『ぼくのメジャースプーン』は言霊のような特殊な力を持つ小学4年生の男の子が主人公で、学校で飼っていた兎が惨殺された事件をきっかけに世話係だった彼の幼馴染でクラスメートの「ふみちゃん」が心を閉ざしてしまい、そのことで犯人に自分の力を使って罰を与えようと決意し、大叔父で同じ力を持つという児童心理学教授・秋山先生の下で力について学び、どういう罰がいいか考えていく物語です。この文脈の中で秋山先生が放った言葉
「どうしようもない悪というものは、いつまでも悪のままです。あきらめて、割り切ることができないなら、罰を与えたいなんて思うべきではありません。」
は真実すぎてかなり痛いと思いました。私も普段はできる限り見ないようにまた考えないようにしていますが、残念ながら世の中にはどうしようもない悪意が存在しています。人の気持ちや痛みが理解できない、または理解した上で痛みを感じさせることに愉悦を感じるような精神構造など。子どもであろうとこうした残忍性を持つ場合がありますが、本作品では若い医学生のお遊びで傷つけられてしまった子どもたちの話です。
秋山先生が『条件ゲーム提示脳力』と呼ぶ一種の『相手の潜在能力を引き出すための呪い』をかける力、というファンタジー要素が入っていますが、本作品に込められた倫理観とどうしようもない悪意が存在するという現実のやるせなさの中で一生懸命考える「ぼく」がとてもけなげで、いろいろ考えさせられます。
因みに「ふみちゃん」は『凍りのクジラ』で言葉を失ったこともたちのためのリハビリ教室に通う一人としてちょっとだけ登場します。
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