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堀江敏幸「その姿の消し方」

2022年01月04日 | は行の作家


新潮文庫
2018年8月発行
解説 矩形の時間 松浦寿輝
199頁

留学生時代に「私」がフランスの古物市で手に入れた1938年の消印が押された絵葉書
差出人はアンドレ・Lという男性
宛先はナタリー・ドゥパルドンという女性
写真の裏に書かれた不思議な散文詩に想像を搔き立てられた「私」は再び彼の地を訪れ、同じ送り主からの絵葉書を捜し求めるのでした
長い間隔を置いて幾度かフランス滞在を重ね、少しずつ情報が集まりアンドレ・LのLはルーシュであること、彼はフランス西南部のある町で会計検査官をしていたこと、絵葉書の写真に写っていたのはその隣町にあった彼の住居であったことなどなどがわかってきます
しかし、ルーシュの詳しい人となりや絵葉書の受取人に関しては曖昧模糊なまま
「私」には、さほど不満も心残りもないようです
解説の『本書の主題は、こうした探索自体より、その過程を通じて浮かび上がってくる「時間」の重さ、そして生にとってそれがどれほど貴重かという事実の発見である』に納得
ルーシュの孫娘、ルーシュの遊び友達だったという老人、滞在していた安ホテルのアルジェリア人のフロント係とその係累、コンゴ人の盲目の外交官ら、探索の途上で出会った人々の鮮烈な肖像も印象的でした

アンドレ・ルーシュの散文詩をフランス語から日本語に訳する作業が出てくるのもあって、何の違和感もなくエッセイと思って読んでいたのですが、小説だったのですね~
すっかり騙されました

堀江敏幸さんの美しく端正で無駄のない文章から伝わってくる温かく優しい眼差しに癒されました

シンプルな表紙カバーも気に入りました
上部のフランス語の文章は翻訳ツールによれば
「アンドレ・ルーシュに敬意を表して:未知の詩人を求めて」だそうです
                    
                   

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