにくいのが難点。「マンガで~」のほうが手っ取り早くイメージが掴めるのがいいですね。

目次

Part 1 まずはいろいろ見てみよう!時制ピックアップ

Part 2 身につけたい!基本の時制

Part 3 使いこなしたい!上級の時制

Part 4 願望を伝える!仮定法

 


書評:ルーク・タニクリフ著、『「カジュアル系」英語のトリセツ 文字でも会話する今どきの英会話』(アルク)

2018年10月28日 | 書評ー言語

『「カジュアル系」英語のトリセツ 文字でも会話する今どきの英会話』は、『「とりあえず」は英語でなんと言う?』と『「さすが!」は英語でなんと言う?』の著者であるルーク・タニクリフの著書で、前2書とは逆に英語、特にネットやチャット、SNSなどで使われる今時の英語を起点に日本語で解説しています。覚えて使いこなせるかどうかというのは別として、非常に読みやすく、解説も分かりやすいです。

ただ、税込み価格1620円は若干割高に感じられます。1000~1200円くらいが適正価格のような気がしますね。

目次

Chapter 1 友だちへのメッセージ

Chapter 2 友だちとの会話

Chapter 3 仲間内のおしゃべり

Chapter 4 家族・パートナーとのやりとり

Chapter 5 オフィスでのコミュニケーション

Chapter 6 投稿・コメント

Chapter 7 レビュー

Chapter 8 チャットルームにて

APPENDIX

巻末に例文付きの略語リストがあり、参考になります。


書評:ルーク・タニクリフ著、『「とりあえず」は英語でなんと言う?』(だいわ文庫)

書評:ルーク・タニクリフ著、『「さすが!」は英語でなんと言う?』(だいわ文庫 Eigo with Luke)


書評:ルーク・タニクリフ著、『「さすが!」は英語でなんと言う?』(だいわ文庫 Eigo with Luke)

2018年02月08日 | 書評ー言語

ルーク・タニクリフ(Luke Tunnicliffe)著、『「さすが!」は英語でなんと言う?』は、『「とりあえず」は英語でなんと言う?』の続篇です。

目次は以下の通り。

はじめに

第1章 「自分の行動を伝える」…リベンジする/泣く/理解する/ど忘れ/あなたが好き/ハマる/ディスる/ドタキャンする
コラム ビールを英語で注文する
コラム 運動に関する英語

第2章 「自分の状態を伝える」...時差ボケ/花粉症/大丈夫/忙しい

第3章 モノを評価する...薄い/腐る/神ってる/ゲスい/ウケる/さすが
コラム 神を冒涜していない?
コラム 性差別的な英語に注意
コラム ガラクタを表す面白い英語

第4章 「性格」を伝える...KY・忖度/人見知り/明るい/草食系/積極的/のんき/ナイーブ/お酒が強い/いい人/悪い癖/ずる賢い/オタク
コラム 血液型で食べるべきものを考える

第5章 表現力を上げる英語...そろそろ/やっぱり/せっかく/など/いっぽうで/いくらなんでも
コラム 同音異義語のおやじギャグ
コラム ネイティブらしくなる自問自答の使い方
コラム bow-wow以外の犬の鳴き声8

第6章 「日本の文化」を伝える...おもてなし/絆/日本が好きな外国人/桜・花見/紅葉
コラム 海外にない文化「忘年会」
コラム 「神社」と「お寺」の間違った英語

第7章 これ、英語でなんと言う?...ハーフ/外国人/おととい・明後日/高齢者/田舎
コラム ratとmouseでは大違い!
コラム たくさんある「うんこ」の英語
コラム 直訳できない日本語①「窓口」
コラム 直訳できない日本語②「嗜好品」

今回も色々笑えました。特にウケたのが、「ど忘れ」を意味する「脳みそがおならをする(have a brain fart)」。「slip my mind」は標準的な「ど忘れ」の表現として知っていても、さすがに「おなら」を使った表現は知りませんでした(笑)

