徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Murder in Mesopotamia(メソポタミアの殺人)』(HarperCollins)

2018年08月19日 | 書評ー小説:作者カ行

『Murder in Mesopotamia(メソポタミアの殺人)』(1936)は、出版されたのは『オリエント急行殺人事件』より後の14作目ですが、話の時間軸は前になります。Hercule Poirot(エルキュール・ポワロー)がシリアに滞在した後にイギリスに帰ろうとイラクに立ち寄ったところで殺人事件の解決を依頼されます。

語り手はバグダッドに来ていた看護婦の Amy Leatheran(エイミー・レザラン)で、アッシリア遺跡の発掘長であるスウェーデン人の Erich Leidner(エリック・ライドナー)に、「誰かに殺される」と怯えている妻 Louise(ルイーズ)の付き添いを頼まれます。遺跡の発掘メンバーの間には、不自然な緊張がありました。ルイーズは、死んだ先夫から脅迫状が届いているとミス・レザランに告白します。見せられた匿名の手紙の筆跡がルイーズの筆跡に似ていたため、ミス・レザランは彼女の自作自演か分裂症的なものを疑いますが、彼女は実際に殺されてしまいます。発掘隊の住居には中庭に続くアーチからしか入れず、中庭を囲むように配置された部屋の入り口はそれぞれ一つで、中庭からしか入れず、窓は人が出入りできるような大きさの物はない、という「密室」的な構造で、入り口付近にいた小間使いのイラク人たちは「誰も外から入ってこなかった」と証言したため、謎が深まります。そこで(第15章で)名探偵エルキュール・ポワローの登場となります。

「Murder is a habit(殺人はくせになる)」というポワローの言葉通り、ルイーズ殺人の手がかりを偶然掴んでしまったらしいライドナーの長年の同僚 Anne Johnson(アン・ジョンソン)が殺されてしまいます。彼女の最後の言葉は「The window...the window 」。これが手がかりとなってポワローが真相に辿り着くことになります。

さすがに殺人トリックまでは分かりませんでしたが、真犯人の見当はつけられました。妖しい人物が他にもいて、実はそいつは殺人犯ではなくて別件の犯罪者(泥棒)だったというのもなかなか面白いオチでした。


書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『And Then There Were None(そして誰もいなくなった)』(HarperCollins)

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Endless Night(終わりなき夜に生まれつく)』(HarperCollins)


ポワロシリーズ

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Murder on the Orient Express(オリエント急行殺人事件)』(HarperCollins)

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『The ABC Murders(ABC殺人事件)』(HarperCollins)

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Murder in Mesopotamia(メソポタミアの殺人)』(HarperCollins)

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『After the Funeral(葬儀を終えて)』(HarperCollins)

 

ミス・マープルシリーズ

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『The Mirror Crack'd From Side To Side(鏡は横にひび割れて)』(HarperCollins)

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Sleeping Murder』(HarperCollins)