文春文庫
2020年3月 第3刷
解説・秋山香乃
349頁
嫁ぎ先を離縁され「介抱人」として稼ぐお咲
百人百様のしたたかな年寄りたちに日々、人生の多くを教えられています
一方、妾奉公を繰り返し、身勝手に生きてきた自分の母親を許すことができません
そんな時「誰もが楽になれる介抱指南書」作りに協力を求められます
8編からなる連作短編集
それぞれに一癖も二癖もある老人たちが介護される側として登場します
倅夫婦の心が見えなくなって波風を立てた料理茶屋の御隠居
道楽などまるで縁のない堅い人だったのに、急にあらゆる道楽に手を出し派手に散在する女隠居
心の奥底に黒い靄を貯め込みながら煩がられているのに娘の世話を焼こうとする母親
人々や父に好まれる人間になるよう、己の本分を隠し、矯正し、武士として模範的に生きてきた数十年を老いにあっけなく覆されてしまった旗本
身を削って世話をする息子のことが誰かわからなくなっていく母親
老老介抱の姉妹
等々
重たい話と思って読み始めました
ところが、登場人物たちは皆、生き生きと江戸の町で暮らしており、何度もクスリと笑える場面があってホッとさせられます
確かに辛く悲しいところもありますが、読み終えてみればとても温かな心持になれる小説でした
介抱とはこうあるべきもの、と決めつけるものではない、というのは現代も同じですね
頭では分かっていても…ですが作中に登場する介抱指南書「『往生訓』、生き生き、楽々」現代版があれば読んでおきたいものです
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