面白いと思ったのは、イギリスの「電車オタク」を「アノラック(anorak)」というとか、「健康オタク」は「健康なナッツ(health nut)」というとかですね。オタクと言えば、geek、nerd、otakuだと思ってたので、なかなか興味深いです。

「おととい・明後日」は英語圏では普通使われないそうですね。私が英語でコミュニケーションをとる時は常に時差を考慮しないといけないので、おととい・明後日どころか昨日・明日も避けているので気が付かなかったのですが。ドイツ語とは違うんですね。ドイツ語では、「昨日」は「gestern」、「おととい」は「vorgestern」、「明日」は「morgen」「明後日」は「übermorgen」と普通に言います。

また「嗜好品」にぴったりはまる英語もないという指摘にもちょっと驚きました。ドイツ語で「嗜好品」は「Genussmittel」です。恐らく日本語の「嗜好品」という言葉およびそういう分類の仕方自体がドイツから取り入れられたのではないかと思います。明治・大正時代には欧米言語からの翻訳によってさまざまな新しい日本語が誕生しましたからね。と思って調べてみたら、ウイキペディアにこんな記事が:

「嗜好品という用語は1912年大正元年)の雑誌「太陽」に掲載された森鴎外の短編小説「藤棚」の記述

藥は勿論の事、人生に必要な嗜好品に毒になるような物は幾らもある。世間の恐怖はどうかするとその毒になることのある物を、根本から無くしてしまおうとして、必要な物までを遠ざけやうとする。要求が過大になる。出來ない相談になる。— 森鴎外「藤棚」、『太陽』第18巻第9号、1912年

による」

なるほど、森鴎外はドイツに留学してましたから、納得ですね!

なんて、英語と日本語の俗語比較をしてたはずなのに、なぜか遠いところまで脱線してしまいました。(* ̄▽ ̄)フフフッ♪


書評:ルーク・タニクリフ著、『「とりあえず」は英語でなんと言う?』(だいわ文庫)

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書評:石黒圭著、『語彙力を鍛える~量と質を高めるトレーニング~』(光文社新書)

2017年12月11日 | 書評ー言語

石黒圭著、『語彙力を鍛える~量と質を高めるトレーニング~』(光文社新書)は2016年5月発行。これまでに読んだ語彙力の本4冊とは全く違うアプローチで、個別の言い回しや慣用句・ことわざなどの正誤を羅列するようなことは一切なく、あくまでも語彙力を高める方法論が展開されています。中には言語学的な専門用語もあり、簡単に説明されているとはいえ、予備知識のない方にどれ程理解できるものなのか分かりません。私は一応言語学修士ですので、その辺は問題なくスルーして理解も容易だと感じましたが。

著者の石黒圭氏は、国立国語研究所研究系日本語教育研究領域代表・教授、一橋大学大学院言語社会研究科連携教授だそうです。

彼は語彙力を以下のように定義します。

語彙力=語彙の量(豊富な語彙知識)x 語彙の質(精度の高い語彙運用)

