ポプラ社百年文庫37
2010年10月 第1刷発行
143頁
ヨーゼフ・ロート「駅長ファルメライアー」
訳・渡辺健
オーストリアのある駅
雨の夕闇、列車事故の現場に駆け付けた駅長は妻も子もある身ながら担架に寝かされたロシア人の女性に心奪われます
駅の上にある自室で駅長の妻に介抱された後、回復した彼女・伯爵夫人は自宅のあるキエフ近郊の町に戻ります
彼女のことが忘れられない駅長は家族を捨て軍に入隊し前線へ出向いて、敵国である彼女の自宅を突き止め訪問、夫である伯爵は戦地に行ったきり戻らないと聞き、邸に入り浸るようになります
2人で逃げようと話し合いますが…
恋は盲目とはこういうことを言うのでしょうが、駅長の物凄い執着心に引いてしまいました
もう少しで彼の思いが成就するはずが…過去には駅長という立場にあり、軍でも中尉まで昇進した人なのに伯爵夫人のこととなると無計画無鉄砲
少しだけ気の毒、切ないラストでした
戸板康二「グリーン車の子供」
上り新幹線グリーン車の新大阪駅から東京駅までの車内でのミステリーです
偶然隣の席に座った女の子の面倒を見ることになった歌舞伎役者
裏に隠された仕掛けが単純ながら人の心持ちを上手く利用していて大変面白かったです
1975年発表作にて新幹線にビュッフェがあります
それ何?という方も多いでしょうね~
その辺りも懐かしく読みました
プーシキン「駅長」
訳・神西清
駅長とは名ばかりの下級官吏の父親と貧しく暮らす娘
豊かさを求める娘が身勝手な男の甘言に惑わされて男の馬車で家を出てしまいます
駆け落ちというより、連れ去りです
娘の家出にショックを受ける駅長ですが、すぐに取り戻しに行きたくても行けない、お金がなければ取り戻す方法もない時代でした
数年後、ようやく居場所を突き止めて会いに行くのですが男に簡単に追い返されてしまいます
娘のほうも裕福な暮らしをしていて不幸ではないようです
しかし、父親に対して冷たすぎます
それほど父親との貧乏な暮らしが嫌だったのでしょうか
貧しさゆえに起きた悲劇、駅長が気の毒でした
2編は駅を、1編は車内を舞台に回り出す愛と運命の物語でした
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