角川文庫
2021年2月 初版発行
解説・五味渕典嗣
311頁
1938年秋
従軍作家として北京に派遣されていた小柳逸馬は、突然の要請で前線へ向かいます
検閲班長・川津中尉と赴いた先は、万里の長城・張飛嶺
そこでは分隊10名が全員死亡、戦死ではないらしいという不可解な事件が起きていました
様々な境遇の兵士たちの集まり、『ろくでなし』の小隊に何が起きたのか
大義なき戦争に駆り出された理不尽のなか、たったひとつの良心が招いた殺人事件を解き明かす、極限の人間ドラマ
事件の真相は明らかになったものの、上からの命令で小柳は事実と違う内容の原稿を提出します
軍上層部にとっては事件の真相などどうでもよく、その事件をいかにして戦争の大義の一部とするか、戦う理由にすり替えるか、が大事だったのです
書き連ねられる兵士たちの来し方と心模様に空しくなりました
謎解きが進むのと並行して描かれる、戦争とは、人間とは
絶対に戦争などするものではありません
いかなる戦争でも、そこに大義などはありません
名誉の戦死など存在しません
大作ではありませんが記憶に残る作品になりそうです
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