「脳内の辞書を豊かにする22のメソッド」と煽りにありますが、語彙の量を増やすメソッドが11、語彙の質を高めるメソッドが11、本書に紹介されています。

目次は以下の通りです。

はじめに 言葉が思考を規定する

第一章 語彙についての基礎知識

一 語彙について考える

二 理解語彙と使用語彙

第二章 語彙の「量」を増やす

一 類義語を考える

二 対義語を考える

三 上位語と下位語を考える

四 語種を考える

五 文字種を考える

六 書き言葉を考える

七 専門語を考える

八 方言を考える

九 新語と古語を考える

十 実物を考える

十一 語構成を考える

第三章 語彙の「質」を高める

一 誤用を回避する

二 重複と不足を回避する

三 連語の相性に注意する

四 語感のズレを調整する

五 語を適切に置き換える

六 語の社会性を考慮する

七 多義語のあいまいさを管理する

八 異なる立場を想定する

九 語の感性を研ぎ澄ませる

十 相手の気持ちに配慮する

十一 心に届く言葉を選択する

あとがき

参考文献

索引

この目次を見れば一目瞭然かと思いますが、語彙の「質」に実際の運用場面などの社会的文脈やコミュニケーションの質そのものまで含まれています。そこに著者の社会言語学者としての見識がふんだんに盛り込まれているということが理解できます。そうした言葉の社会性がコミュニケーションの際に重要なことは言うまでもありませんが、それを「語彙力」に内包させることには少々違和感があります。こうした観点は「コミュニケーション能力」の重要要素ではあっても、「語彙力」の構成要素ではないはずです。このため、第三章の内容は、阿部紘久著、『文章力を伸ばす 書くことが、これでとても楽になる81のポイント』の内容と重なる部分が多いです。つまり「語彙力」の範疇を超えてしまっているということですね。

そうした細かいツッコミは置いとくとして、本書は系統だった語彙力を高める方法論を提示しており、話題の達人倶楽部編『大人の語彙力が面白いほど身につく本 レベル1&2』のようにただやみくもに知識が羅列されているわけではないことが大きな特徴です。語彙を勉強するコツとそれを使う際の心構えを学ぶには優れた本だと思います。


書評:語彙力向上研究会著、『できる人の語彙力が身につく本』&『ビジネスですぐ使える語彙力が身につく本』

書評:話題の達人倶楽部編『大人の語彙力が面白いほど身につく本 レベル1&2』(青春出版社)

書評:阿部紘久著、『文章力を伸ばす 書くことが、これでとても楽になる81のポイント』(日本実業出版社)


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書評:阿部紘久著、『文章力を伸ばす 書くことが、これでとても楽になる81のポイント』(日本実業出版社)

2017年12月04日 | 書評ー言語

この『文章力を伸ばす 書くことが、これでとても楽になる81のポイント』(2017年6月発行)は分かりやすい実用書です。レイアウトがそれ自体で内容の構造を明確に視覚化する助けとなっており、報告書やプレゼンなどのレイアウトの模範と言えます。

まずは目次から。

はじめに

序章 書く力は、考える力そのものです

第1章 受け手発想で書く

第2章 文の基本形を確かめる

第3章 言葉を削れば、より多く伝わる

第4章 読むそばからスラスラ分かるように書く

第5章 文を分ければ、スムーズに伝わる

第6章 的確に書く

第7章 「てにをは」を使いこなす

第8章 読点は意味の切れ目に打つ

第9章 共感が得られるように書く

第10章 長文をすっきり構成する

第11章 視覚的効果と表記に気を配る

第12章 話し言葉の影響を避ける

おわりに

どの章も最初に学習ポイントが提示され、その後に悪い例とその改善案が続くように構成されています。その悪文の例を見て、私は自分の文章力に少し自信を持つことができました。「そこまでひどい文は書いてない」という安心感のようなささやかな自信ですけど。

文章を構成する原則は、「いかに自分の思考を読み手に分かりやすく表現するか」というどの言語にも基本的に共通することなので、私がこれまで意識してきたドイツ語の文章構成原則と概ね一致しています。すなわち、読み手が誰かを意識する、簡潔に書く、修飾をつけすぎない、重複表現を避ける、視覚的効果を活かすなどのポイントです。この本でこれらの点を日本語の例でおさらいできました。

日本語独特のポイントとしては、読点の打ち方や話し言葉の影響が挙げられます。

最近受けた翻訳実務検定試験の和訳の課題で、私の翻訳文をチェックしてくれた方と読点の打ち方で少々見解の違いがあり、「実際のところどうなんだろう?」と疑問に思っていたところだったので、本書の第8章はまさに「そう、それが知りたかったの!」と拍手したくなる内容でした。読点が必要なところが12項目きちんと明文化されて分かりやすく解説されています。また、中黒「・」の使い方も説明されていて、もやもやとしていた霧が晴れるような思いがしました。

