徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ドイツ環境相ガブリエルは永久責任法を計画

2015年09月26日 | 社会
ドイツは放射性廃棄物の最終処理について最終的な解答をまだ見つけていませんが、その最終処理に対する責任を国が持つことを良しとせず、企業の責任を明確にする法案が計画されています。これまでさんざん補助金を受けた上に多大な利益を享受してきたのだから、その後始末だけ納税者に押し付けるなんて不合理が通っていい訳がないですね。その意味で、この法案は歓迎すべきものです。日本では責任のセの字も議論されませんが、ぜひ見習ってもらいたいものです。

以下はドイツメディアn-tvの記事の翻訳(原文

ドイツ環境相ガブリエルは永久責任法を計画。原発コンツェルンは責任逃れ
ドイツ環境相ジーグマー・ガブリエルは新たな法律で電気事業者が脱原発のコストから逃れるのを阻止するつもりだ。それは各省庁ですでに検討・調整済みの法案から明らかになっている。
ドイツ最大のエネルギーコンツェルン、エーオンはこの法案に対して裁判で係争することを検討している。「事後責任」導入によってドイツ連邦は、コンツェルンがたとえ原発事業を子会社などにアウトソースしていたとしても恒久的に原発廃炉及び放射性廃棄物最終保管のための数百億に及ぶコストを負担することを確かなものとするつもりだ。
「このため法的な新規定により放射性廃棄物処理に対する長期的な近津エルン責任を保証し、国家財政上のリスクを減じることが目的である」と法案に記されている。
エーオンは無期限・無制限の恒久的な責任は異論の余地があるとみている。「このコンツェルン事後責任法案は合憲か否かの審議に耐え得るものではない。この形で採決されるならば、我々は九分九輪法的手段を取らざるを得ないだろう」とエーオンの広報官は言った。RWE、EnBW及びヴァッテンファルもこの法案を法的に検証する予定だ。
エーオンは原子力、ガス、石炭事業を子会社ユニパーにアウトソースし、本社はエコ電力に集中する計画だ。新法案がなければエーオンの連帯債務者としての事後責任はアウトソーシングから5年後に終了することになる。
原子力コンツェルンエーオン、RWE、ヴァッテンファル及びEnBWは原発廃炉及び最終保管のために総額358億ユーロの引当金を積んでいる。
ガブリエルは責任法に加えて委員会を投入し、脱原発資金調達のための代替案を探らせる予定だ。財団モデルや基金などが検討されている。遅くとも2022年にはドイツ最後の原発がシャットダウンされる。

難民危機 ヨーロッパ、とくにドイツの対策

2015年09月26日 | 社会
2015年9月22日火曜のEU内相会議、水曜のEU臨時会談、木曜のドイツ内閣・州首相会議などで取り決められたことをまとめてみました。

EU内相会議(難民分配について)
1)ヨーロッパ内の12万人の難民の受け入れ割り当てについて合意。先週既に難民4万人の移住について合意していたため、総計16万人の難民がヨーロッパ内で分配されることになる。クォータ制導入には至らず。分配引き受け義務から免除されるための罰金(難民一人当たり6500ユーロ)も過半数を得られなかった。
ギリシャから5万400人、イタリアから1万5600人他国へ割り当てられることになる。ハンガリーは自国の負担軽減のための他国への割り当てを(なぜか)拒否。難民の引き渡しは2か月以内に実施される。

EU臨時首脳会談
1)海難救済プログラム強化:月900万ユーロの予算。パトロール海域については合意に至らず。
ドイツはフリゲート艦と補給船を1隻ずつ派遣。他国もそれに倣う。
イギリスは救済のための軍艦は派遣するが、救済された人たちは最寄りの安全な港、すなわちイタリアへ運ぶだけで、彼らに難民申請の権利は認めないことを強調。
2)密航組織に対する軍事行動:密航組織のネットワークおよびその船舶を含む財産の破壊を目的とする軍事行動を実施。そのために必要な国連委任状を得る手続きをフランスとイギリスが行う。
密航用船はリビアなどの北アフリカ沿岸で難民を乗せる前に発見し次第破壊する戦略。リビアの政治的混乱が利用されているためだが、このオペレーションのためにリビアの合意も必要。
3)年内にアフリカ連合との臨時サミットがマルタで開催予定
4)イタリアは難民登録実施を徹底させる。
5)EUはシリアなどの難民の食糧補給のために主に世界食糧計画へ10億ユーロ追加拠出する。
6)イタリアとギリシャに11月末までに難民登録のための「ホットスポット」を開設。難民のスピーディーな振り分けを可能にする。ここでいわゆる経済難民ははじかれる。

ドイツ内閣・州首相会議
1)2016年より、州は難民一人につき月670ユーロの支援を連邦から受ける。支給期間は初登録から難民審査手続き終了まで。審査期間は5か月で計算。
2)アルバニア、コソヴォ、モンテネグロを「安全な出身国」リストに加える。ドイツで難民申請する人たちの中でアルバニア出身が16.3%、コソヴォ出身が13.3%を占めるため、彼らを早急に出身国へ送還できるようになれば、それ以外の国の出身者の審査手続きが速められることになる。
3)連邦政府から各州への難民対策補助金は今年20億ユーロ追加、来年度も40億追加予算を組む。2016年はさらに80万人の難民申請者が来ると予想されている。
4)連邦政府は公営住宅建設に5億ユーロ補助金を出す。
5)連邦政府は大人の同伴なく来た未成年の難民の支援のために3億5000万ユーロ補助金を出す。
6)移住難民庁は3000人増員。主に連邦労働庁から派遣(現在移住難民庁長官を連邦労働庁長官が兼任しているため)。これにより移住難民庁職員は3300人から6300人に。
7)審査期間を3か月に短縮。
8)審査期間中、難民申請者は臨時収容所に留まることを義務付け。
9)難民申請を却下された人たちの早急な国外退去の徹底。
10)「お小遣い」支給の代わりに交通機関利用券や商品券などを支給。金銭目的でドイツに難民として来る人たちをこれによって忌避できるとする。
11)「安全な」出身国からの難民申請者は審査期間中の就労禁止。
12)難民のためにヘルスカードを導入。これにより難民が受けた医療サービスは医療機関と健康保険との間で決済され、移住難民庁の決済負担が相当軽減される。

補足情報:ドイツにおける難民申請者統計
出身国(2015年8月現在)
シリア 22.9%
アルバニア 16.3%
コソヴォ 13.3%
セルビア 5.7%
アフガニスタン 5.5%
イラク 5.4%
マケドニア 2.8%
エリトリア 2.6%

年齢・性別(2015年7月現在)
難民申請者全体 218,221人
30歳以下 141,574人
18歳―25歳の男女比:男性 80% 女性 20%


学歴(全体)
大卒 13%
高卒 17.5%
中卒 30%
小卒 24%
学歴なし 8%
平均以上の生活水準 47%


学歴(シリア出身)
大卒 25%
高卒 25%
中卒 23%
小卒 17%
学歴なし 3%
平均以上の生活水準 62%

統計のソースはドイツ公営放送ターゲスシャウのビデオ
http://www.tagesschau.de/i…/soziogramm-fluechtlinge-101.html