徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。5』(ビーズログ文庫)

2021年08月08日 | 書評ー小説:作者ア行


積読本が100冊近くになり、さすがに新しい本を買うのを控えようと思っているところなのですが、やはり続き物は新刊が出ればすぐに読みたくなりますよね?

『十三歳の誕生日、皇后になりました。』の5巻は赤奏国皇后宛のお手紙箱に入っていた「洪水の心配」と「妹の心配」が書かれた手紙を受け取った皇后・莉杏が人身御供を心配して真相を探るべく河川の街を訪れ、そこで生贄にされそうになっていた異国の青年を助けたら、その青年は実は叉羅国の司祭をつかさどる家の1つ・ヴァルマ家当主ラーナシュだった---と洪水という国内問題と隣国の重要人物の急な訪れという外交問題を同時に抱えるストーリーです。
このラーナシュが赤奏国皇帝・暁月の策略もあって隣国・白楼国へ入って『茉莉花官吏伝 7 恋と嫉妬は虎よりも猛し』に話が繋がっていきます。

このシリーズは幼い莉杏が皇后として国や国民のことを考え、自分が何をすべきかを一所懸命学びながら成長していく少女成長物語であると同時に、莉杏を「ちょうどよかったから」という理由で妃にした暁月がだんだん幼な妻の成長を喜び、誇りに思うようになっていき、いつかは夫婦愛となるかもしれないことをほんのり匂わす恋愛物語でもあります。赤奏国に伝わる守護神獣・朱雀の比翼連理を体現するかのように「一緒に国を立て直して行こう」という共通の目標で強く結ばれている二人の物語はほのぼのとさせる一方、少々緊迫感に欠け、今一つ「この先どうなっちゃうの?!」という興奮が足りないのが残念なところです。読み始めてしまった続き物なので惰性で買い続けていますが、ストーリーとしては先に始まった『茉莉花官吏伝』の方がずっと面白いですね。恋愛話としてもすでに夫婦になっている二人より、皇帝とそれに見込まれ・惚れこまれた女性官吏の関係の方が不安定で障害も多いので物語に緊迫感があります。
その意味でも『十三歳の誕生日、皇后になりました。』は少々長くなってしまっている『茉莉花官吏伝』のスピンオフ的な位置づけに過ぎないような気がします。


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茉莉花官吏伝

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2021年08月08日 | 書評ー言語


敬語というのはいろいろと厄介です。社会人体験なしに海外に出てしまった私にとっては特にビジネスシーンにおける言葉使いに馴染みがあまりありません。けれども、時折日本人の方とやり取りする必要があるときに妙に違和感を覚える言葉遣いもあり、その違和感の元が何なのか、私が持っている言語感覚が実際のところどの程度正しいのか、最近では何が標準とされているのか、そういったことを知りたくてこの本を読んでみました。今、Kindleunlimited で0円で読めるようになっています。

内容的には先日読んだ大野萌子著、『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)と重複するところもありますが、実用本としてはこちらの方が章ごとの見出しがよく整理されていてわかりやすいと思いました。

目次
はじめに
1章 言葉づかいの基礎知識
2章 敬語の使い方
3章 丁寧な言い回し
4章 コミュニケーションの言葉
5章 言葉づかいの作法
6章 困った時のものの言い方
7章 クイズで育てる言葉力

この本を読んで私の敬語の感覚に誤りがないことが確認できました。
また、誤用例には知らないものも多く、それはそれで言語の変遷の最近の傾向を知るうえで興味深いと思いました。
また、それほどの比重は置かれていませんでしたが、エレベーターの中や車の中にまで上座・下座の規定があり、お客様をお迎えする場合には正確にそれを把握して上座をお勧めしなくてはならないようなことが書かれてあり、それもまた一つの驚きでした。恐らくそういうことが重視され、厳然と守られている保守的な世界と、そうでない現代的でフラットな世界が交わることなく併存しているのではないかと思われます。
敬語は大人として相手に対する思いやり・心遣いの表れであると同時に使う人の品格を表すものでもあるという著者の主張にはなるほどと思えるものもあり、詳細な言い回しの例は覚えておけばとっさの時に戸惑わなくて済むような具体的なものが多岐にわたって紹介されているので、実用的で参考になります。
やはり、「難しいしよく分からないから敬語嫌い」などというのは子どもの言い分だと思いますし、丁寧な言葉づかいにかなりの思い入れのを込めている方々に対して敬意や思いやりが足りないのではないかと思います。
私自身は上下関係を強調しない「丁寧語」だけにしたい派ですが、それを押し通すのは大人げないですよね。
また、普段は基本的に丁寧語だけで、謙譲語や尊敬語は積極的に使わないにしても、使うべき時とところではきちんと使える知識と能力を持っていないと、主義主張ではなく使えないから使わないんだと侮られることにもなりかねません。
「先生が申し上げられましたように」などのように尊敬語を使うべきところで謙譲語を使っていたり、「お疲れ様です」や「お世話になってます」と言えば済むと思っている?という印象を受ける濫用や「させていただきます」の不自然な多さなどを変だなと思う程度には私も敬語を身につけていたのだと実感しました。そうした言葉の乱れに対して怒りや嘆きなどを感じるほどのこだわりや思い入れはありませんけれど。

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