話し言葉の影響に関しては、海外在住でタイムリーな日本語にあまり影響を受けない私にはさほど問題になることはないのですが、気を付けなければいけないとすれば、「逃げ腰表現」ですね。「みたい」「かな」「感じ」「とか」「たり」「結構」「的には」といった表現のことですが、はい、私的には結構こういう表現使ってたりしてるかな、とかいう感じですね(笑)

もっともこのような逃げ腰表現を書いているのは、もっぱら自分のブログやSNSでのやり取り上のことなので、人間関係を円滑にするための一手段だと思いますし、また、ブログやSNSは言葉を「書く」ところではありますが、厳密には「書き言葉空間」とは言えないので、話し言葉で書くのがむしろ適切だろうかと思います。

「」を活用するという指摘も、目から鱗が落ちるような示唆に富んだものでした。

ここ何日か語彙力関連の本を連続して読みましたが、この文章力の本が一番ためになりました。

語彙はつまるところひとつひとつ覚えるしかないという壁がありますが、文章力は原則をおさえればいいというある種のシンプルさがあるので、両者を単純に比べることはそもそもできません。けれど、それを承知の上であえて言えば、本書が先に読んだ語彙力関連の本4冊よりも読み手視点が反映されているので、教育学的観点から見て特に優れていると思います。

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書評:語彙力向上研究会著、『できる人の語彙力が身につく本』&『ビジネスですぐ使える語彙力が身につく本』

書評:話題の達人倶楽部編『大人の語彙力が面白いほど身につく本 レベル1&2』(青春出版社)

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書評:話題の達人倶楽部編『大人の語彙力が面白いほど身につく本 レベル1&2』(青春出版社)

2017年12月04日 | 書評ー言語

『大人の語彙力が面白いほど身につく本』の1と2も今年出版されたばかりの新しい本です。

大人の語彙力が面白いほど身につく本』レベル1(2017年2月発行)の目次は以下の通りです。

Step 1 言葉を正確につかむのが、語彙力の基本です

Step 2 その「書き間違い」、語彙力を疑われます

Step 3 語彙力アップの鍵は「言い間違い」をしないことです

Step 4 あらたまった言葉を使えれば、大人として一人前です

Step 5 カタカナ語を「武器」にすると語彙力は面白いほど上がります

Step 6 言葉の使い方が魅力的な人は上手に「たとえ」を使っています

 

情報量が多く勉強にはなりますが、索引がないので辞書的な使い方はできず、また語彙の分類も言葉の意味や使用状況によって分類されているわけではないので、いざという時に特定の言葉を確認するのには不向きです。

また「面白いほど身につく」というタイトルに相応しい教育学的な工夫が凝らされているわけではなくただの羅列なので、「身につく」ほうに期待していると失望せざるを得ません。身につけるには、この本を何度も読むか自分なりのノートなりカードなりを作成して学習する必要があります。もちろん一度見ただけで何でも記憶できる方は別ですが。

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大人の語彙力が面白いほど身につく本』レベル2(2017年9月発行)の目次は以下の通りです。

Step 1 たった一つの読み間違いであなたの日本語が台無しです

Step 2 大人になると、言い間違えても誰も指摘してくれません

Step 3 これを言うだけで、「言葉を知らない人」と思われます

Step 4 意味をおさえないと痛い目にあう日本語です

Step 5 人の品性は書き間違いひとつにあらわれます

Step 6 書き間違いひとつで、あなたの教養がはかられています

Step 7 カタカナ語を使うならこのポイントは外せません

Step 8 大人社会では、言葉を武器にするしかありません

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レベル2も1と同じことが言えます。索引がないので辞書的な使い方はできません。

