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書評:浜野 潔他著、『日本経済史1600−2015 歴史に読む現代』(慶應義塾大学出版会)

2018年04月17日 | 書評ー歴史・政治・経済・社会・宗教

『日本経済史1600−2015 歴史に読む現代』は大学生向けの教科書『日本経済史1600−2000』(2009年刊)の改題増補改訂版で、2017年4月発行。執筆者は浜野 潔、井奥 成彦、中村 宗悦、岸田 真、永江 雅和、牛島 利明の計6人。著者筆頭に挙げられている浜野氏は2013年にお亡くなりになったそうです。

本書は近世の経済学的遺産が近代的工業化に果たした役割を重視しながら近世から現代までの幅広い範囲をカバーしています。増補改訂版では各章末に「歴史に読む現代」と題した1節が加わり、第6章の章末には2000年以降に関する説が加えられています。

目次。

はじめに

1.近世の成立と全国市場の展開 (浜野 潔)

2.田沼時代から松方財政まで (井奥成彦)

3.松方デフレから第1次世界大戦まで (中村宗悦)

4.第1次世界大戦から昭和恐慌期まで (岸田 真)

5.戦時経済から民主化・復興へ (永江雅和)

6.高度成長から平成不況まで (牛島利明)

引用・参照文献

年表

索引

本書のアプローチはクラシックなマクロ経済史で、トマ・ピケティの『21世紀の資本』のような歴史的データの蓄積・シミュレーションによる格差問題に重要な特定観点(税率、私有資産、国家資産、資産占有率など)の考察と問題是正のための提言のような視点は含まれておらず、また、山口博の『日本人の給与明細 古典で読み解く物価事情』のような個人の給与や家計事情などのミクロ的視点も含まれていません。あくまでも産業構造や市場・流通のあり方および時の政権の経済政策などのマクロ的視点から見る日本の歴史です。その際5章で、戦前・戦後でフェーズを分断せず、戦時経済のどの要素が戦後に継承されたか、どの要素が戦後特有の新しいものだったかについての考察は、特に興味深いです。

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