私にとって参考になったのは、最近変更された外来語や外国名・地名表記法やひらがなで書いた方がいい言葉、そしてレベル1・Step 6の比喩のつくり方やレベル2・Step 8の中の【ご】のつく上級敬語などです。

掲載内容の中でそれは一般的な「大人の語彙力」には属さないのではないかと疑問に思ったのが、アナウンサー泣かせの言葉やプロのライターなら間違えてはいけない書き方でしょうか。知っていれば「通」なのかもしれませんけど、他の重要な語彙や表現と並べて記載することではないように思います。本の構成が基本的に語彙の「羅列」なので余計に「情報のごった煮」のような印象を受けます。

国語に関する世論調査でどの言葉がどれほどの割合の人に本来の意味ではない解釈がされているかを取り上げた章(レベル1、38-42)は、非常に興味深く読みました。言葉というものは時の流れと共にその意味や形状が変わったり他の言葉に取って代わられたりするものですが、まさにその変化の最中の言葉が捉えられるというのは貴重な情報だと思います。変化が完了していない言葉に関しては、本来の意味と現在優勢になりつつある意味の両方を知っていると、コミュニケーションの際に誤解を少なくする一助となると思います。
因みに私はそこに挙げられていた言葉の中で、新しい解釈をする人の割合が50%以上あった言葉のほとんどを、新解釈の方で理解・使用していました。これはつまり、意味の変遷が、ここ20年くらいのことではなく、もっと以前から始まっていたということなのでしょうね。



書評:語彙力向上研究会著、『できる人の語彙力が身につく本』&『ビジネスですぐ使える語彙力が身につく本』

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書評:語彙力向上研究会著、『できる人の語彙力が身につく本』&『ビジネスですぐ使える語彙力が身につく本』

2017年12月01日 | 書評ー言語

先日翻訳実務検定試験で和文独訳は合格したのに独文和訳は不合格だったので、やはり日本で社会人にならないままドイツに来てしまったために日本語能力が不足しているのだろうと思い、改めて日本語の勉強をしようと何冊かその手の本を買いました。そのうちの2冊が語彙力向上研究会の『できる人の語彙力が身につく本』と『ビジネスですぐ使える語彙力が身につく本』(知的生き方文庫)です。

できる人の語彙力が身につく本 一目置かれる“大人の伝え方”!』(2017年7月発行)はどちらかというと古典的な教養語彙に重点があります。目次は以下の通りです。

第1章 社会人として評価される語彙力の磨き方

第2章 ビジネスで使える、知性が輝く語彙

第3章 日常会話に驚くほど深みが出る語彙

第4章 気持ち・イメージが伝わる慣用句とことわざ

第5章 うっかり間違えると恥をかく語彙

第6章 気持ちや様子がピタッと伝わる語彙

第7章 上手に使うと評価が上がる四字熟語

 

第1章から6章までで扱われている語彙のうち大体75%は既知のものでした。とはいえ由来まで知っていたものはそれよりも少ないですし、自分が積極的に使いこなせるものとなるともっと少なくなりますね。「辛党」の意味を勘違いしていたことに気付けたのも収穫でした(笑)。

第7章の四字熟語はこれこそ私の弱点と言えるくらいで、知っていた四字熟語はせいぜい半分くらいでした。ここで紹介されている四字熟語の中で知らなかったものを覚えるのはかなり大変そうです。もともと漢文が苦手なので、それに由来する四字熟語も実はあまり好きではないのです。四字熟語の英訳を探して、それとセットならもう少し親しみを持って覚えやすくなるかもしれませんね。

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ビジネスですぐ使える語彙力が身につく本』(2017年10月発行)では、よく耳にするカタカナ語や経済用語、社会人として知っておきたいビジネス用語、趣のある日本語、四字熟語やことわざ・慣用句などが、使い方とともに紹介されています。

目次は以下の通りです。

第1章 仕事で評価される語彙力の養い方

第2章 今さら誰にも聞けないビジネス用語

第3章 プレゼンや商談で使うと効果的な言葉

第4章 知っておくと得するビジネス用語

第5章 時代の潮流として知っておきたい言葉

第6章 ビジネスの現場でよく使われる言葉

第7章 できる人が使っていることわざ・慣用句

第8章 決め言葉に使える四字熟語

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本書で紹介されていることわざや四字熟語は『できる人の語彙力が身につく本』と重複しているものは、ほとんどないと思います(「鬼門」は両方で取り上げられています)。だから2冊とも買う意味があると思います。

第1章から第6章までで紹介されている語彙のほとんどを知っていました。未知のものはわずかで、カタカナ語で日本独特の意味で使われている語彙(例えば「商品の画一化」という意味での「コモディティ」)あるいは省略形で使われている語彙(例えば「オワコン」や「ブレスト」)、または昔とは違う意味になっている語彙(例えば「パトロン」)などがそれに当たります。

「当たり屋」が「ヒットメーカー」の意味で使われるということには、かなりの衝撃を受けました。私が知ってる「当たり屋」の意味は「車にわざと当たって、慰謝料を脅し取る詐欺師」でしたので。なんだか隔世の感がありますね。

第7章のことわざ、第8章の四字熟語は知らないものの方が多かったです。

この本を読んでて、自分が思いのほか金融用語に強いことに気が付きました。これはきっと池井戸潤の作品をほぼ制覇したおかげなのではないかと思います。1冊や2冊読んだくらいでは身につかないかもしれませんが、10冊以上読めばよく出て来るキーワードくらいはさすがに自分の語彙として定着します。語彙を増やすのに読書という手段は、やはり有効みたいですね。

しかしながらことわざや四字熟語はどうやって身に着けていけばいいものやら皆目見当もつきません。小説などの中に使われていたとしても、一度意味を調べたくらいではまず身につかないし、次の小説を読みだす頃にはどんなことわざ・四字熟語だったか忘れているでしょうから。単語帳みたいなものを作って受験生よろしく暗記するのはいかにも不毛で退屈な感じです。なにか楽しみながらそういうのを勉強できる方法、ないでしょうかね?

とにかく、この2冊を読んで自分の弱点がどこにあるのかはっきりしたのは、大きな収穫でした。


書評:話題の達人倶楽部編『大人の語彙力が面白いほど身につく本 レベル1&2』(青春出版社)

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書評:ルーク・タニクリフ著、『「とりあえず」は英語でなんと言う?』(だいわ文庫)

2017年07月26日 | 書評ー言語

ルーク・タニクリフ(Luke Tunnicliffe)著、『「とりあえず」は英語でなんと言う?』(だいわ文庫)は「英語 with Luke」というサイトが本になったもので、同じ状況で、ネイティブがよく使っているフレーズを基本表現からスラングまで紹介しています。

「お疲れ様」、「優柔不断」、「久しぶり」、「面倒くさい」、「よろしくお願いします」、「切ない」、「頑張る」、「神対応」、「天然ボケ」、「癒し系」、「意識が高い」等々の日本語俗語に対応する英語表現が掲載されており、大変参考になりました。

ちょっとフォーマルな日本語表現の英語対訳というのは学校でも習うでしょうし、比較的入手しやすい部類だと思いますが、「神対応」、「天然ボケ」、「癒し系」などとなるとなかなか難しいのではないでしょうか。

正直、私が日本を離れた後に使われるようになった日本語スラングは私にとって理解不能のものも多く、ルークによる解説で「こういう意味の時は英語ではこう」と説明されてはじめてその日本語スラングの意味の幅を知ることができたものもあります。

27年以上日本を離れて、ドイツで暮らしてますが、果たしてこれらの比較的新しい日本語スラングをドイツ語対訳できるかと言えば、それは所々怪しいですね。若い世代のドイツ人との交流があまりないため、彼らのスラングもほとんど知らないんですよね。

それはともかく、この本は楽しく読めて勉強になるのでお勧めです。

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